【専門家が解説】畳にカビやダニが発生する本当の原因と正しい対処法

この記事を書いた人

樋口裕介の写真
樋口 裕介(ひぐち・ゆうすけ)
一級畳製作技能士樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
一級畳製作技能士 資格証 京都畳競技会 優勝トロフィー

こんにちは、樋口畳商店の樋口裕介です。一級畳製作技能士として、長年畳と向き合ってきました。

「畳にカビが生えてしまった…」「ダニが気になって仕方ない」

畳屋として、お客様からこのようなご相談をいただくことは少なくありません。インターネットには様々な情報がありますが、中には根本的な解決にならないものも多く見受けられます。

この記事では、畳職人としての長年の経験をもとに、畳にカビやダニが発生する本当の原因と、ご自宅でできる正しい対処法を、専門家の視点から分かりやすく解説します。


1. 「いつの間にか…」畳にカビやダニが発生する本当の原因

畳にカビやダニが発生するのは、決してあなたの管理が悪いせいだけではありません。多くの原因は、私たちの生活環境に潜んでいます。

  • 最も大きな原因は「湿度」 畳は自然素材のい草でできており、非常に湿気を吸いやすい性質を持っています。湿度が60%を超えるとカビやダニが繁殖しやすい環境になるため、特に梅雨の時期や冬場の結露には注意が必要です。
  • 通気性の悪さ 大型の家具を置いている部屋の隅や、壁にぴったりとつけた畳の裏側は、空気が循環せず湿気がこもりがちです。ここが、カビやダニにとって絶好の温床となります。
  • 栄養源の存在 目には見えませんが、私たちのフケや垢、食べこぼし、ホコリなどは、カビやダニにとっての栄養源です。掃除が行き届かない場所では、これらの栄養源が溜まり、一気に繁殖が進んでしまいます。

2. 見つけたらすぐ対処!プロが教えるカビとダニのサイン

「カビかどうかわからない」「ダニがいるか不安」という方も多いでしょう。畳職人として私がいつもチェックする、カビやダニが発生している「SOSサイン」をご紹介します。

【カビのサイン】

  • 白や緑、黒い粉のようなものが畳に付着している。
  • い草の匂いが強くなっている。何となく部屋がカビ臭い。
  • 畳の上を歩いたときに足が滑らない感覚がある。

【ダニのサイン】

  • 畳に黒い小さな点々(ダニのフンや死骸)がある。
  • 肌がかゆい、赤い発疹ができるなどの体調不良がある。
  • 畳の上を歩くとチクチクする。

これらのサインを見つけたら、早急な対処が必要です。

3. 【実践】畳職人が教える!正しいカビ・ダニの除去方法と注意点

「カビを見つけたからゴシゴシ拭く」のは絶対にやめてください。正しい方法で除去しないと、逆にカビの胞子をまき散らしてしまい、被害が拡大する可能性があります。

【カビの除去方法】

  1. 換気::部屋の窓を全開にし、換気を徹底してください。マスクと手袋を着用し、カビの胞子を吸い込まないように注意しましょう。
  2. カビ取り:柔らかいブラシで畳の目に沿ってブラシ掛けをしてください。ブラシ掛けと同時に掃除機で吸い取るとカビの胞子が舞わないのでおすすめです。(二人で作業することをお勧めします)
  3. アルコール除菌:消毒用エタノール(ドラッグストアで購入可能)もしくは防カビ剤を布に含ませ、カビが生えている部分を軽く叩くように拭き取ります。ゴシゴシ擦ると畳を傷つけるので厳禁です。
  4. 乾燥: 拭き取った後は、ドライヤーを当てるか、十分に自然乾燥させましょう。熱風は畳を傷めるため避けてください。梅雨時期や連日雨が続いている場合は除湿機やエアコンの除湿機能を使いましょう。

【ダニの除去方法】

  1. 乾燥:まずは換気をしっかりとして和室の湿度を下げましょう。除湿機やエアコンの除湿機能も有効です。
  2. 掃除機:畳の目に沿って、ゆっくりと丁寧に掃除機をかけます。畳の下に潜んでいる可能性もありますので、畳をあげることができるなら畳を持ち上げ退かし、床下を掃除しましょう。特に四角などにホコリがたまりやすいので、時間をかけて行いましょう。
  3. バルサン→ダニ取りシート: まずはバルサンを焚きましょう。バルサンが苦手な方はスプレータイプのダニ駆除がありますのでそちらを使いましょう。市販のダニ取りシートを畳の下や布団の下に設置するのも有効です。ダニを捕獲し、繁殖を防ぎます。ただ、ダニ取りシートは換気後、乾燥後に設置することをお勧めします。
  4. 乾燥: 日当たりの良い場所に畳を立てかけて天日干し(夏なら一番おすすめ!カビにも効果あり!)するか、畳を少し持ち上げてアルミ缶などを下に入れて換気をするか、除湿機を活用して湿度を下げましょう。

4. 畳にカビやダニを「二度と発生させない」ためのプロの予防法

対処も大切ですが、最も重要なのは予防です。畳職人が実践している予防法をご紹介します。

  • とにかく「換気」と「除湿」: 毎日少しの時間でも窓を開け、空気を入れ替えましょう。特に梅雨の時期は、除湿機やエアコンの除湿機能も積極的に活用してください。本当は一年に一度、畳を天日干しするのがいいのですが、それは難しいと思いますので、畳を持ち上げて隙間を作り、アルミ缶などを挟んで、畳の下を換気することをお勧めします。
  • 重い家具を動かす: 半年に一度は、重い家具を少し動かして、その下の畳も風を通すようにしましょう。
  • 定期的な掃除: 畳の目に沿って掃除機をかけ、ホコリやゴミを溜めないことが大切です。

5. まとめ:それでも解決しない時はプロに相談を

ご自宅でできる対策を試しても、カビやダニが再発する場合は、畳の内部にまで原因が及んでいる可能性があります。

そのような場合は、無理な自己判断はせず、私たち畳のプロにご相談ください。畳の専門家として、畳の状態を正確に診断し、最適な「表替え」や「新調」をご提案します。

早めの対処が、畳を長持ちさせる秘訣です。何かお困りのことがあれば、お気軽にご連絡ください。

[連絡先・お問い合わせへのリンク]

おすすめの記事