
京都市にある黄綬褒章受章、現代の名工に選ばれている店「沢辺畳店株式会社」にて長年修業を積み、東京都江戸川区で独立。 京都畳競技会にて最高賞の「京都府知事賞」を受賞。神社仏閣や茶室、屋形船から一般住宅まで、1ミリの隙間も許さない「京都仕込み」の技術で江戸川区を中心に活動中。
- 📺 メディア出演:TOKYO MX「バラいろダンディ」畳職人として出演
- 🏫 地域活動:練馬工業高校にて畳の文化・技術に関する講演会講師を担当
皆さまこんにちは。
東京都江戸川区の樋口畳商店、代表の樋口裕介です。
畳替えのご相談をいただく中で、
「入口の畳だけ傷んでいるので、奥の綺麗な畳と入れ替えられませんか?」
というご質問をいただくことがあります。
確かに和室は入口付近を歩くことが多いため、その部分だけ早く傷んでしまうことがあります。
しかし結論から言うと、
畳の入れ替えは基本的に難しいです。
今回は一級畳製作技能士の視点から、
- 畳の入れ替えが難しい理由
- 他の部屋の畳を使えない理由
- 例外的に入れ替えできるケース
について解説します。
畳の場所を入れ替えることはできる?
結論から言うと、
一般的な和室の畳は入れ替えできないことがほとんどです。
なぜなら畳は一枚一枚サイズが違うからです。
「畳は全部同じ大きさ」
と思われる方も多いのですが、実際は違います。
畳職人は部屋ごとに採寸を行い、畳を一枚ずつ製作しています。
そのため、
- 入口側の畳
- 窓側の畳
- 壁際の畳
はそれぞれ微妙に寸法が異なります。
数ミリの違いでも畳は入らなくなるため、単純に場所を交換することは難しいのです。
なぜ入口側の畳だけ傷みやすいの?
これは非常によくある現象です。
和室の入口部分は、
- 毎日の出入り
- 掃除機の往復
- 家族の通行
によって最も負荷がかかる場所です。
反対に、
- 押入れ側
- 壁際
- 家具の近く
はほとんど歩かないため傷みが少なくなります。
そのため、
「入口の畳だけ色あせている」
「入口だけ擦り切れている」
という状態になることは珍しくありません。
畳はオーダーメイドで作られています
現代の住宅でも、和室は完全な四角形ではありません。
築年数が経過すると、
- 柱の傾き
- 建物の歪み
- 壁の誤差
などが発生します。
そのため畳職人は採寸を行い、
- 長さ
- 幅
- 対角線
- 厚み
を確認して製作しています。
つまり畳は、
その場所専用のオーダーメイド品
なのです。
だからこそ場所を入れ替えようとしても、
- 入らない
- 隙間ができる
- 畳が浮く
などの問題が起きてしまいます。
他の部屋の畳を持ってきて使うことはできる?
こちらもよくいただく質問です。
例えば、
「使っていない和室の畳を持ってきて交換できますか?」
というご相談です。
これも基本的には難しいと考えてください。
理由はサイズだけではありません。
実は「厚み」が大きな問題になります
畳には厚みがあります。
一般住宅では、
- 55mm
- 60mm
前後の畳が多いですが、部屋によって異なります。
もし厚みが違う畳を入れると、
厚すぎる場合
畳が周囲より高くなり、
- つまずく
- 掃除機が引っかかる
などの問題が発生します。
薄すぎる場合
逆に段差ができ、
- 足を引っかける
- 転倒する
リスクがあります。
実際にはサイズの問題よりも、厚みの問題で使用できないケースが非常に多いです。
置き畳なら入れ替えできる場合があります
例外もあります。
それが置き畳です。
置き畳の多くは、
- 82cm×82cm
- 85cm×85cm
などの規格サイズで作られています。
そのため、
入口側と奥側を入れ替えることが可能です。
ただし、
完全オーダーメイドで製作した置き畳の場合は、通常の畳と同じようにサイズが異なることがあります。
その場合は入れ替えできない可能性があります。
畳を長持ちさせる方法はある?
入口部分だけが傷むのを防ぐことは難しいですが、
定期的な畳替えを行うことで和室全体を綺麗な状態に保つことができます。
また、
- ダイケン和紙表
- セキスイ美草
などの耐久性が高い畳表を選ぶことで、摩耗による傷みを軽減できる場合があります。
詳しくはこちらの記事で比較しています。
👉 https://phkkoomde.com/daiken-washi-omote-sekisui-migusa-hikaku/
一級畳製作技能士の見解
私はこれまで数多くの和室を見てきましたが、
「畳の場所を入れ替えれば解決する」
ケースはほとんどありません。
畳は一枚一枚がオーダーメイドだからです。
ただし、
- 置き畳
- 規格サイズの畳
- 特殊な寸法の和室
など例外もあります。
樋口畳商店では、
「絶対に無理です」
とは言いません。
現場を確認した結果、対応できる場合もあります。
可能性がある限り、お客様のご要望に応えたいと考えていますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
畳の入れ替えは基本的に難しい工事です。
その理由は、
- 畳は一枚一枚サイズが違う
- 厚みも部屋ごとに違う
- オーダーメイドで作られている
からです。
特に他の部屋の畳を流用する場合は、
サイズだけでなく厚みの問題もあるため注意が必要です。
ただし置き畳など、一部例外的に対応できるケースもあります。
「この畳は入れ替えできるの?」
「他の部屋の畳を使いたい」
という場合は、写真を送っていただければ職人目線で判断いたします。
