熊本県でイ草研修!畳の材料であるイ草を学ぶ旅

皆さん、こんにちは!樋口畳商店です。今回は、熊本県にイ草研修に行ったことについてお話ししたいと思います。イ草農家さんや畳職人の先輩達が話してくれた内容も交えてご紹介したいと思います。

なぜ熊本県に行ったのか?

熊本県は畳の材料であるイ草の一大生産地になります。日本で作られているイ草のほとんどは熊本県で栽培されており、そこから畳屋に送られ、畳が作られています。

なぜ2月に研修?

それはイ草の品評会があるからです。イ草の品評会とは、育てたイ草の出来具合を競うものと、畳表にした時の美しさを競う大会のことです。

イ草農家さんにとっては大事なイベントである一方で、畳屋にとっても購入するイ草を決める大事なイベントでもあります。もちろん賞に選ばれなくても素晴らしいイ草だと思えば買いますが。とりあえず、畳業界にとって大切なイベントだとわかってもらえればOKです。

それに付随して、様々な勉強会、体験教室、講習会などが開催されます。普段聞けないイ草農家さんの不安や不満、要望などをお互いディスカッションする場にもなっています。

そういったことで2月にイ草研修に熊本に行く畳屋が多いわけです。

余談ですが、数年前までは11月ぐらいに品評会がありました。ただ、11月は畳屋の繁盛期で多くの畳屋が参加できないということで、日程が2月に変わったそうです。樋口畳商店としても大変ありがたい変更でした。

いざ八代へ

今回参加したイベント「いざ八代へ」は、未来の会という若手イ草農家さん達の団体と畳の機械メーカーが共同で主催したイベントになります。い草農家さんに限らず、日本の農家は高齢化が進んでどんどん若手が少なくなっている中、い草の栽培だけでなく畳の良さを広げる活動をされており、未来の会の皆様には感謝と頭が下がる気持ちでいっぱいです。

イベントでは畳業界で活躍されている畳屋さんの話、若手い草農家さんの話、い草農家と畳屋のディスカッションなど盛りだくさんの内容でした。また、私が京都で修業していたお店の先輩でもあり、技能グランプリの覇者でもある平田さんが実演で手縫製作を披露してくれました。

京都修業時代に手縫の手法を平田さんから学ばせてもらった身からすれば、お越しになった全国の畳屋さんにとっても大変勉強になったのではないかと思います。

ただ、このイベントで一つだけ残念だったのは、ブースを分けなかったことかと思います。平田さんが縫っている最中に電気消したり、一番見たいところでお話の方に誘導されたり、そこはちょっと残念なところでした。

ただ、全体通して大変勉強になったイベントなのは間違いないです。

い草農家さん達との対話

京都修業時代の大先輩である平田さん、野中さんお二人のご紹介で何人かのい草農家さんとお話しすることができました。まず一人目は早川さん。農林水産大臣賞を何度も受賞しているイグサ農家で、畳業界でも知らない人はいない超有名人です。

早川さんに限ったことではないですが、大変お忙しい中お邪魔させていただいたこと、本当に感謝しています。短時間とは言え、早川さんのこだわりを知ることができて本当に感銘を受けました。

本当はどういった内容なのか詳しく話をしたいのですが、正直文章で語れる気がしないので、機会があれば私とお会いした際にお聞きください。

お二人目は山本さん。樋口畳商店の国産のほとんどは山本さんが作ってくれた畳表です。樋口畳商店でも一番人気の麻麻綿綿々の六本芯で有名な山本さんです。六本芯は畳表の分厚さ、山と谷がハッキリとした風合い、それなのにも関わらず、弾きやすく仕事がしやすい最高の畳表です。正直、お会いした時感動と緊張で上手く喋ることができませんでした。それぐらい自分にとっては大きな存在です。

ここでは山本さんからのお話だけでなく、仕事風景なども見せていただきました。お忙しい中、本当にありがとうございました。

樋口畳商店でも予約待ちが続いていますが、入荷次第すぐ施工しますので、もうしばらくお待ちいただければと思います。

三人目は畑野さん。とてもお会いしたかったイ草農家さんで、市松の目積やストライプの目積を作っている方です。また、SDGsなど環境を考えた栽培にも力を入れておられ、尊敬の気持ちでいっぱいになりました。自分は今回レッスン1しか教わることはできませんでしたが、大変勉強になったお話でした。

この方々以外にもい草農家さんとはお話をしました。総じて皆様仰っていたのが、国産い草の危機的状況です。この大きな理由は、畳需要低下、中国産い草とダイケン和紙とセキスイ美草の存在、国産い草の価格が上がらずイ草農家さんが次々にやめてしまうことです。

いざ八代へのイベントでも言っていたことですが、もっと国産を使おう。これは間違いないと思います。ただ、これが根本的な解決になる気はしません。

国産い草は農家さんの絶え間ない努力と熊本の水と土が合わさって最高級の仕上がりになっています。新畳もしくは表替えをして、恐らくは10年、いや20年は綺麗な状態が続いてしまうはずです。

つまり、国産麻綿を使えば使うほど交換する頻度が減るので、い草農家さんには還元されないと私は思います。昔は、家がバンバン建つ時代でした。和室もたくさん作られました。だから国産畳表を使えば使うほど、い草農家さんにも恩恵があった。しかし、現在は家も建たない。建っても和室がない。そんな状況ですから国産麻綿を使えば使うほど、農家さんにとっては悪循環に陥る可能性があると私は思います。

では、どうすればいいのか。今回の旅での締めになります。

い草研修の旅で決意したこと

この問題を解決する方法は、国産畳表を使った畳を新しい市場で売ることだと思います。具体的に言えば、海外です。海外に国産い草を使った畳を売れば、農家さんも儲かる、畳屋も儲かる、海外の人も喜ぶ、好循環が生まれます。

樋口畳商店はこれまでも海外に畳を販売してきましたが、これまで以上に力を入れます。お金もバンバン投入します。何年後か日本のい草農家さんが笑って仕事ができるように、樋口畳商店は頑張っていきます。

ですから、い草農家さんをお辞めにならないで耐えてほしいと願います。

最後に、今回お忙しい中、お話をしてくださったイ草農家さん、京都修業時代の先輩の平田さん、野中さん、ご紹介に尽力をしてくださった平田さんのお父さん、送り迎えをしてくださった瀬口さん、遠いところ遊びに来てくれた同期のキク、本当にありがとうございました。大変有意義でとても楽しい時間でした。

また熊本には足を運びます。その時には八代の田園風景がイ草一色に戻っていることを願って。

読んでいただきありがとうございます。

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