【一級畳製作技能士の仕事道具】樋口畳商店のこだわりの道具と材料

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樋口 裕介(ひぐち・ゆうすけ)
一級畳製作技能士樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
2021年10月27日(水)、TOKYO MX「バラいろダンディ」に出演し、畳職人としての技術やこだわりが特集されました。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
一級畳製作技能士 資格証 京都畳競技会 優勝トロフィー

皆さん、こんにちは!樋口畳商店の樋口です。

今回は、一級畳製作技能士のこだわりの道具と材料について紹介します。一級畳製作技能士がどんな道具と材料で畳を作っているのか気になる方の参考になれば幸いです。

一級畳製作技能士の仕事道具

まずは樋口畳商店のこだわりの道具から紹介したいと思います。

畳を縫う畳針

畳針とは、畳を縫うのに使う針のことで、一般的な縫い針に比べてかなり長く太いものになっています。

主に畳針は四寸五分と四寸八分の針を使いますが、私は五寸の少し長い針も愛用しています。(返し縫いがやり易いため)

畳針は京都市中京区にある重春で購入しています。重春の畳針は「刺しにくく抜きやすい」と言われ、画像で確認できる通り、先端部分から七分くらいのところが膨らんでいる為、畳に針が入りにくい。しかし、一度入ってしまえば膨らみに指が引っ掛かり針が簡単に抜ける。といった畳針になっています。

人によっては刺しやすくて抜き難い畳針の方が良い!と言った方もいらっしゃるので、一概に重春の針が素晴らしいとは言えませんが、私は大好きな畳針です。

琉球表で作った畳糸を入れる糸づつと畳針を押し込む手作りの手当て

畳職人は糸づつにもこだわります。糸づつは畳の糸を入れるつつのことで、手縫いをする際にすぐに糸を取り出し、縫えるようにするための道具です。

糸をたくさん引っ張るわけですから、糸が引っかかってしまうと摩擦で痛んでしまったり、切れてしまう可能性があります。

糸がスムーズに抜けるために工夫された作りになっていること。もうひとつは、糸を抜いた時に右手に輪っかが来るように作られています。

おそらく意味がわからないと思いますが、畳の意図の形状は片方に輪っかが付いているのです。その理由は、糸を繋げる際に輪っかに通して繋げるため輪っかが必要になります。

右手左手どちらに輪っかがくるのかわからなければタイムロスになってしまうため、私は右手に輪っかがくるようにしてあるのです。

糸づつの上に三角形の手当てがあると思いますが、これも手作りで作ったものです。こだわりとしては綿縁を使うこと。(麻縁があったら麻縁がいい)しっかりと張って弛みが出ないように作っているため、何回畳を縫ってもボロボロになりません。

手当ての中には金当てをいれています。この前、それも貫通したので、畳の硬さは恐ろしいと思いました。

畳表を止める畳専用まち針

こちらは畳表を張った時に使う畳専用のまち針です。ミシンをやる方はびっくりすると思いますが、畳用のまち針はめちゃめちゃでかい。先が針なので、急いで作業をしているとたまに指を間違えて刺してしまい針が貫通することがあります。

畳で包丁の次に怪我が多い道具なので気をつけて使わなければなりません。

まち針の頭についている丸い金具は作業をしていると取れてきます。そのため、まち針を買った際にはクルーガンなどでロウを溶かして固める必要があります。

用途が色々な畳ヘリ引き

畳を作る際に絶対欠かせない道具なのがこちらのヘリ引きです。ヘリ引きと名前の通り、畳縁を引っ張った際に止める道具ですが、それ以外にも畳表を切りやすいよう上前を止めたり、畳の隅を綺麗に畳んで止めたりなど用途はたくさんあります。

縁幅に落とす目落とし定規

お茶室の仕事をする時、畳で大切なのは畳縁の幅長さと畳の目です。もし9分半と言われていたのに1寸になってしまえば施主が望んだ形ではなくなる。畳の目だってそうです。畳の目がしっかりとのっていないとお茶の作法に影響が出てしまいます。

わずかな狂いも許されない。そのために重要なことは目落としを自分の目で見て確認し、必要であれば削ったり、新しいものに取り替えることです。

良い仕事ができる、できないは道具が最善の状態かを確認することだと思います。

畳縁のヘリ幅を決める毛引き

毛引きとは畳縁のヘリ幅を決める道具です。先ほどの目落としと同様、畳のヘリを決めるとても大切な道具です。

画像右にある飛行機型の毛引きは紋縁やヘリ幅を細くしてほしいなどといったオーダーメイドに対応できる道具です。

畳に引っ掛けて持ち上げる手鍵

こちらは畳に引っ掛けて畳を持ち上げる手鍵という道具です。今から40年以上昔はヘリ引きで畳を持ち上げていましたが、それだと持ち上げ難く、畳表に傷がついてしまう可能性がありました。

