
この記事を書いた人

一級畳製作技能士/樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。


皆さん、こんにちは!樋口畳商店の樋口です。今回は、畳職人って大変?畳の仕事をやってきてきつかったことランキングを紹介します。畳職人って大変な仕事なのかな?畳の仕事ってどんな仕事をするのか気になる方の参考になれば嬉しいです。
畳職人って大変?畳の仕事をやってきてきつかったことランキング
4位 旅館系の仕事
3位 お寺系の仕事
2位 お茶室系の仕事
1位 ゴミ屋敷系の仕事
お化け系の仕事
「大変」の意味が変わってしまうかもしれませんが、畳職人は人の家に入る仕事がゆえに、薄気味悪い怖い物件にもお邪魔する事はあります。
今回はその一例を紹介します。

意味わからないですよね。住んでいた人は頭がおかしくなったとしか考えられません。お化けの存在を信じていない私でさえも、この部屋は普通じゃない事が理解できたし、何かがある事はわかりました。
畳替えが増えて嬉しいはずなのに、心から喜べない。そんな気持ちでした。
こういった物件以外にもちょっと怖い物件というのは一年に一回、二年に一回程度はあります。肉体的には大変ではないですが、精神的にちょっとくるものはあります。
旅館系の仕事

畳職人の仕事って基本的には急ぎ仕事は少ない業界です。お客様に納期を聞くと「いつでも良いよ」と言ってくれるし、工務店さんは優しいので3〜5日ぐらいの中から都合の良い日を選択させてもらえます。
ただ、旅館は違います。チェックアウトと同時に引き上げて、チェックイン前に納品しなければなりません。しかも、畳の枚数は100枚を超える事がザラです。短時間でそれだけの枚数の畳を作り納めるのは、結構大変なことです。
ただ、旅館の畳替えは年末の大仕事って感じで、これが終われば年越しだと思うと何だか不思議と嬉しい気持ちになります。
一年を締めくくる最後の大仕事って感じです。
お寺系の仕事

お寺系の仕事は、畳の重さと枚数と運ぶ距離が長いことが大変である理由です。一般的な畳は20キロ前後ですが、お寺の畳の多くは40キロを超える重たい藁床。枚数は300〜600枚近くあります。
その畳を担いで長い廊下を運ばなければなりません。運ぶ距離は一般的なお家と比べると10倍近くあるかもしれませんね。それぐらい長い距離を重たい畳を持って運ぶわけですからかなり大変な仕事ではあります。
京都修業時代に西京区にある鈴虫寺と呼ばれる畳の張替えをしたことがあります。鈴虫寺は山の上にあるお寺さんで畳を運ぶのに山を登らなければならず、本当にキツかった。
小中高と野球部で体力には自信があった私ですが、息が吸えなくなって、腕が上がらなくなるくらいの仕事でした。
とはいえ、お寺の中ってそう簡単に入れるわけではありませんし、紋縁が綺麗に揃った時の感動は何とも言えないので、とても楽しい仕事なのも間違いありません。
お茶室系の仕事

お茶室の仕事は畳職人にとって名誉な仕事です。なぜなら一番技術に差が出るから。大変な仕事というと語弊がありますが、最も精神を使う仕事なのは間違いありません。
ここでクイズですが。二畳、三畳、四畳半、六畳、八畳、十畳のお茶室があったとして、この中で畳を作るのが難しい部屋って何畳だと思いますか?
答えは二畳です。畳は枚数が少なければ少ないほど難易度が上がっていきます。
というのも、畳は枚数が多ければクセを他の畳でカバーできますよね。しかし、二畳敷きのお茶室ともなれば二枚しか畳がないので対角のクセや四方のクセ、お茶の炉のクセがダイレクトにきます。
私は畳職人の仕事を始めて四年目の時に始めてお茶室の仕事を任されました。
緊張で大丈夫かなと不安な私の前に現れたのは二畳のお茶室。しかも、シミズ(対角)が一寸四分も狂っているお茶室で、炉が何故か曲がっているという現場でした。
今であれば型をとって畳を作れば良いと直ぐに対応策も思いつきますが、当時の私は何もわからず割本法の掛けシミズを使って畳を作りました。
※割本法とは四方の長さと対角線を計り、対角線のクセを消す畳寸法学。掛けシミズとは、畳の上前だけでなく下前も目に乗せるために、框側でクセを消し幅を通すやり方。ちなみに2畳で掛けシミズをしてもほとんど意味ないので無駄なことだし、寸法をいじるので入らなくなる最悪の方法。ちょっと知識があると使いたくなり失敗する典型的な悪い例なので真似しないようにお願いします。
結果は全く入らず、無残にもやり直しをし、やり直しでも失敗する始末でした。あの苦い経験があるからこそ、今があるのですが、正直あれほど大変な現場は他になかったと思います。
全部自分が悪いのですが・・・。
ちなみに、お茶室は大工さんの腕で相当左右されるのは間違いありません。本当に腕の良い大工さんだと対角線に全く狂いがない。だから私たちも畳を作りやすい。
面白いのは私たちが畳の寸法を測っていると、自信のある大工さんは近づいて来ない。自信がない大工さんは近づいて来て「ちょっと狂ってるよ」と苦笑いしてくる。
「大丈夫ですよ」と答えるけど、内心「ちょっとじゃないじゃん!」って思うことはある。
ゴミ屋敷系の仕事
私が畳の仕事で一番大変だと思う仕事は、ゴミ屋敷系の仕事です。
お客様皆さん言うのですが「私の家、汚いでしょ?ゴミ屋敷みたいでしょ?」
いやいや。全然ゴミ屋敷じゃない。本当のゴミ屋敷はもっと凄いです。銃撃戦が行われたと思うくらい畳が黒く変色しているし、めちゃめちゃゴキブリがいるし、ネズミは死んでるし、カップラーメンがその辺で落ちてるし、何より臭いが半端じゃない。
マンションの外まで臭いがくるくらいです。
それに比べたらちょっと荷物が多いくらい全然大したことないです。とても丁寧に掃除していますね。有難うございます。仕事がやりやすいです。っていつも思います。
ただ、私はゴミ屋敷の仕事が嫌いではありません。むしろ、ドキドキするというか、アドレナリン出る感じで興奮します。決して楽な仕事ではありませんが、未知な体験で楽しいです。
ゴミ屋敷でも孤独死の現場になると楽しさは消えて心が痛くなりますが。みんながやりたがらない仕事をしている時は、社会の為に自分が貢献していると思えるので、少し誇らしくもなります。
なので、これからも大変な畳職人の仕事を率先してやっていきたいと思います。
以上、畳職人って大変?畳の仕事をやってきてきつかったことランキングでした。
最後に
いかがでしたか。畳の仕事のどこが大変かわかりましたか。
畳職人の仕事が知りたい方々の参考になれば幸いです。
あんまり、仕事が大変だとは言いたくありません。大変な部分も含めて好きな仕事ですから。
ただ、畳職人になりたいと思っている方も見ているかもしれないし、畳の仕事に興味を持ってもらえるかもしれない事を考えるとマイナスばかりではないのかなと思います。
これからも大変な仕事を頑張りますので、もっと大変な現場を頂けたら嬉しいです。
読んでいただき有難うございました。