畳の種類と選び方完全ガイド|用途別・素材別でプロが徹底解説

こんにちは、樋口畳商店の樋口裕介です。
高校卒業後、京都で畳職人の修業を積み、現在は東京都江戸川区で一級畳製作技能士として畳の製作・施工を行っています。
この記事では、畳選びに迷う方のために、素材別・用途別に最適な畳の種類をプロの視点からわかりやすく解説します。

畳の基本構造とは?

畳は主に以下の3つの要素で構成されています:

  • 畳表(たたみおもて):表面のゴザ部分。素材や色で印象が変わります。
  • 畳床(たたみどこ):畳の芯になる部分。踏み心地や耐久性を左右します。
  • 畳縁(たたみべり):畳の縁に付ける布。デザイン性と耐久性の両面で重要。

この3つの組み合わせで、畳の使い心地・寿命・雰囲気が大きく変わります。

畳表の種類と特徴(素材別)

素材特徴向いている場所
天然い草調湿・断熱・香り◎。日本伝統の風合い和室・客間・茶室
和紙畳表色落ちしにくく、水拭きOK。カラー展開も豊富子供部屋・モダンな部屋
樹脂畳表耐久・耐水性◎。カビや虫に強い店舗・ペットのいる家庭

天然い草について

天然い草には国産い草と中国産い草があります。国産い草は主に熊本県(八代表)や福岡県(筑後みどり)、大分県(七島藺)、高知県(土佐表)、石川県(小松表)、広島県(備後表)などで栽培されており、中国産い草は寧波(ニンポー)や四川(シセン)などで栽培されております。

中国産と国産の大きな違いは、農薬の量とい草繊維の詰まり具合です。

日本のい草農家さんは環境と畳を使う人に配慮して農薬を抑え、安心安全のい草を栽培してくれています。別に中国が身体に害があるい草を栽培しているわけではないですが、品質を向上させ安定的に栽培する為に農薬が必要だったのは間違いありません。

い草の繊維の詰まり具合とは、い草の芯を顕微鏡で拡大してもらうとわかります。

左が国産い草、右が中国産い草です。簡単に言えば、中国産い草は中がスカスカなんです。繊維の詰まりがないと摩擦に対する耐久性に影響が出たり、吸湿効果などにも影響があると言われます。

ちなみに国産い草でも楕円形のい草はあります。なので、私たち畳職人がい草の目利きする際は、丸い円に近いい草を選ぶようにしています。あとはい草を指で潰した感触ですね。抵抗が強いい草を選んでいます。他にも畳の端の色具合や織り目なども見て購入しています。

他にも国産い草と中国産い草には香りの違いがあります。

国産い草は乾燥工程を2回ほど経て、長時間かけてゆっくりとい草を乾燥します。一方、中国産い草は石炭による高加熱で短時間の石炭乾燥を行います。それゆえに中国産い草の香りが酸っぱいと言われることがあります。ただし、現在は石炭乾燥をやめて、ガス乾燥に変えたところも多いです。今後もガスで乾燥する中国産い草は増えていくと思います。

和紙畳表

和紙の畳表とは針葉樹のパルプを用いて、こより状にして織り込んだ畳表のこと。一般的な畳とは違い、色の焼けがほとんどなく、摩擦に対する耐久性も強いです。

さらにカラーが豊富で、若い方には人気の高い畳表になります。

ただ、問題点としては和紙と謳っていますが、事実上は洋紙でありお客様から「和紙だよね?」と聞かれた時に困ることです。和紙と聞くと楮(コウゾ)を思い浮かべる方が多いと思います。私は障子や襖も作業しているので、和紙がどういうものか少なからずわかっているつもりです。

正直言って、これ絶対和紙じゃないよな・・・。というのが本音です。

樹脂畳表

樹脂畳表とは、樹脂(ポリプロピレン)と無機材料(炭酸カルシウム)によって作られた畳表です。内部に空気層があるので適度なクッション性と表面の凹凸によりベタ付き感を軽減しています。

