音楽家にとって一番幸せな演奏とは何だろうか。
それは王宮で王族や貴族の為に演奏することだろうか?たくさんの大衆の前で演奏することだろうか?動画でたくさん「いいね」されることだろうか?
私は音楽家じゃないから何が幸せかそんなことは知らないが、ボロ家で亡き妻の為に演奏する音楽家はきっと幸せな演奏をしているのではないかと思う。
これまでの長い歴史の中、音楽は誰の為に創作されてきたのか。その多くは自分にとって大切で欠けがいのない愛する人のために創作されてきた。
死者には決して届かない。鎮魂歌は自分への慰めでしかない。それでも音楽は止むことなくずっと続いて行く。
Soll ich? Nun, hören Sie.
Glück, das mir verblieb,
rück zu mir, mein treues Lieb.
Abend sinkt im Hag
bist mir Licht und Tag.
Bange pochet Herz an Herz
Hoffnung schwingt sich himmelwärts.
Paul
Wie wahr, ein traurig Lied.
Marietta
Das Lied vom treuen Lieb, das sterben muss.
Was haben Sie?
Paul
Ich kenne das Lied.
Ich hört es oft in jungen, in schöneren Tagen.
Es hat noch eine Strophe--
weiß ich sie noch?
Naht auch Sorge trüb,
rück zu mir, mein treues Lieb.
Paul & Marietta
Neig dein blaß Gesicht
Sterben trennt uns nicht.
Mußt du einmal von mir gehn,
glaub, es gibt ein Auferstehn.
妻との想い出が想起される。もう一度、過去に戻れたら。その願いは儚く虚しいものだが、彼の世界は幸福に満ちているに違いない。
(音楽だけが彼を救うのだ)
どれだけ素晴らしい音楽があろうとも、どれだけ素晴らしい演奏家がいようとも、私たち聴衆は本当の意味での幸福な音楽を聞く日は来ないのかもしれない。