
この記事を書いた人
一級畳製作技能士/樋口畳商店 代表
京都市の黄綬褒章受章「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区で独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞 優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
2021年10月27日、TOKYO MX「バラいろダンディ」に出演。
2021年11月13日、練馬工業高校にて講演会を実施し、畳についての講話と畳コースター製作体験を行いました。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
皆さん、こんにちは!樋口畳商店の樋口です。畳屋を営んでいると国産い草と中国産い草の違いがわからないというお客様が多くいらっしゃいます。確かに畳表を見ただけで国産い草の畳と中国産い草の畳を判別できたら、それはもう熟練の職人級だと思います。
国産い草の畳と中国産い草の畳を判別するのはプロでも難しい。
そこで今回は国産い草の畳と中国産い草の畳は何が違うのか、国産畳表と中国産畳表の見分け方をご紹介します。
国産の畳にするか、中国産の畳にするか迷っている人の参考になれば幸いです。
国産い草の畳と中国産い草の畳の何が違うの?
国産い草の畳と中国産い草の畳の違いは4点あります。
- 国産い草と中国産い草では使われている農薬の量が違う
- 国産い草と中国産い草では乾燥工程が違う
- 国産い草と中国産い草では顕微鏡で見た時の繊維の詰まり具合が違う
- 国産い草と中国産い草では陽に焼けて色が変わった後の美しさが違う
国産い草と中国産い草では使われている農薬の量が違う
中国産い草は国産い草に比べて農薬をたくさん使っています。その理由は気候や風土がい草の栽培に適していないからだと言われています。そもそも中国産い草も元々の苗は岡山県で栽培されていた国産い草の苗です。ですが、中国の気候や風土に合わず、当時はお客様に提供できないほどとても汚い畳表でした。
それを長年の改良と農薬の力で、お客様に提供してもご満足いただける畳表へとなっていったのです。
一方、国産い草は世間から減農薬を求める声が大きくなり、現在では肥料や微生物などを使い、農薬を極限まで抑えて栽培するい草農家さんが増えました。
樋口畳商店でもお客様から農薬が少ない畳表を求められることが多いので、減農薬のエコファーマー認定のい草農家さんが栽培した畳表を使用しています。
国産い草と中国産い草では乾燥工程が違う
国産い草と中国産い草では乾燥する際の工程が違います。国産い草は天日干しや機械を使った長時間の乾燥を行っておりますが、中国産い草は石炭などでの短時間での乾燥が一般的です。
この乾燥工程の違いが、い草の香りに影響を与えると言われています。国産い草はまろやかでほんのり甘い香りがするのに対して、中国産い草の場合、石炭などで乾燥しているため少し酸っぱい匂いが残ってしまう。
それがクレームになることもありますので、畳の香りが気になる方はお見積もり時に畳の香りを嗅がせてもらうことをお勧めします。
国産い草と中国産い草では顕微鏡で見た時の繊維の詰まり具合が違う
まずはこちらの画像をご覧ください。