樹脂畳表の特徴は、摩擦に対する強い耐久性、色が変わり難く豊富なカラーバリエーション。撥水機能が高い為、飲み物をこぼしても安心、お手入れもしやすい素材になっています。

デメリットとしては、少しビニールっぽい風合いと少し滑りやすいのがデメリットになります。

畳床の種類と選び方

畳床の種類特徴メリット注意点
ワラ床昔ながらの自然素材耐久性・吸音性・足触りが良いダニが発生しやすく、とても重い。価格が高め
建材床(ボード系)木質ボード+発泡スチロール軽量・反りにくい・安価耐久性が低い。床が硬い。修理ができない。
ワラサンド床両者の中間適度な柔らかさと安定性ダニが発生しやすい。耐久性は低い。ややコストが高い

昔ながらの自然素材ワラ床

藁床とは、稲わらを乾燥させて縦配と横配と重ねて圧縮し縫い合わせた畳床のこと。耐久性に優れており、現存する最古の畳だと400年前の藁床が見つかっている。その理由は藁を継ぎ足し縫い合わせ、糸で締めると再生床として使用できる為です。日本文化が誇る究極のSDGs商品と言っても過言ではありません。

ただ、適切な環境でないとカビで腐食したり、シロアリに食べられたりと数年で使えなくなるケースもあります。ワラ床を選ぶ際には畳屋に相談し、定期的なメンテナンスをお願い致します。

ちなみに最近の藁床は防虫防カビシートなどが付属で付いていることが多く、以前よりダニに関するお問い合わせは減少しました。もし藁床使っている方がダニが気になる方がおられましたら、後付けでも装着できるので、お近くの畳屋にお問い合わせください。

ダニが住みにくい建材床

建材床とは木製のチップを圧縮したボードに発砲の断熱材を挟んだ畳床のこと。ダニが住みにくく、川辺や海の近く、和室の隣がお庭で水たまりがたまりやすい環境にお勧めの畳床です。

価格も安い為、現在ではワラ床よりも建材床が主流になっています。

ただ、デメリットもあって、耐久性が低いこと、藁床のように修理ができないこと、床が硬いこと、薄い畳床は反ってしまうなどのデメリットがあります。

建材床をご注文される場合はクッションも一緒にご注文されることをお勧めします。

藁と建材の良いとこ取りワラサンド床

ワラサンド床とは、上っ面が藁床になっており、薄いベニヤ板を発砲(断熱材)に挟んで、再度藁床を挟む形状になっています。

クッション性もあり建材床よりも耐久性があります。まさに藁床と建材床の良いとこどりといった畳床になります。

ただ、藁床と建材床の悪いところもしっかりと受け継いでいる点がデメリットです。藁がほとんどなので、ダニは生息しやすいですし、発砲(断熱材)が潰れれば修理はできません(藁が潰れただけなら修理可能)。それでいて値段は建材床より高い。

個人的な意見としては藁床と建材床をサンドする必要性があったのかなというのが本音です。

縁あり畳 vs 縁なし畳

種類特徴向いている空間
縁あり畳伝統的で格式あり。縁のデザインが楽しめる和室・仏間・茶室
縁なし畳スタイリッシュで現代的。市松敷きが映えるモダン住宅・店舗・リビング和空間

縁あり畳の特徴

繧繝(うんげん)縁

縁あり畳の特徴は、畳の伝統であり格式そのもの。そもそも畳の縁がなぜ付いているのか、それは今から1000年以上昔、畳の縁は皇族や貴族などの格式を表すものだったからです。

一番格式が高いのが繧繝縁(皇族)→大紋→中紋→小紋と紋縁と呼ばれる縁を付けていました。畳縁が一般化したのは畳を敷き込むようになってから。つまり和室が生まれてからです。当時から縁なし畳はありました。ただ、畳は歩けば畳同士摩擦が生まれ畳の接触部分が痛んでくる。縁なし畳は畳と畳がモロに接触するので傷むのが早かったと考えられます。

そこで畳縁を付けることで摩擦に対する緩衝材的な役割を果たしたと言われています。ただ、当時の畳縁は黒縁か茶色しかなく、現在のように多彩な畳縁が出現したのは明治から昭和にかけてと言われています。

