今回は新型コロナウイルス後の家づくりとは?多目的と可変性の二つのポイントで和室の重要性を説きます。
新型コロナウイルス後の社会はソーシャルディスタンス(社会距離拡大戦略)が重要だと言われています。ソーシャルディスタンスとは、簡単に言ってしまえば社会的に距離を取りましょう。ということです。日本では三密(密閉、密接、密集)なんて呼ばれています。
これらのことは社会活動だけでなく、家づくりに大きく関わってくると私は思っています。
例えば、日本でも大人気のダンスレッスン。私もクラブで何度か拝見しましたがメチャメチャかっこいいですよね。とはいえ、ダンス教室は三密になる可能性が非常に高いものです。今後、もしかしたらオンラインでのダンスレッスンが加速する可能性があります。
もしそうなったとして、ダンスレッスンする場所はどこでしたら良いのでしょうか。マンションに住んでいる人は下の会の住人に迷惑を掛けてしまうかもしれない。つまり何かしらの吸音材を敷き防音対策しなければなりません。
ダンス教室以外にもボクシングジムや筋トレ、外に出られない場合の軽い運動、オンラインの音楽教室などの趣味に使う部屋だけでなく、在宅勤務(リモートワーク)やオンライン塾など仕事や学習に関するもの。
これら全てに対応する家づくりを考えたらとんでもない間取りと金額になってしまいますよね。したがって、新型コロナウイルス後の家づくりは、多目的に使えるスペースこそがポイントになってくると私は思っています。
そして、新型コロナウイルス後の家づくりで、もう一つだけポイントがあります。それが可変性です。
「住まいは可変性が大事」なんてよく聞きますよね。可変性とは、ライフスタイルの変化に応じて、変わっていくことが可能な家づくりのことを言います。
一般的には改築や増築、リノベーションしやすい家のことを可変性のある家と呼びますが、空間を仕切ったり、広げたりすることが可能ならそれもまた可変性と言えます。
そこで本題になりますが、多目的と可変性この二つをポイントとした場合に、新型コロナウイルス後の家づくりは、和室こそが重要なスペースになるのではないかと思っています。
和室の重要性
②可変性
多目的
多目的と言えばホール(大広間)をイメージする方も多いのではないでしょうか。
クラシックコンサートをしたり、演劇をしたり、卒業式を開催するなどの様々な目的に合わせて活用できるよう作られた空間になります。
無論、普通の家ではクラシックコンサートも演劇も卒業式も開催することは不可能ですが、様々な目的に合わせて活用できる空間を作ることは可能です。
それが和室です。
つい最近まで、「和室は何に使えばいいの?」とか「和室の使い方がわからない」なんて言葉をよく耳にしました。これはネガティヴに捉えれば批判的にも聞こえますが、ポジティブに捉えれば和室は何色にも染まっていない空間だと言えます。
他の部屋であれば、ベットを置いた瞬間「寝室」になり、子供の机を置いた瞬間「子供部屋」になります。子供部屋で子供が寝るのは有り得ますが、子供部屋で親が寝るのはほとんど有り得ません。それと同じで親の寝室に子供の机を置くことはほとんど有り得ません。
つまり目的が固定化されてしまっているということです。
今までは、これでも問題ありませんでした。決まった部屋で生活する方が楽だったはずですから。とは言え、今後は多目的に必要な部屋が絶対に求められます。
和室であれば寝室はもちろんのこと、勉強部屋としても、仕事部屋としても、客間としても使えます。畳には音を吸収する吸音材としての効果も期待できるので、軽くダンスを踊ったり、筋トレをしたり、趣味に使うこともできます。
多目的という意味では和室は優れた空間だと言えます。
可変性
皆さんは、なぜ日本という国は壁ではなく、襖や障子で空間を仕切るのか考えたことがありますか?
これにはいくつか説があります。その中でも一番有力な説が可変性です。
平安時代当時は寝殿造りの為に、広間様式でした。広間様式とは、その言葉通り広い座敷が連なっている様式です。何故このような様式(作り)になっているかというと、もし寝殿造りを壁や扉で仕切ってしまうと季節の変化に対応することができないことや行事などが行えないこと、饗宴などができない為に、襖や障子を使用し空間を仕切るようになったと言われています。(他にも説はあって、寝るときに姿を隠す為に空間を仕切るようになったとかいろいろです。詳しくは日本史を勉強している学者さんに聞いてください)
もしこの仮説が正しいとしたら、日本という国は一年の中で空間を仕切ったり、広げたりと可変していたことになります。実はこの仮説を証明するかのように京都では毎年、夏仕様と冬仕様で全く異なる生活環境に変える文化が未だに残っています。
もともと我々日本人は可変性のある家に住んでいたのです。
では、なぜ新型コロナウイルス後の家づくりで可変性のある家づくりが求められるのか。その理由は先ほどの多目的とも関係しますが、ライフスタイルの変化が著しいからです。
今回の新型コロナウイルスが世界を一変させるようなパラダイムシフトになるとは私は考えていません。とはいえ、今まで当たり前のように出勤していた人々がリモートワークになったり、ヨガ教室やダンスレッスンに通っていた人々がオンライン授業になったりと新型コロナウイルスによって生活は間違いなく変化しました。
新型コロナウイルス前までは「ライフスタイルの変化は人によるよね」なんて言っていました。今は違いますよね。おそらく日本だけでなく世界中の人々がライフスタイルの変化を感じていると思います。
これからもっと加速するはずです。
そこで求められるのが可変性です。空間を仕切ったり、広げたりと空間の可変によって変化が大きいライフスタイルにも対応できる家づくりが重要になるのです。
私は畳職人なので確かにポジショントークも入っています。ただ、可変については和室(畳)を除いても考えるべきポイントだと思います。
新型コロナウイルス後の家づくりについて少しでも参考になれば嬉しいです。
以上、新型コロナウイルス後の家づくりでした。
最後に
和室を無くしてリビングを広くする。といったデザインは私も好きですが、必ずしも暮らしやすいわけではありません。(冷暖の問題、エネルギー効率も含めて)
特に新型コロナウイルス後は空間を仕切る、広げることができる方がより暮らしやすいはずです。
私はポジショントークで和室だ!畳だ!と言っていますが、多目的に使えること、空間を仕切る、広げる事が出来ることは家を作る(リフォーム&リノベーション)うえで考えるべきだと思います。
読んでいただきありがとうございました。