京都人は本当に腹黒い?京都で修業した職人が体験した“京都人の裏の顔”の真実

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樋口 裕介(ひぐち・ゆうすけ)
一級畳製作技能士樋口畳商店 代表
京都市にある黄綬褒章を受章した現代の名工の店「沢辺畳店株式会社」で修業後、東京都江戸川区にて樋口畳商店を独立開業。
京都畳競技会 京都府知事賞優勝/国家資格 一級畳製作技能士 取得。
2021年10月27日(水)、TOKYO MX「バラいろダンディ」に出演し、畳職人としての技術やこだわりが特集されました。
東京都江戸川区の神社仏閣から一般住宅、お茶室や屋形船、ゲストハウスまで幅広い施工実績。
一級畳製作技能士 資格証 京都畳競技会 優勝トロフィー

皆さん、こんにちは!樋口畳商店の樋口です。私は高校を卒業して6年以上京都に住んでいました。京都に住むまで、皆んな同じ日本人なのだから県民性などないと勝手に思っていたのですが、京都人はビックリするぐらい表と裏がありました。

今回は、京都人は本当に腹黒い?京都で修業した職人が見つけた“京都人の裏の顔”の真実を紹介します。京都人の皆さんは、どうか温かい目でスルーしていただければ幸いです(笑)。

※私は京都に6年も住んでたくせに京都弁はおろか関西弁が一切喋れません。京都人の会話が標準語になりますが、ご了承ください。

大雪の見積もりで

ある日、私は社長に頼まれて車で見積もりに出かけた。その日は京都でも珍しく大雪で、路肩には雪が積もっており、道路はスリップするほど凍ってた。

雪道を運転したことない私はめちゃめちゃ怖かった。滑らないように慎重に運転した。しかし、そのせいで10分くらい遅刻しそうになってしまった。

私は車を路肩に止めて、社長に電話し「大雪で渋滞しているので10分くらい遅刻します。先方に伝えておいてもらえますか?」とお願いをした。社長はすぐに先方に連絡を入れてくれて、私が遅刻することを伝えてくれた。

私は安心してゆっくりとお客様の元へと向かった。

お客様の家に着くと玄関のインターホンを押して、「遅くなって申し訳ありません。畳屋です。お見積もりに参りました。」と伝えた。

お客様は何も言わず、玄関の扉をあけて「早く入って」と怒っている口調で言ってきた。家に入ると「何でこんなに遅いん?普通5分前に来るのが当たり前でしょ?」的なことを言われた。

「外は大雪ですよ。」と私が言ったら、言い訳はいいから早く畳の見積もりをしてと言われ、和室に案内された。私はこの時点で気分が悪かったが、遅刻したのは事実だし、大雪を想定して10分早く出るべきだったのかもしれないとも思った。

気持ちを切り替えて畳の見積もりを行う。依頼は和室の入り口にある畳一枚を新しくしてほしいとのことだった。和室の入り口は人が一番歩くので、どうしても畳が傷みやすい。確かに、片足で踏むと沈み込むレベルで痛んでいた。

ただ、沈み込み具合に違和感があり、私は畳を持ち上げて床下をチェックした。そしたら和室入り口の床下が割れており、床板がボロボロになっていた。

これでは畳を新しくしたとしても、またすぐに痛んでしまう。私はお客様に伝えた。するとお客様は「さっきまで床板は割れていなかった。あなたが踏んだ時に床板を割った。弁償しなさい」と言ってきた。

私は予想外の言葉に驚いた。私が踏んだのは片足で畳の痛み具合を確認しただけ。床板が割れる音も聞こえないし、その様子をお客様も一緒に見ていた。

これは難癖を付けるというか、詐欺的なことだと思い、私はすぐに社長に電話をし、事の経緯を伝えた。社長はすぐに元請けの大工さんに電話をしてくれて床について確認をしてくれた。

電話を待つ間、グチグチ小言を言われ、気まずい嫌な空気が張り詰めていた。

数分後、大工さんの方からお客様に電話が入った。話を聞くと、大工さんは和室の入り口の床板が割れていることを知っていたそうで、確認の写真も撮っていると。他の工事もあって、床板が割れていることをお客様に伝えていなかったとのことでした。

私は「よかった〜」と安心したのですが、大工さんに対する口調にまたもや驚いた。お客様は、私に話す言葉とは比べ物にならないくらい丁寧で、優しい口調で喋っていた。しかも「畳屋さんが床板割ったなんて、ウチは言ってないですぅ〜。畳屋さんが心配性でぇ電話したんですぅ〜」と大工さんに言っていた。

驚きを通り越えて呆れた。

大工さんとの電話を切ったお客様は「見積り終わったら早よ帰って!」と言って、奥の部屋に消えていった。

私はもう笑うしかなかった。

お世話になった人への贈り物

京都修業時代、私はある人に大変お世話になった。私だけでなく、日本全国から京都に集まった畳職人の卵たち、ほぼ全員がお世話になった方。

詳細は話せないが、ある方は仕事から離れてしまうとのことで、私たち皆んなでお金を出し合って、何か贈り物をしようと考えた。何を贈ったらいいのか言い合いになりながらも何とか贈り物も決まり、グループラインを作成し、京都で修業した日本全国の畳職人に呼びかけた。

ある方にお礼をしたいという気持ちは皆んな一緒で、たくさんの方が協力してくれた。

お金を集める段階になると「俺は迷惑かけたからもっと出すわ。他の奴には言うなよ」「これとは別で個人でも何か出していい?」と言ってくる人までいた。全員が九州男児だった。

京都に畳の修業に来る九州の人はとても多い。福岡にも畳の学校はあるが、京都の方が人気があるのか、畳職人のほとんどの方が京都に修業に来ていた。

だから私の尊敬する先輩達も、同期も、後輩も皆んな九州人ばかり。京都に行って初めて九州人と友達になったが、本当にかっこいい人が多い。

これを九州男児って言うんだなって今でも尊敬する。

一方で。お金を出さない人も複数人いた。別に強制ではないので、出したくなかったら出さなくてもいい。ただ、お金を出さないなら贈り物に対して文句言うのはやめてほしい。皆んなで意見出し合って、言い合いになりながらも決まったことなんだから。

ちなみに、お金を出さなかった人が複数人いましたが、全員が京都人だった(笑)。

※ただ、一緒に贈り物を考えてくれて、お金を集金してくれて、贈り物を届けてくれた人も京都人。昔から頼りになる優しい京都人の先輩です。私が樋口畳商店を開業する時にポータブルの畳機械や道具を譲ってくれたのも京都の人でした。だから京都人全員が腹黒いわけではない。大好きな京都の人もたくさんいます。そこは誤解ないようお願いします。

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読んでいただきありがとうございました。