皆さん、こんにちは!畳職人の樋口です。今回は、京都での修行体験をもとにした長編小説について紹介します。

 

畳職人の私小説

 

私は高校卒業してからの六年間を伝統と革新が織りなす町京都で過ごしました。友達もいない、知り合いもいない、たった一人きりの孤独な旅立ちです。とはいえ、京都で出会った畳職人の仲間達は個性豊かでバラエティに富んだ方達だったので楽しい時間を過ごす事が出来ました。大好きな修行先のお店、大好きな先輩、大好きな同期、大好きな居酒屋、そこで出会った大好きな友達、大好きな後輩、私にとって特別な六年間でした。

 

こんな面白い体験をしたのだから小説にして残さなければならない。と云う一種の使命感に似た感情でこの小説を書き綴った次第です。何も出来なかった、何も知らなかった青年の成長と歓楽の物語を沢山の読者に届けたい。この小説を読んで畳職人とは?友達とは?修行とは?を知ってもらえたら幸いです。

 

最後になりますが、こちらの小説は私の実体験をもとにした小説ですが、全てフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 

京都での修行体験をもとにした長編小説

 

あらすじ
畳職人になる為に京都に修行に来た18歳の青年。何もわからない、何もできない、そんな男が畳を通して、職人を通して学んだ事とは?筆者自身の実体験をもとに修行の日々を綴る。

 

一話のあらすじ

 

物語は京都に来た次の日から始まります。初めての仕事が終わって緊張の余韻が残る中、まさかの合コンが待ち受けていました。初めての合コン、初めての先輩、なぜ初日から合コンなのか!と思いながらも私は河原町へと向かうのでした。

 

河原町に到着すると私を待っていたのは、誠実そうでしっかり者の『アニキ』と呼ばれる人物。その人物に連れられ訪れたお店は、畳職人が集まるという不思議なお店でした。

 

店内には既に何人かの畳職人が座っていてビールや日本酒を嗜んでおり、仕事や恋愛談義に話を咲かせていました。私も席に座り来るべき初めての合コンに備える。とこんな所で一話が終了します。

 


 

プロローグ

プロローグは別の記事で投稿したのですが、かなり修正を加えているので、改めてこちらの方で掲載します。一話に繋がる大切な物語なので是非読んでもらえたら嬉しいです。

 

プロローグ本編

 

「明日は合コンだから!」

 

先輩からの驚愕の知らせが、私の脳内に入る。京都の地に足を踏み入れてから未だ十分程度しか経ってないが、東京へ出戻りする映像が頭のスクリーンに映し出された。普通は合コンではなく、歓迎会だろ!と不服を申し立てたい気持ちはあったが、郷に入っては郷に従えという言葉に隷属する決意を固め、数秒後には合コン参加の意を表明した。

 

私が修行するお店は敷地面積六〇坪ぐらいの縦長の工場で、大きな木製の台が二台並べられ置かれており、その後方二メートル先には、鉄製の台が装着されている大型のミシン機械が有る。まだ先にも大型の機械があるようだが、畳が立てて置かれているので目視する事は出来ない。

 

「そんならまず、じぶん(あなた)がやることは・・・・。」

 

社長に明日からの業務内容の説明を受けた。私は一生懸命メモを取るが、話を聞いた方が正確だとペンを置いた。その後で先輩からも再度説明を受け、本日の仕事は終了した。思いのほか、早く仕事が終わったので、これから生きていくのに必要な日用品を買い出しに京都の街へ出かけることにした。

 

京都に訪れたのは修学旅行以来で、私がまだ中学校二年生の時だった。あの頃の私は今以上に無関心の極みで、班リーダーの後ろの方を「だるい。めんどくさい。帰りたい」を連呼しながら歩いていた。そのせいもあってか、あの頃の街の情景は完全に記憶から消えており、新しい景色だけが上書きされていく。心に余裕が出来たのか、少しは大人として成長したのかはわからないが、もう直ぐ19歳を迎える私は古都の景色を楽しんだ。

 

細く長い路地、格子で顔を隠す京町家、道に並ぶ犬矢来。全てが新鮮で、どこか懐かしい。近代文明の発達と資本主義の塊のような広告に支配された東京には、醸し出せない雰囲気だろう。東京の街並みも別に嫌いではなかったが、京都のもつ不思議な魔力にあてられたのか、少し悪口を言いたくなってしまった。

 

この街で私は生活する。

 

期待と不安が頭を駆け巡っていた。昔から裁縫は得意で、ユニフォームの膝パットやボタンは自分で付けていた。「早くて綺麗だね」って家庭科の先生に褒められたこともある。縫うのには自信があった。だが、先ほど畳を作る様子を見ていたら思ってたイメージと違ってダイナミックな作業であったことに正直戸惑っている。

 

私に向いているだろうか。

 

桜が散った後の並木道を不安に駆られたまま歩く。歩くたびに大きくなる憂えに耐えきれなくなって立ち止まる。ふと周囲を見渡すと行き交う人の中に知り合いらしき人物を発見する。声を掛けに行こうとするが、よく見ると違う人だった事に気がつく。わかって来たつもりだった。頭で理解はしているけど、何処かで友達の存在を期待してしまう。人は何かの不安に駆られると誰かに寄り添いたくなる。私には覚悟が足りないのだ。