この手鍵が出来てからその心配はなく安心して畳を持ち上げられるようになったのです。

これはお茶の先生も持っている道具になります。お茶室では炉畳にはめる小さい1尺4寸の畳を持ち上げなければなりません。掘りごたつだと畳に取っ手のようなものを取り付けることもありますが、お茶室では不細工です。

なので、お茶の先生にとっても手鍵は大切な道具になります。

畳を縫った糸を締める締め鍵

こちらの道具は畳を縫った糸を締め直すのに使ったり、畳を解体するのに使う道具です。先ほどの手鍵に形状は似ていますが、手鍵で糸を締めることはできず、締め鍵で畳を持ち上げることはできない。

明確に違いのある道具です。

ちなみに締め鍵の先っぽは平たく尖った形状になっているので、糸を締めた後に余った糸を切る時に包丁やハサミがなくても締め鍵で切ることができます。

誰が考えたのか知りませんが、本当に畳職人想いの道具だと思います。

畳を切る畳包丁

畳包丁とは、畳専門の包丁になります。

畳包丁の主な用途は、畳床を切る以外にも、解体作業(畳を解体する作業)や表を切る作業(畳表の長さを切る作業)、目落とし(畳の目が乗るように端を落とす作業)に上前下前の落とし(寸法を合わせる為に切る作業)など沢山の作業で使う道具です。

もちろん、たくさん使えばその分切れ味に差が出るので、包丁一本で技術に差が生まれるのは、料理と少し似ているかもしれません。

なので、包丁選びも慎重になります。樋口畳商店が使っている包丁は畳針と同じく重春の包丁を使っています。また重春?と思うかもしれませんが、重春の大包丁は頭に適度な重みがあり安定性が他のと違います。

また、畳用待ち針の裏で包丁を叩いてみると高音によく響きます。ハズレの包丁は低音で響かないので、重春の包丁は良い包丁なのがわかります。

もちろん、包丁の研ぎ方の上手い下手で切れ味(切れる持続回数)もだいぶ変わりますが、私は重春の包丁が気に入っています。

畳の染土を優しく落とす畳ブラシ

樋口畳商店ではブラシにもこだわっています

。畳表に付いている染土。これは畳表の日焼け止めの為に付けられているものです。

使わない部屋であれば染土を取らないことをおすすめしますが、一般的に使う部屋であればお客様の靴下を汚してしまうので染土は除去した方がいい。

とはいえ、一般的なブラシでは畳表を傷つけてしまう可能性もあります。

そこで樋口畳商店では豚毛のブラシを使って染土の除去を行なっております。一般的なブラシに比べて柔らかく細かいので畳表を傷つけず、綺麗に染土を取ることができます。

お気に入りのこだわり道具です。

小型で素早く畳が縫える逢着機

樋口畳商店では二台の平刺し機を所有しています。機械は東海のロビン。小型逢着機ですので、出仕事にも打って付けの機械です。

平刺しをあっという間に終わらせてしまうだけでなく、縫い目も非常に綺麗なことから大変気に入っています。

こちらの機械は返し専用の小型逢着機です。一般的な返し機より縫う速度が速く、綺麗に縫うことができます。縫い目が変えられないのが残念ではありますが、小型にしては十分な性能だと私は思います。

とはいえ、これら機械は如何せん古い機械ですので、埃がたまるとすぐに故障してしまいます。

ですので樋口畳商店では、一ヶ月に一度全てを分解し、機械内部を洗浄しています。古くなったネジがあったら新しいネジと取り替えたり、糸が引っかかる部分を鉄ヤスリで研いだりと日々メンテナンスを行なっております。

これからも大切に使っていきたいと思います。

畳を傷つけずに掃除ができる畳用棕櫚ほうき

樋口畳商店では畳替え完了後のお掃除に草ほうきと棕櫚ほうきを使っています。棕櫚ほうきは柔らかく繊細なほうきですので、新しく変えた畳に傷がつきにくくホコリが取れるので大変気に入っている掃除道具です。

草ほうきは和紙表や化学表の施工完了後の掃除に使っているほうきです。埃がとりやすく使いやすいのが特徴。廊下の掃き掃除にも使えるので、便利で気に入っています。

これをご覧の皆さんも棕櫚ほうきと草ほうきは和室を掃除するのにおすすめなので、買って試してみてください。(棕櫚ほうきは買ったばかりの時、白い粉みたいなのが付着している場合があります)