畳縁には意味のある柄も多く使われています。例えば、青海波模様は穏やかな波が永遠に続きますようにと願いが込められており、麻の葉模様には魔除けと子どもの健やかな成長の意味が込められています。

畳は昔から風水的な意味合いが強く反映されている敷物なので、和室に何か想いを込めるなら畳縁を付けることをお勧めします。

縁なし畳の特徴

縁なし畳の特徴は、和モダンスタイルの確立です。古臭い畳のイメージを大きく変えた功績は絶対的に認められるべきことだと思います。

特に若い方は縁なし畳を半畳にして市松敷きにしたり、和紙表や樹脂表を使いカラーバリエーション豊富な畳を楽しんでいます。

最近では15ミリの畳の登場により、置き畳が人気になっています。リビングの一角に置き畳を敷いたり、寝室に敷いて家族みんなで寝るスペースにしたりと、畳=和室に敷くというイメージを完全に壊しています。

今後もたくさんのカラーバリエーションが増えていくことを考えると、海外などから人気を博す和モダンスタイルが生まれる可能性は十分にあるでしょう。

用途別おすすめ畳の選び方

使用場所・目的おすすめ畳の組み合わせ
客間・和室・旅館天然い草 × ワラ床 × 縁あり
子供部屋・介護部屋和紙表 × 建材床 × 縁あり(安全性重視)
店舗・民泊・サロン樹脂表 × 建材床 × 縁なし(清潔感&おしゃれ)
ペットのいる家庭樹脂表 × 建材床 × 縁なし

よくある質問(Q&A)

Q:畳の張替えがよくわかりません
A:畳の張替えには大きく分けて三つの工事があります。ひとつは表替え。これは畳表だけを張り替える作業のこと。ふたつめは裏返し。これは現在使っている畳表をそのまま裏返す作業のこと。みっつめが新畳。これは畳表だけでなく畳床全てを新しく張り替えることです。どの工事がお勧めなのかは現状見ないと判断できませんが、予算的なことを考慮すると表替えが一番コスパ良く綺麗に仕上がります。

Q:畳はダニやカビが心配なのですが…
A:15年くらい前までは畳はダニが出たら新畳にしなければダメと言われることも多かったですが、現在ではホウ酸を使用したダニシラズEシートなどが販売されています。また、天然い草の畳表にもアース製薬が出している防虫防カビ剤などがあり、かなりダニとカビの心配が減少しました。ただ、ダニとカビは環境が最も大事です。湿度を高くしない、布団を敷きっぱなしにしない、定期的に掃除する。これらを心がけてください。

Q:畳は何年持ちますか?
A:畳は使っている材料、畳の使い方や環境によって全く違います。畳を何年使えるかは明確な回答ができません。ただ、毎日稼働している旅館の畳は一年で擦り切れてきますし、屋形船の畳は取り外したり敷き込んだりを繰り返すので一年でボロボロになります。一方で、京都には80年間畳張替えをしていないものが使われていたり、40年間使っているのにまだ綺麗な状態の畳も数多くあります。何を選ぶかも大事ですが、どう使うかによって畳の耐久性は大きく変わりますので、ご理解いただければと思います。

樋口畳商店のこだわりと施工実績

樋口畳商店では、一級畳製作技能士がすべての施工を担当します。


特殊な寸法・デザインにも柔軟に対応。過去には下記のような案件も手がけました:

  • 和モダンなゲストハウスに縁なし畳を市松敷きで施工
  • 東京都で有名な神社の茶室にワラ床畳を納入
  • 保育園に完全オリジナル商品折りたためる畳マットレスを制作

施工事例はブログやSNSでも随時公開中です。


まとめ:畳選びは“ライフスタイル”に合わせて

畳には多様な種類があり、選び方ひとつで快適さや印象が大きく変わります。
素材・構造・用途に合わせて最適な畳を選び、後悔しない空間づくりをしましょう。

迷ったら、一級畳製作技能士に相談するのが一番確実です。皆様からのお問い合わせを心からお待ちしております。

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