値段が安い畳と高い畳って何が違うの?|畳の違いを比べてみた

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樋口裕介の写真
樋口 裕介(ひぐち・ゆうすけ)
一級畳製作技能士樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
2021年10月27日(水)、TOKYO MX「バラいろダンディ」に出演し、畳職人としての技術やこだわりが特集されました。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
一級畳製作技能士 資格証 京都畳競技会 優勝トロフィー
一番高い畳お願いしまーす

将来一回は言われてみたいことです(笑)

でも一般的に高い畳と安い畳って何が違うのかわかりませんよね。

そこで今回は、安い畳と高い畳の何が違うのか比べて解説しようと思います。

この記事でわかること
・安い畳とは何か
・高い畳とは何か
 今回の記事で使用される画像について注意があります。高い畳で使用した画像は著作権を有しています。無許可で勝手に使用することは絶対にやめて下さい。

安い畳ってどんなの?

まずは一番安い畳からご紹介していきます。

材料
☆畳表:綿糸引き中国産畳表
☆畳縁:黒(もしくは茶)PP
☆畳床:ボード二型

仕様
☆【框・平刺し・返し】ALL機械縫い
☆厚さ調整はテープ(または古い畳表)

相場
☆新畳の相場  7,000円〜8,000円(地域によって差がある)
☆表替えの相場 4,000円〜5,000円(    同上    )

こちらの商品は主に公共団地やマンション、アパートなどの集合住宅、借家などを総替えする際に用いられる畳です。

安い畳表

初めは緑色で綺麗な色をしているように見えますが、アカイ(赤い焼けた「い草」)などが多く、すぐ色が変わってしまうのが特徴。

畳表自体の厚さも薄く、い草が詰められていないためすぐに傷んでしまいます。

また、石炭によって急激に乾燥させているため、酸っぱい香りがします。

安い畳縁

畳縁は少しピカピカしている黒(もしくは茶)色のヘリ。ちょっと擦っただけで光ってしまい傷つきやすい。

安い畳床

畳床は二型のボード。二型というのは二層とも言い、材木をチップにして固めたボードと断熱材のスタイロフォームを合わせたもの。

耐久性は10年持ったら良い方。子供のいるご家庭で使われているなら7年持たないかもしれません。

というのも、下がスタイロフォーム剥き出しなので、圧力が加わった時にダメージを受けやすい。ダメージが大きくなれば糸が緩み、畳表や畳縁がダボついてくる。

畳床そのものだけでなく、畳表や畳縁にまで影響が生まれる為、長く持たないのです。

ただ、この畳はこれで良いのです。

なぜなら3〜5年くらいの期間で入れ替え工事をする現場での畳なので、耐久性に多少難があっても問題ありません。

適材適所です。

もちろんお客様に「この畳を入れて欲しい」と言われれば快く承りますが、上記のことを踏まえての注文で宜しく御願い致します。

高い畳ってどんなの?

それでは最高級品の畳をご紹介します。

材料
☆畳表:備後中継ぎ表・備後表・熊本ブランド「ひのさらさ」麻W
☆畳縁:本高宮縁・北山本麻縁・純金縁
☆畳床:丹波裏床・棕櫚裏床

仕様
☆畳表からくり止め
☆框板入れ(框の角を立たせる)
☆伏せ框縫い(厚さ調整は熱処理した藁)
☆平刺し(関東は肘締め。京都は裏締め)
☆返し(厚さ調整は框と同様に熱処理した藁)
☆畳の角(鎹二本)
☆上前と下前の両方を目のりにする
相場
☆新畳の相場  (時価)
☆表替えの相場 (時価)

こちらの商品は主に日本の伝統的な建造物に納められている畳になります。

高い畳表

画像にある畳表は中継ぎといって贅沢にもい草の真ん中だけを使った畳表です。

真ん中しか使っていない為、畳表の太さは分厚く、ちょっとの事では傷が付かない丈夫な表になっています。

色も真緑というより白っぽい色で焼けると綺麗な黄色になります。

備後表の謳い文句に”使えば使うほど金色に輝く”とありますが、その通りで日本最高級品と言われるのに相応しい。

しかしながら、その備後表を追い越そうとしているのが、熊本ブランドの「ひのさらさ」です。

畳表の生産地で熊本が有名なのはご存知でしょうか。

熊本の大自然と美味しい水、恵まれた天候は丈夫で美しい畳表を育てるのに適した環境です。

また生産が盛んな熊本では日々農家さんが切磋琢磨し、い草栽培に勤しんでいる為、さらに磨きのかかった畳表が出来ます。

その熊本ブランドの中でも「ひのさらさ」の美しさは最高級畳表である備後にも引けをとりません。

この美しさを皆さんにも見てもらいたい

そんな気持ちになります。

高い畳縁

ここだけの話。

高い畳縁だからめちゃくちゃ丈夫で良い商品なわけではありません。

というのも昔から縁は格式を表すものとして使われてきました。

絹で作った紋縁は少し汚れた手で触ると直ぐに黒くなってしまいます。

高宮縁について深くは触れられませんが、そこまで丈夫なものではないとだけお伝えしておきます。

ただ、北山の麻縁や純金縁などは丈夫で、これぞ高価な畳縁!オーラを出しているので高級志向の方にはオススメかもしれません。

高い畳床

超高級な畳床は主に2つ。

丹波産の藺草を裏に編み込んだ最高級畳床「丹波裏畳床」と棕櫚を裏に編み込んだ最高級畳床「棕櫚裏畳床」。

一般的な藁床に比べると湿気が上に上がる(藁床を通って表に上がる)のを棕櫚又は丹波藺草が防いでくれると言われています。

今でこそもっと便利に湿気を防ぐ術はありますが、自然のものだけを使い湿気を防ぐのは、先人たちの知恵と言うべきでしょう。

また、昔の人は畳の裏側にも美を求めました。

昔の人は藁が剥き出しの状態を「美しい」とは思わなかったのかもしれませんね。

ちなみに京都式の返し藁は穂先が出ないように捻って入れるのが基本です。(これは四つ割りなので捻り過ぎですが)

普通の畳の時はこれくらいですかね。

藁を巻いた方が「美しい」と感じるか、巻かない方が「美しい」と感じるか、糸が縦になっている方が「美しい」と感じるか、斜めになっている方が「美しい」と感じるか。

これらは好みになりますので、職人それぞれの価値観で違った畳になります。

畳を語る時に一番大切なのがまさに「これ」なんです。

裏についてる藁がどう施工されているかなんてお客様からしたらわからないことです。畳を敷いてしまえば、見えないですもの。

そういった目に見えない(見えにくい)場所にこそ技術力を使う。これが職人としてあるべき姿だと私自身思っています。

昨今、AIやロボットなどが「人間の仕事を奪う」などとよく耳にしますが、合理的選択しかしない”彼らの目”だけでは本物を届けることはできません。

むしろ”彼らの目”と共創してものづくりに励む必要があると思います。

ちょっと関係ない話になってしまいましたが、高い畳と安い畳の大きな違いは「職人の技術力」の使い方にあると言えるでしょう。

最後に

いかがだったでしょう。

安い畳と高い畳の違いについて理解してもらえましたか?

安い畳も決して悪いわけではないし、高い畳が絶対に良いわけではありません。

お客様の望んだものにマッチした畳が一番良い畳なんです。

むしろ、私たち畳業界にいるものが、望みを叶えてあげられてないのかなとも思ったりします。

読んでいただきありがとうございました。