畳の香りが気になる?一級技能士が教える「畳の匂い」の正体と対策

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樋口 裕介(ひぐち・ゆうすけ)
一級畳製作技能士樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
一級畳製作技能士 資格証 京都畳競技会 優勝トロフィー

こんにちは、樋口畳商店の樋口裕介です。
私は京都伏見区にある「京都畳技術専門学院」で技術を学び、現代の名工に師事。現在は東京都江戸川区で一級畳製作技能士として活動しています。

今回は、「畳の匂いが気になる」「新しい畳って独特な香りがするけど大丈夫なの?」という声にお応えし、専門家の視点から畳の匂いの正体と対処法について詳しくお話しします。


畳の香りは「天然い草」由来。リラックス効果も!

新しい畳を敷いたとき、「あ、和室の香りだ」と思ったことはありませんか?
実はこの香り、い草に含まれる天然成分によるものです。

い草にはフィトンチッドという森林浴にも含まれる成分があり、リラックス効果・抗菌作用・消臭効果などが科学的に認められています。さらに、バニリンというバニラのような甘い成分も微量に含まれており、どこか懐かしく、やさしい香りを感じさせるのです。

私自身、納品の際にお客様から「いい匂いですね!これぞ日本の香り」と言われることがよくあります。
この「畳の香り」こそ、日本文化が育んだ自然の恵みなのです。

畳の香りは「い草」だけの香りじゃない?

実は畳の香りは「い草」が発している香りだけではありません。い草を泥染めした際に付着した染土が合わさった香りこそ畳の香りになります。

※い草をなぜ泥染めするかと言いますと、い草全体を均一に乾燥する他、色合いを出す為だったり、畳の香りを出す為などの理由があります。

最近では無染土の畳表なども売られているのですが、畳の香りがもっと草っぽく、個人的には抹茶っぽい香りに感じます。

お好きな人には良いと思いますが、香りには好みがありますので、気になる方は一度畳屋に言って香りを嗅がせてもらうのが良いでしょう。


「畳の匂いが強すぎる」と感じたら?

畳の香りは良い匂いと言われていますが、すべての方にとって心地よいとは限りません。
とくに初めて畳の香りを嗅ぐ方やお子さん、アレルギー体質の方にとっては「思ったより匂いが強い」「気分が悪くなる」といった声も一部あります。

その場合は、以下のような対処法をおすすめします:

✔ 換気をしっかり行う

新しい畳はまだ環境に馴染んでいません。その為、部屋の湿気をたくさん吸ってしまいます。湿気をたくさん吸うと、い草のキャパがオーバーして、い草自体の匂いがかなり強くなります。

そうならない為に、まずは定期的に換気をしっかりして湿度を低く保つことがおすすめです。

梅雨時期や連日雨が続く場合には、湿度がとても高くなります。また、冬であっても加湿器を使ったり、洗濯物を干してエアコンなどを使うと一時的に湿度が高くなります。

そういった時には、換気をしっかり行い湿度を調整してください。

✔ 晴れた日に空気に触れさせる

晴れた日には窓を開けて、畳に空気を触れさせましょう。畳は自然物なので、自然の空気を入れることで畳の状態は良くなります。

逆に雨の日には窓を閉めて、雨で畳が濡れることがないように気をつけてください。

✔ 除湿機やエアコンの除湿機能の活用

梅雨時期や連日の雨などでどうしても換気ができない場合は、除湿機やエアコンの除湿機能を使って湿度を下げましょう。

特に梅雨時や湿気の多い時期は湿度を下げることで香りも穏やかになります。


なぜ畳の匂いが臭いと感じるのか

畳の材料であるい草には国産と中国産があります。実は国産い草と中国産い草でも匂いに違いがあります。この理由は、乾燥工程にあると言われています。

国産い草の場合は、乾燥工程を2回経て、長時間かけてゆっくりと乾燥させています。一方で、中国産い草は石炭乾燥という高加熱で短時間で乾燥させています。

この石炭乾燥の匂いがい草に移り、酸っぱい匂いに感じるのです。

ただし、中国産い草の産地にも寧波(ニンポー)と四川があります。石炭乾燥は主に寧波で行われており、四川産はガス乾燥がほとんどです。ガス乾燥の場合は石炭乾燥のように酸っぱい匂いはほとんど出ないのでご安心ください。

「畳が臭い」と感じる場合はカビや湿気が原因の可能性も

注意していただきたいのは、「畳そのものの香り」ではなく、「変な臭いがする」「カビっぽい」という場合。
これは、畳が湿気を含んでしまっている可能性が高いです。

畳は天然の調湿素材として優れていますが、逆に換気が悪いと湿気をため込み、カビやダニの温床になる恐れがあります。

とくに以下のようなケースでは注意が必要です:

  • 畳の下がコンクリートやフローリングで通気が悪い
  • RC(鉄筋コンクリート)住宅もしくはRCマンション
  • 山の近くもしくは川の近く、海の近くに家がある
  • 家が密集している
  • 和室の隣に庭があり、水溜りがたまりやすい
  • 和室の隣がトイレもしくはお風呂場
  • 日光がほとんど入らない
  • 風が全く通らない
  • 洗濯物を室内干しする機会が多い
  • 長期間窓を閉め切っている
  • ほとんど住んでいない

心当たりがある方は、早めに対策を。 ひどくなる前に専門店に相談することをおすすめします。


香りが苦手な方へ|無臭タイプの畳もあります

どうしても「い草の匂いが苦手」「アレルギーが心配」という方には、和紙表や樹脂表の畳がおすすめです。

  • 和紙畳:い草の代わりに撥水加工を施した和紙を使い、見た目はそのままに無臭でアレルゲンも少ない。
  • 樹脂畳:耐久性が高く、水拭きも可能。ペットやお子様がいる家庭にも人気です。

実際に、保育園や高齢者施設ではこのような素材を採用するケースが増えています。
私自身も数多く施工していますが、「お掃除が楽」「においがしないので助かる」と好評です。


畳の香りを楽しむために|職人からのアドバイス

「畳の香り」は、本来とても心地よく、日本文化そのものを感じられる魅力のひとつです。
少しだけコツを押さえれば、日々の暮らしの中にやさしい香りを取り入れることができます。

  • 天気の良い日は窓を開け、空気を入れ替える
  • 湿気の多い季節は除湿器やエアコンで室内の湿度管理を
  • カビ臭が気になるときは、すぐに専門家へ相談を

まとめ

畳の香りは「自然の恵み」。
気になる方も、ちょっとした工夫で快適に過ごせるようになります。

  • 畳の香り=天然い草の成分による自然な匂い
  • 強いにおいが苦手な方には和紙や樹脂の畳がおすすめ
  • 「嫌な臭い」がする場合はカビの兆候。早めの対処を!

香りも品質のひとつ。
あなたのお部屋に合った畳選びをお手伝いしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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