【デジタル手続法案】印鑑業界からみる伝統産業の必要性

みなさん。こんにちは!畳職人の樋口です。今回は印鑑業界からみる伝統産業の必要性について話したいと思います。

 

みなさんはこのニュースをご存知ですか?

 

 

自民党は7日、行政手続きの100%オンライン化を目指す「デジタル手続法案」を部会で了承しました。法案には当初、法人を設立する際に必要な印鑑の届け出の義務化をなくす案が盛り込まれていましたが、※印鑑業界の反発などを受け、見送られました。ただ、夏の参議院選挙後の臨時国会には、再び押印の簡略化に向けた議論が行われるとみられます。

 

ツイッター上では※印鑑業界の反発に対して批判が相次いでいる。

 

 

 

 

さらに印鑑業界からの「デジタル・ガバメント実行計画」に関する要望書に反発が相次いでいる。

 

▼「デジタル・ガバメント実行計画」に関する要望書http://www.inshou.or.jp/inshou/common/pdf/yobosho.pdf

 

 

 

現状を受け入れらない印鑑業界

 

僕がまだ子供の頃、音楽を聴くデバイスはCDかMDでした。

 

CDはCDプレイヤーに直接入れれば、聞けたのでまだマシだったのですが、MDはMDコンポを買ってCDから曲を移さないと聞けない「非常にめんどくさい」ものでした。

 

その後、パソコンからダウンロードできるウォークマンやiPodなどが登場し、音楽の聴き方は劇的に変わりました。

 

さらにiPhone&スマホが登場し、ニコ動やYouTubeが生まれると音楽の民主化が起こります。

 

自分で作った曲や、自分で考えた振り付けを誰もが気軽に投稿することができ、音楽がより近い距離で楽しめるものになったのです。

 

では、もしもCDプレイヤー&MDプレイヤーからウォークマン&iPod、そしてiPhone&スマホの転換期の場面で、「雇用が失われるから」「今まで日本の発展に貢献した」などの理由から拒否していたらどうなっていたでしょう。

 

今でもMDコンポを買って、レンタルショップにCDを借りに行き、MDカセットを買ってMDコンポに挿入し、CDから曲を移していたと思います。

 

誰がこんなプロセスを踏んで音楽を身近で聴きたいと思いますか。誰も思いませんよね。

 

不便なものは消える。当たり前のことです。

 

では、印鑑業界はどうでしょう。

 

印鑑レス化に反発し、現状と未来を拒否しています。

 

また印鑑業界の後押しをする自民党議員は「伝統」と「保守」という言葉を使い、印章産業への理解を求めています。

 

しかし、これは保守主義と進歩主義の対立の話ではなく、「誰のためのサービスか」という話です。

 

CDプレイヤーやMDプレイヤーはお客様にとってめんどくさい。もっと音楽を身近に感じてもらいたいとして画期的なデバイスが開発されたのです。

 

誰のためか→お客様のためです。

 

つまり、現状でお客様にとっていいものでないのなら、新しい画期的なものに変わるのは必然で、拒否するのはお客様のためにならないと私は考えます。

 

伝統を勘違いしてる印鑑業界

 

「10年で消える」と言われるビジネスの世界で、1000年を超える産業が日本にはいくつかあります。

 

畳産業や障子や襖などの建具の産業、そして印章産業も1000年を超える産業の1つです。

 

世間一般的にはそのような長い歴史を歩み育んできた産業を伝統産業と呼んでいます。

 

同じ伝統産業としては、”長い歴史の中で困難を乗り越え、次の世代に繋いできた先人たちの技術や意志を誇りにしている”ことを大事にするのは理解できます。

 

ただ印鑑業界は伝統を勘違いしていると思います。

 

実の話、印鑑業界は平安時代末期から一度死にかけています。

 

印鑑の代わりに花押(かおう)が広まり、印鑑がほとんど使われなくなったのです。

 

花押(かおう、華押)は、署名の代わりに使用される記号・符号をいう。

 

ではなぜ印鑑が再び使われるようになったのか。

 

それは戦国時代。

 

