一流の職人になるには?熟練の職人が実践する上達の秘訣

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樋口 裕介(ひぐち・ゆうすけ)
一級畳製作技能士樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
2021年10月27日(水)、TOKYO MX「バラいろダンディ」に出演し、畳職人としての技術やこだわりが特集されました。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
一級畳製作技能士 資格証 京都畳競技会 優勝トロフィー

一流の職人とは?

一流の職人とは、一般的に最も優れた職人に使われる言葉。もちろん、一流の職人とは自分で名乗るものではない。たくさんの人から「この人の技術はすごい」そう認められて初めて一流の職人と呼ばれるようになる。

職人の世界で働く誰もが目指していることで、当然私も一流の職人を目指して日々頑張っている。とはいえ、一流の職人になる為の方法を誰も教えていない気がします。

そこで今回は、一流の職人になるには?熟練の職人が実践する上達の秘訣をご紹介します。職人業界で頑張る皆様の参考になれば幸いです。

※誤解ないように言っておきますが、これはあくまで熟練の職人が実践する上達の秘訣です。私の考えでも教えでもありません。実体験は含みますが、尊敬する熟練の職人から聞いた話、見た話を参考にしています。自分も書いてインプットすることで、皆さんと一緒に勉強していく気持ちですので、そこのところよろしくお願いします。

一流の職人になるには?熟練の職人が実践する上達の秘訣

  • 守破離の手順
  • プレッシャーがある仕事を率先してやる
  • 技術や技能を論理的に解説する
  • 過去の技術に囚われず未来に活きる技術を学ぶ
  • 自己評価を低くして素直に学ぶ

1. 守破離の手順を大切にする

職人の世界でよく語られる「守破離」。これは上達の王道ともいえる考え方です(元々は茶道家がお茶の作法を学ぶ手順だったのですが、それが職人の業界にも浸透したと考えられています)。

  • :まずは師匠や先輩の技を正確に守り、徹底的に真似る段階。自分のやり方を出す前に、基礎を身につけることが最優先です。
  • :基礎を習得したら、自分なりの工夫を加え、新しい技術や改善を試みる段階。
  • :最終的には型から離れ、独自のスタイルを築き上げる段階。

この順番を踏まずに「自分流」を目指すと、基礎が欠けたまま中途半端になってしまいます。まずは守から始めることが、一流の道の入り口です。


2. プレッシャーがある仕事を率先してやる

一流の職人は、あえて難しい現場や責任の重い仕事に挑みます。

「失敗したらどうしよう」と思う場面こそ、成長のチャンスです。プレッシャーの中で技術を発揮する経験は、自分を大きく鍛えてくれます。

熟練の職人の中には「楽な仕事ばかりしていては腕は磨かれない」と言う方もいます。小さな場数ではなく、大きな挑戦こそが一流への近道なのです。


3. 技術や技能を論理的に解説する

職人は「技は見て盗め」と言われることも多いですが、一流の職人は感覚や経験に頼りきりません。

例えば、道具の使い方や材料の特性を「なぜそうするのか」を論理的に説明できるようにします。そうすることで後輩に正しく伝えられるだけでなく、自分自身の理解も深まります。

「感覚でできる」から「理屈でも説明できる」へ。このステップを踏むことが、技術の質を一段引き上げるのです。


4. 過去の技術に囚われず未来に活きる技術を学ぶ

伝統を大切にしながらも、新しい技術や道具を取り入れる柔軟さが必要です。

例えば、畳職人なら昔ながらのい草畳を守りつつ、和紙表や樹脂表など現代のニーズに合った素材も扱えることが強みになります。

「昔からこうだから」ではなく、「これからの時代に求められる技術は何か」を学び続ける姿勢が、一流の職人を形づくります。


5. 自己評価を低くして素直に学ぶ

一流の職人ほど謙虚であり、常に学び続けています。

「自分はまだまだだ」と思える人は、年齢や経験を重ねても成長し続けます。逆に「もう十分」と思った瞬間から腕は止まってしまうものです。

熟練の職人は、自分より若い人や異業種の人からも学ぼうとします。素直に受け入れる心が、結果的に技術を磨き続ける力になるのです。


まとめ

一流の職人になるには、ただ長く働けばいいわけではありません。

  • 守破離を意識した学び方
  • プレッシャーのある仕事への挑戦
  • 技術を論理的に説明する力
  • 未来に活きる新しい技術の吸収
  • 謙虚に学び続ける姿勢

これらを意識して積み重ねることで、自然と「一流」と呼ばれる日がやってきます。

私自身もまだまだ道の途中ですが、熟練の職人たちから学んだこの考え方を胸に、日々精進していきたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。