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一級畳製作技能士/樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
2021年10月27日(水)、TOKYO MX「バラいろダンディ」に出演し、畳職人としての技術やこだわりが特集されました。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。


みなさん、こんにちは。畳職人の樋口 裕介です。
私は現在、一級畳製作技能士の資格を持ち、京都・江戸川区を拠点に畳の製作・張り替えを手がけています。資格・受賞歴・講演を通して、畳文化の価値を広めることを自分の使命と感じています。
今日は、私が15年以上畳職人として働いてきて、「これが畳職人のやりがいだ」と確信している3つの要素をシェアします。畳屋や職人の仕事に興味がある方、これから技術を磨きたい方のヒントになれば嬉しいです。
畳職人のやりがい3選
- ものづくりの深い楽しさ
- 使命感
- お客様の喜ぶ笑顔
1.ものづくりの深い楽しさ

畳職人にとって、「畳を作る」というのは単なる作業ではありません。
- 国産い草の手触り、縁の柄合わせ、畳表の織り目など、細部へのこだわりが詰まっています。
- お客様からは見えない「裏」、「角」、「縁」の折り返しなど、一見目立たない部分を丁寧に仕上げたとき、自分の中で「技」が昇華する感覚があります。
このお客様から見えない部分の仕事への誇りが、ものづくりの楽しさの源です。
最近、職人とは何をもって職人というのか、とても考えます。ただ職人と名乗っているだけなのか、それならどんな仕事も職人ですよね。私はこう考えます。
職人とは、職に対して深く追求する人。それを職人と言うのだと思います。どうやったら綺麗に作れるか、どうやったら長持ちするか、どうやったらデザイン性豊かな創造的な畳が作れるか。それは全て畳の仕事に対して追求するからこそ生まれる感情だと思います。
畳職人のやりがいも職に対しての探究心から一緒に生まれてくるのだと思います。
2.使命感:伝統を守り、素材を敬い、お客様に誠意を尽くす

畳製作は畳職人だけで成り立ってはいません。
い草を育てる農家さん、畳表を織る職人、そして私たち畳屋がいて初めて一枚の畳が完成します。
- 農家さんの苦労を知り、その素材を活かすことに使命を感じます。
- 畳は千年以上続く日本固有の文化のひとつ。文化財やお茶室、旅館などで使われる責任もあります。
- このブログや媒体出演や講演などを通じて、「畳とは何か」を伝えていくことも、自分の役割だと感じています。
これらの“使命”が、自分を今日の仕事に引き戻す原動力になています。
畳職人の役割は、日本固有の伝統的、文化的な敷物である畳を保守することです。それは皇族や神社、お寺に使われる有職畳に限った話ではありません。一般のご家庭に使われている畳も後世に残していく義務があります。
海外の方に日本をイメージするものは?と質問をすると侍や桜と並んで必ず和室(畳ルーム)が挙げられます。それだけ畳は日本の文化的な象徴と言っても過言ではないほどになっているのです。
畳の文化を守ることは、日本の伝統文化を守ること。少し言い過ぎかもしれませんが、私たち畳職人はそれぐらいの気概をもって仕事に取り組んでいます。
3.お客様の喜びの顔:直接のフィードバックが励みになる

畳を納めた後のお客様の声ほど、職人にとってのモチベーション源はありません。
- 「畳の香りが戻ってきた」「和室が生まれ変わった」と言われる瞬間、すべての苦労が報われる気がします。
- 表替えした時、色褪せや破れが消え、部屋全体の雰囲気が変わるのを見るのは何度でも感動します。
- お客様の「ありがとう」の言葉が、技術と心の両方を磨くきっかけになります。
畳を納めた後に見るお客様の笑顔ほど「畳職人の仕事をやっていてよかった」と思うことはありません。自分の手で作った畳が、自分の手でお客様の部屋に敷かれ、お客様から喜んでもらう。こんなに幸せなことはありません。
18歳でこのような仕事に出会えたこと、私は幸運だったと思っています。これからもお客様に喜んでもらえるよう技術と技能、そして料金の方を頑張っていきたいと思います。
最後に
もちろん、人によって「やりがい」の感じ方は異なります。
お金や安定を求める方もいれば、スキルや美しさを追求する方もいるでしょう。私の場合は、この3つのやりがいがあれば、どんなに状況が厳しくても、畳職人という道を選んで良かったと心から思えます。
もしあなたが「畳職人」「ものづくり」「伝統文化」に興味があるなら、この仕事はきっと大きなやりがいを感じさせてくれるはずです。
▽畳職人になるには?こちら:
読んでくださってありがとうございました。