
この記事を書いた人

一級畳製作技能士/樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
こんにちは、樋口畳商店の樋口裕介です。
この記事では、「畳職人って儲かるの?」「収入ってどれくらい?」といった疑問に、私自身の実体験をもとにリアルにお答えしていきます。
1. なぜ「畳職人=儲からない」と思われているのか

近年、和室の減少などから「畳職人は仕事がない」「儲からない」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
私も樋口畳商店を創業する前は「畳職人なんて儲からないからやめた方がいい」とたくさんの方々から言われました。
なぜ畳職人は儲からないと思われているのか。
- 畳需要の低下:国産い草と和室は年々減少している
- 地域密着型のビジネスだから:儲ける為にはグローバルに広がっていく必要がある
- 下請けは単価が叩かれる:建築会社からの下請けは単価が叩かれる為、儲からない
三つ理由が考えられます。まずひとつめは畳の需要の低下です。これは農林水産省と建設会社のデータからも分かる通り、い草の需要と和室の需要は確実に減少傾向にあります。
二つめは地域密着型のビジネスだからです。インターネットの登場後、ビジネスはグローバルに広がっていくことが儲かるビジネスと周知されています。
世界でもGoogleやAmazon、Facebookなど全てグローバル企業ですよね。一方で、畳職人は地域密着の仕事です。東京江戸川区で開業した畳屋が北海道の仕事を請け負うのは難しいですし、広がっていくとしても国内がほとんどです。
みっつめは下請けは単価が叩かれるからです。これは畳職人だけに限った話ではありませんが、いま建築業界では下請けに対して単価を叩きまくる動きが増えています。
「仕事あげるのだからもっと安くしろ」「安くできないなら他に頼む」
私のお世話になっている工務店様や大工さんはこんな事を言わないですが、実際に安くしてくれとお願いしてくる建築業者はたくさんいます。
したがって、畳職人は儲からないと言われているわけですが、実際に畳職人の仕事をしている私は畳職人は儲かる仕事だと思います。
畳職人が儲かる理由
- 畳職人の高齢化と供給の低下:畳の需要も低下しているが、畳職人も減っている。また畳職人の高齢化も進んでいる
- 和室は減少しているが、リビングなどに敷く置き畳の需要は伸びている:15ミリの置き畳の需要が伸びている。日本国内のみならず海外に販売できるのでグローバル化できる
- 粗利率が高いので下請けに依存しない:粗利率が低ければ建築会社からの下請けに依存しなければいけません。しかし、畳職人は粗利率が高いので個人のお客様だけでも食べていける
先述どおり畳の需要は減少傾向にあります。ただ、それに比例して畳職人も減少傾向にあります。これは地域差がありますが、20年前と比べて約4分の1程度にまで減少したとも言われています。
さらに現在活躍されている畳職人も50代〜70代が圧倒的で40代から下の青年部がほぼ壊滅状態にあります。
自分は30代前半ですが、私と同じ歳くらいの畳職人は関東でも数えるほどしかいません。私にとってはチャンスだと思っています。
二つめに、置き畳の需要が伸びていることです。確かに和室は常に減少傾向にあります。新築も減っていますし、マンションでの和室も減っています。とはいえ、置き畳は毎年需要が伸びており、樋口畳商店では昨年の1.4倍まで増えています。
置き畳がなぜ増えているのか理由は企業秘密ですが、今後も確実に増えていくと予測します。また、置き畳は国内だけでなく、海外への販売を可能にしています。
これまで畳を海外に販売する際、輸送料の問題がネックになっていました。畳は大きいし、重いし、植物なので面倒だったのです。
しかし、置き畳は軽いし、コンパクト。和紙表や樹脂表を使えば、ほとんどの国々に送ることができます。漫画やアニメなどで日本文化に興味がある外国人が今後も増えると予想しますので、海外での畳の需要も増えることが予想されます。
三つ目は粗利率の高さです。具体的な数字は言いたくありませんが、畳は粗利率が高い商品になります。その理由は手間が掛かることはもちろんですが、10年単位で値段設定しているからです。
畳は一度張り替えると次張り替えるのは10年後になります。それだけスパンが空く事を考えると粗利率は高く設定されます。
粗利率が高いと建築会社からの要望に無理して応えようとしなくても問題ありません。なぜなら彼らに依存していないからです。粗利率が低いとそれだけ沢山の仕事をしないといけません。仕事を貰える元請けには頭が上がらなくなるのです。
ですが、高い粗利率で仕事をしていると、彼らからの仕事に依存する必要がないので、無理に値段を下げる必要もありません。
結果、個人のお客様を大切にしたり、お世話になっている工務店様や不動産、大工さんを大切にできるわけです。
「畳職人は儲からない」とこれまで沢山言われてきましたが、私はこの事実を知っていました。だから畳職人になることも、樋口畳商店を創業することも恐ろしくなかった。
むしろ、チャンスだとずっと思っていました。畳職人に興味がある皆さんには、是非とも知ってほしいことです。
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2. 畳職人の仕事内容と働き方