樋口畳商店こだわりの材料

続きまして樋口畳商店のこだわりの材料を紹介します。

選りすぐりの国産畳表

畳屋さんが畳表にこだわるのは当然ですが、

樋口畳商店ではより強いこだわりをもって国産を選ばせていただいています

藺草は農作物ですので、毎年畳表の完成度は違います。バイヤーに選んでもらうのではなく、しっかりと自分の目で見て判断していますので、皆様にも納得して頂ける商品だと自負しています。

11月ごろ新草が出回りますが、樋口畳商店では半年間袋に入れて寝かせてからお客様に提供しています。そうすることで、焼けムラが少ない畳になりますし、カビが発生しにくい畳にもなります。

もちろん、こだわりは管理だけではありません。

畳表の施工にもこだわりがあります。それは藺草の端止(かがり、からくり)です。この作業を東京でやっている畳屋さんはまずいないと思います。

しっかりと糸で止めている為、藺草が抜けず何年経っても畳表が締まった状態になります。からくりをするかしないかでは、10年使って違いが必ず出ると私は思います。

お客様からはよく早送りなの?と言われますが、こちらの動画は一切編集していません。京都修行時代から毎日何枚も何枚もからくってきた積み重ねの結果になります。

地味な作業ではありますが、私はとても大切にしている作業です。

畳縁

樋口畳商店では100種類近くの中から畳縁を選ぶことができます

多ければ良いってわけじゃない!多過ぎて選べない!そういった意見もあるかと思いますが、子供部屋っぽい畳縁がいい!同色系の畳縁ってある?寝室を旅館っぽくしたい!など様々な希望に応えることができるので、私はなるべく沢山の畳縁をご用意したいと考えています。

とはいえ、そんなに多いと選べない!という方の為に私のブログで人気おすすめの畳縁と幸運を呼ぶ畳縁(和柄の意味)を紹介しています。そちらを参考にしてみてください。

▼人気おすすめの畳縁:

▼幸運を呼ぶ畳縁:

40年使っても切れない縫い糸

こだわっている材料は何もお客様の目に見える部分だけではありません。

樋口畳商店では縫い糸にもこだわっています

そもそも縫い糸は固められてお店に届きます。そのまま使えば糸が畳の中で引っ掛かって切れてしまったり、玉ができる原因になります。

ですので、まずはしっかりと糸を解します。

ただし、適当にほぐしまくれば今度は糸が弱くなってしまうので、適度にほぐしていく。

次に植物性の油を糸が特に固まっている部分に塗ります。こうすることで糸がよく滑り作業がしやすくなります。結果、作業時間が短縮されるわけです。

カビにも強い機械糸

樋口畳商店では機械糸にもこだわっています

。使っている機械糸はクレモナ#3。畳機械糸としては最高級の糸を使って畳を作っています。

畳は糸を使って縫い止めるもの。糸が軟弱ではお客様に長く使ってもらえません。樋口畳商店では出来るだけ長く使ってもらうことを前提に畳作りをさせていただいております。

中途半端な材料も道具も使わない。畳糸であってもこだわっていきたい思います

手作りの畳が回転する作業台

こだわりの畳作業台を新しく作りました。

この作業台の特徴は畳を縫いやすいように框部分を少し出したこと、回転台を取り付けたことで畳を回転させることができて作業効率をアップさせたこと。

作業台の高さを高くしたことで、腰への負担も軽減されます。

回転台の安定性についてはYouTube動画をご覧ください。

最高峰の畳逢着機械「久保式畳縫着機」

この度、樋口畳商店に新しい畳機械を導入致しました。

畳機械の名前は久保式畳縫着機。私で京都で修業していた頃からお世話になっていた畳機械です。京都の名工に愛され、久保式の機械で縫った畳じゃないと仕事は頼まないと言われるほどの機械です。

今後、もっとお客様に喜んでいただけるように、こだわりの道具と材料を揃えて参ります。

久保式畳縫着機についてはこちら↓

以上、【江戸川区の畳屋】樋口畳商店のこだわりの道具とこだわりの材料でした。

最後に

樋口畳商店では今後もこだわった材料とこだわった道具を使って畳作りに邁進して参りますので、是非とも注文頂けたら嬉しいです。

▼お問い合わせはこちら

▼樋口畳商店へのアクセスはこちら↓

樋口畳商店代表 樋口裕介メールアドレス

電話番号

080−3802ー8084

お店の所在地

東京都江戸川区中央4−8−1

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