こちらは国産い草(左)と中国産い草(右)を顕微鏡で見た時の画像になります。国産い草は繊維が詰まっており円形になっているのに対して、中国産い草は繊維が行き渡っておらず楕円になっているのがわかると思います。
繊維が詰まっていないということは歩いた際に生じる摩擦に対する耐久性が下がります。簡単に言えば、靴下の裏にボロボロ畳い草が付くスピードが早くなるということです。
それは畳表のグレードももちろん関係しますが、同じグレードの畳表なら中国産い草より国産い草の方が長持ちすると言えます。
国産い草と中国産い草では陽に焼けて色が変わった後の美しさが違う
畳は色が変わる敷物です。納品した最初は青緑の色をしていますが、年数が経つにつれて黄色く変色していきます。
この状態を陽に焼けた畳表と呼びます。
国産い草と中国産い草では陽に焼けた畳表の美しさが違います。その理由は、い草の選別作業にあります。い草は農作物ですから同じ時期に植えたい草であっても成長が違います。
水分の行き渡りや雲の陰り、自然の中で育てているのですから当然のことです。ですからよく育ったい草もあれば少し短い育ち盛りのい草もあれば、育ち過ぎてしまったい草もあります。
国産のい草農家さんはそういったい草を一本一本選別してから畳表を織ってくれるのに対して、中国産い草はほとんど選別せず織り機にかけ畳表を作ります。
なので、畳表にい草のムラが生まれるわけです。
これは納品した時には青く濃い色をしている為、かなりわかりにくいのですが、年数が経つと黒いい草がくっきりと出てきて、とてもわかりやすい状態になります。
もちろん国産い草の農家さんの中にも選別をあまりしない農家さんもいますので、全てが全てではありませんが、中国産い草より圧倒的に国産い草の方が陽に焼けた後は綺麗です。
国産畳表と中国産畳表の見分け方
冒頭にも言いましたが、
国産畳と中国産畳を目で見て判断する事はかなり難しいです。
といのも、中国産藺草は国産藺草の根と作り方をベースに中国で栽培している藺草なので、国産藺草と似ている藺草が出来るのは当然です。
一昔前までは中国産畳と国産畳の違いは一目でわかる完成度の違いだったのですが、近年は開発と改良が進み、中国産藺草の品質が格段に向上し、現在のように見分けがつきにくいレベルまでなってしまったのです。
では、見た目から国産畳と中国産畳は判断できないのでしょうか。
かなり目をこらさなければなりませんが、一応見て判断する事は可能です。

先ほども言った通り、い草に色むらがないのが国産。

色むらがあるのが中国産です。
ただ、樋口畳商店では無染色の中国産い草を使っているので、サンプル画像になりませんが、染色しているい草はもっとわかりにくいのです。それでも陽に焼けるとかなりわかりやすくなりますが。
ちなみに、見た目で国産畳表と中国産畳表の違いがわからない時は、畳表を折り曲げるとすぐわかります。先ほど説明した通り、国産い草は繊維が詰まっているので、折り曲げてもい草が割れにくいのに対して、中国産い草はバリバリに割れます。
湿気や乾燥状態によって多少の差異はありますが、これなら誰でもわかる方法です。
それでもわからないという方は国産い草である証明書をご確認ください。

国産い草には国産い草である認定書や証明書が付いています。畳屋さんによってはお客様に渡さず、施工途中で捨ててしまう方もいるので、欲しい方はお見積もりの際に言った方がいいかもしれません。

最近では、畳表一枚一枚にQRコードが付いています。ちょっと画像がわかりにくいですが、国産の場合畳表の表面にこのようなバーコード付きの紙が織り込まれています。これは国産畳である事の証明書であり、バーコードには作った農家さんの情報が記されています。これも国産畳表の証明になりますので、チェックしてみてください。

また、規格品(国産畳表二等もしくは一等。(二級、一級と呼ぶ人もいるが、畳床とごちゃごちゃになる事もあるので、できれば二等、一等でお願いしたい))の場合、いつ、誰が、どこで証明したかのシールが畳表に貼られています。生産者番号も貼られているので、それ番号で問い合わせを行えば国産である事の証明は簡単にできます。
しかし、シールが付いていれば安心というわけではありません。
シールなんて幾らでも付け替え可能なので、心配な方は番号で問い合わせることをお勧めします。
以上、国産い草の畳と中国産い草の畳の何が違うの?国産畳表と中国産畳表の見分け方でした。
最後に
いかがでしたか。
国産畳と中国産畳の違いはわかりましたか?
参考になれば嬉しいです。
今回、中国産と国産の違いを紹介しましたが、中国産にも四川畳表というものがあり、国産にも劣らない高品質な畳表もあります。
また、東アジアでは新しい藺草の生産地を目指して藺草を試験的に植え付けているという話も聞いています。今後、もしかしたら中国産に変わる畳表が登場するかもしれません。
例えどんな畳表が登場しても畳業界としてはお客様に誠実な商売をしてほしいと思います。
もちろん、私もですが。
読んでいただき、ありがとうございました。