畳職人の働き方は主に以下の3つに分かれます:
- 個人営業(自営業):自身で受注から製作・納品まで一貫して行う。自由度は高いが、営業力も必要。
- 畳屋からの下請け:安定して仕事が入るが、単価が安く収入が抑えられる傾向も。
- 畳施工会社勤務(大手内装業者なども含む):固定給だが、伝統技術に触れる機会が減る場合も。
畳職人の働き方で一番多いのが自営業です。どこかで何年か勉強して実家を継ぐか、自分で畳屋を起業するか。私自身も京都の沢辺畳店で6年修業して、東京都江戸川区で樋口畳商店を創業しました。
ゼロから畳屋を始めるのは決して簡単なことではありませんでしたが、たくさんの人に支えられ、応援をしていただき今日まで営業できています。
今でこそ少なくなりましたが、畳職人のフリーランス的な働き方である、畳屋からの下請けで食べていっている畳職人もいます。
実は樋口畳商店を創業する前、二年間ぐらいは私も畳屋からの下請けで食べていました。しかし、「自分から仕事をください」と言うスタイルは足元を見られ、とても安い価格で仕事をしなければならなかった。
良い人に巡り会えばまた違うのかもしれませんが、自分から仕事をくださいと言う畳職人の働き方はあまりお勧めできません。
最近では、畳職人としてどこかの畳屋に勤めて一生職人としての働き方を選ぶ方もいます。私の京都修業時代の先輩も畳職人として雇われて生活しています。
これが一番リスクが低く、無難と言えば無難かもしれません。ちゃんと給料は貰えるし、休みもあります。個人事業主で働く畳職人は給料も休みも不安定ですから、安定を取るなら畳職人として技術を磨いて、どこかの畳会社に勤めるのがお勧めです。
3. 気になる収入事情|リアルな金額を公開
以下はあくまで目安ですが、実際の収入例です。
ステージ | 月収の目安 | 補足 |
---|---|---|
修業時代 | 5万〜10万円 | 見習いとして。住み込みや手当ありの場合も |
下積み時代(勤務) | 15万〜25万円 | 経験を積む期間。道具代なども必要 |
独立初期 | 20万〜40万円 | 自分で受注すれば徐々に上昇 |
独立数年後 | 40万〜300万円以上 | 営業・技術力次第で大きく差が出る |
収入に関しては地域によります。都心部では、1日に数件の工事をこなすことで収入アップが見込めますし、畳以外に、ふすま・障子・網戸なども請け負うと単価も上がります。
畳の技術だけでなく、営業スキルやインターネットのことも勉強しておくと良いでしょう。
4. 成功する畳職人に必要なこと
- 確かな技術:一級畳製作技能士などの国家資格が信用力になります。
- 発信力・営業力:ブログやSNS、LINE見積もりなど、顧客との接点が重要です。
- 柔軟性:薄畳・折りたたみ畳・デザイン畳など、ニーズの多様化に対応できること。
私が思う成功する畳職人に一番必要なことは技術力です。機械化の時代に技術力?と疑問な方も多いかもしれませんが、機械化の時代だからこそ技術力が重要になるのです。
機械化は畳製造の効率化を進め、生産性を高めました。しかし、それに伴い同じ畳しか作れなくなったのです。みんなが同じ畳技術、みんなが同じサービス。であれば、価格で競争するしかありません。
これからの畳職人に求められることは群を抜いた高い技術力で新しい畳を開発販売することです。樋口畳商店では厚さ15ミリの置き畳の施工技術一番を目指して、日々新しい畳の開発に努めています。
ここで一例を紹介すると

こちらの畳はメキシコに送った厚さ15ミリの畳になります。一見普通の畳に見えますが、これは特殊な技術で折りたためるように加工した畳になります。

畳を折りたためるよう加工したことで、これまでの輸送料金を7分の1にしました。これは価格破壊だと言われるくらいの革新的な技術です。
他にも色々な商品を作っていますので、気になる方は他の記事も読んで見てください。
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次に畳職人にとって必要なことは営業スキルと発信力です。これは私も苦労しています。ブログ発信は畳以外の記事を書けば簡単に伸びるのに、畳の記事はほとんど伸びません。
インスタもYouTubeも同様です。ただ、テレビ(東京MXバラいろダンディ)に出演させていただいたことがありますが、その時だけはとてつもなく伸びました。
やはりテレビが一番強いのかもしれません。
5. 畳業界の将来性は?
確かに「和室が減っている」のは事実です。ですが、
- 洋室に置くだけで使える「置き畳」の需要が増えている
- 日本文化に興味がある外国人が増えている
- 海外への輸出(越境EC)
など、新たな需要が次々に生まれている分野でもあります。
また、高齢者施設や保育園などでは、安全性・快適性から畳のニーズが再評価されています。樋口畳商店ではゲストハウスや旅館、屋形船などのお仕事をさせていただいておりますが、年々畳の良さが見直されている実感があります。
都内では簡易的なお茶室が増えているとも聞いていますので、今後日本文化発展と共に畳の需要が増える可能性もあります。
6. 畳職人は「儲かる」か?の結論
私は、**畳職人は「儲けられる仕事」**だと断言します。ただし、
- 自ら技術を磨き
- 発信・営業力も高め
- お客様の声に耳を傾ける
ことができる人に限られます。
職人は黙々と作業するだけでなく、時代に合った働き方を選ぶ必要があります。私自身も、日々勉強と挑戦を繰り返しながら仕事をしています。
まとめ:あなたも畳職人という生き方を考えてみませんか?
「手に職をつけて働きたい」「日本文化を次世代に伝えたい」と考えている方にとって、畳職人はやりがいのある選択肢です。
これから畳職人を目指したい方、業界についてもっと知りたい方は、ぜひ当店ブログやLINEでお気軽にご相談ください。
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▶ 畳職人のなり方を詳しく知る:https://phkkoomde.com/become-tatami-craftsman/
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