 

そんなことを考えているうちに目的のお店に到着していた。すぐに買うものリストを広げて、布団と歯ブラシ、洗剤、ボディソープとシャンプーなど次々に買い物籠の中に入れた。レジを済ませてお店を出た後に、テッシュペーパーとトイレットペーパーを買い忘れたことに気がついた。戻ろうかとも思ったが、レジには一人しか店員がおらず、また並んで時間を浪費するのは癪だと考え、少し高いがコンビニで購入することに決めた。帰りは両手に荷物。布団が重いし、周囲の視線がちょっと恥ずかしい感もあって、先ほど駆られていた不安感も何処かへ飛んで行ってしまった。それでも一つだけ消えない不安があった。

 

明日の合コンである。

 

合コンなんかした事もないし、私はそこまで社交的な人間ではない。そもそも合コンをする時は、知っている友達の間でチームを組むのが一般的だ。誰も知らない談笑の場に、一人放り出されて何を話せばいいのか。盛り上がる話題とは何か。少し考えたが思いつかなかった。笑顔でいることは必須だ。つまらなそうにしていたら性格の悪い奴だと思われる。楽しんでいるフリをして、途中トイレとかに逃げ込んで、とりあえず空気になろう。下宿先に着くまでに至った結論である。

 

下宿先のドアを開けリビングに入ると、女将さんが晩御飯を用意してくれていた。焼き魚の良い香りが食欲を呼び覚ます。急いで荷物を自分の部屋に運び入れ、手を洗って食堂の席に着いた。

 

社長と女将さんと私の3人での食事。

 

私のお茶碗には、日本昔ばなしでしか見たことがないお米の盛られ方がされていた。ここは相撲部屋かと一瞬勘違いをしてしまったが、塩味の効いた焼き魚がお米に合って箸が進んだ。

 

「遠慮せんと食べや。あと、困ったことがあったら何でも言うんやで」

 

社長は笑いながら仰った。ご厚意に甘えてご飯を食べながら色々なことを質問した。仕事のこと、休日のこと、畳の学校のこと。社長も女将さんも嫌な顔せず全部答えてくれた。

 

満腹になったお腹を抱えたまま、食器を片付けてお風呂に入った。湯船に浸かりながら思いに耽る。

 

「色々と不安はあるけど、社長も女将さんもすごく優しいし、楽しくやっていけそう。」

 

これから訪れる毎日が、きっと幸福な時間であることを願いながら、湯船のお湯を使って顔を拭った。お風呂から出たら明日の準備をして、早々に床に就いた。布団に入った私は、すぐに寝付くことが出来ず、これから始まる物語を小説の題名で例えると何になるか考えていた。

 

「”京都物語”か”私だけの物語”かどっちが良いだろう?う〜ん・・・。京都物語かな・・・。」

 

そんなことを考えていると興奮してか、全くと言っていいほど眠気が無くなってしまった。とりあえず、便意があったのでトイレに向かうことにした。トイレは先輩たちが掃除してくれてみたいで、とても綺麗にしてあった。匂いの芳香剤も装備され、快適な環境が用意されており、感謝の気持ちで一杯になった。ただ、一つだけ足りないものがあった。トイレットペーパーだ。

 

私はその時「あっ」と思い出した。トイレットペーパーとティッシュペーパーを買い忘れた事を。軽佻浮薄だった私は、コンビニに寄ることなく帰宅してしまったのだ。どうする?今から買いに行って・・・。便意は果たして間に合うだろうか。

 

決断は冷静且つスピーディに行わなければならない。時間の経過は選択肢を狭めることに繋がるのだ。その時、社長の言葉を思い出した。

 

「困ったことは何でも言うんやで」

 

困ったこと!まさしく困ったことだ!私はすぐに社長の元へ向かった。とはいえ、もう寝ているかも知れない。寝ていたらどうしようか・・・。ダッシュで走ってコンビニのトイレを使うか・・・。向かっている途中の階段で、女性の声が聞こえた気がした。ん・・・?。と思い一瞬立ち止まったが、気のせいだと先を急いだ。リビングの扉の前に行くと、今度はハッキリと女性の声が、いや、歌声が聞こえた。扉を開けるとカラオケのマイクを持っている女将さんと、女将さんの友達と、社長がいた。もう時計は21時をとうに過ぎている。私は半分放心状態になってしまった。「おー。自分(あなた)も歌え」と社長に言われるままに女将さんからマイクを渡され、長崎は今日も雨だったを熱唱した。突然訪れたカラオケという予期せぬ出来事だったが、限られていたはずの選択肢には別の道が開けることもあるのだと、この時初めて知った。歌い終わった後の私の気持ちは晴れだった。
終わり。

 

最後に

 

プロローグはいかがでしたか?もし続きが読みたいなと思った方はnote小説家になろうノベルアッププラスカクヨムでご覧下さい。登録無しの完全無料で読む事ができます。投稿日は毎週土曜日の夜18時頃から23時頃になります。仕事が忙しい日は小説を書かない可能性もありますが、なるべく毎週投稿できるように頑張りますので応援宜しくお願い致します。

 

読んでいただきありがとうございました。

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