かの有名な武将たちに使ってもらうために、威厳と尊厳あるオリジナルティー溢れる印鑑に改良したからです。

 

武将たちは大層気に入り、花押と並行して印鑑を使うようになりました。

 

つまり現状を認識して、未来に向けて頑張った結果、今の今まで印鑑が残ってきたのです。

 

自然の流れで、勝手に続いてきたわけじゃありません。伝統は”あなた達が紡ぐもの”です

 

それを国の責任にし、泣き言を言って、国頼みで解決しようとするなんて、伝統産業としてほんとうに恥ずべきことだと思います。

 

私たち畳の産業だって「廃れゆく産業だ!」「古くさい敷物文化だ!」とか散々言われてきました。

 

畳で起業するって言った時には周りに笑われ馬鹿にされました。

 

でも、ベクトルは未来に向いてる。

 

畳に対する価値観を変えるんだ!って思って、笑われても馬鹿にされても畳作って売ってますよ。

 

印鑑業界は本当に腹立たしい。

印鑑業界からみる伝統産業の必要性

 

伝統産業の必要性については、今回のニュースが出る前からじつはずっと考えてきたことです。

 

本当に必要か。どうか。

 

必要だと言われている産業でいえば、例えばIT産業。

 

情報革命によってスマホ一台あれば世界中のあらゆる情報を手にすることができるようになり、日本の在り方について頻繁に議論されるようになった。

 

また、SNSやマッチングプラットフォームを通して世界中の知らない人と交流することもできるようになった。

 

飲食産業。食べることは生物の基本。美味しくて安全な料理を提供してくれる飲食業界は日本になくてはならない。また、おしゃれで素敵な飲食店は街作りの基盤でもある。

 

他にもなくてはならない産業はたくさんあります。

 

このように日本にとって必要不可欠なものであると誰もが納得する業界もあれば、「あれって必要な産業?」という皆様の心の声が叫んでいる業界もあります。

 

今回の報道を見て、その1つが伝統産業なのではと思いました。

 

伝統産業は

本当に日本の為になる産業なのか。

どうか。

 

個人的に、日本のためになってないのではと思っています。(もちろん畳も含めて)

 

印鑑業界の言う通り、江戸時代、明治、大正、戦前戦後は雇用を生んだし、生活の利便性を高めたことは間違いありません。

 

しかし、テクノロジーの進化と共に伝統産業の価値は下がっていったのも間違いありません。

 

現在人手不足に悩まされているのも伝統産業の価値が下がった証拠の1つでしょう。

 

最近では伝統産業が日本の発展の足を引っ張っている気もしています。

 

だからといって伝統産業が消えてなくなればいい!と言っているわけではありません。むしろこれから日本のためになる伝統産業を目指して頑張っていけばいいと思っています。

 

例えば伝統産業は日本のブランドなのだから、外国人観光客にはウケる。観光客は年々増加傾向にあるわけで、伝統産業には追い風であると言えます。

 

では、どうしたら外国人にウケるか。(日本人にウケてもいいのですが)

 

1つは、”使い方のイノベーション”がキーワードになるかと思います。

 

使い方のイノベーションとは、畳の歴史を研究した際に発見したことで、畳の姿形は1300年間ほとんど変わっていないのに、今の今まで使われ続けているのには何か秘密があるとして調べた結果、歴史の転換点で畳の使われ方が劇的に変化していたことを発見した。

 

この説明は長くなるので畳の歴史をご覧ください。

 

▼畳の歴史についてはこちら【歴史】畳が広まった理由は茶道?|日本史&畳年表でみる畳の歴史

 

先ほど紹介した通り、印鑑業界も過去に使い方のイノベーションを起こしていた。

 

障子や和紙などでも同様なことが起きており、日本という国は使い方のイノベーションが起きやすい国なのかもしれない。その結果1000年を超える産業となった可能性があるという結論に至りました。

 

したがって根本的に構造を変えるイノベーションだけでなく、使い方のイノベーションを考えていく

 

これは今まさに私たちがチャレンジしてることでもあります。

 

だから印鑑業界もできるはず!

 

畳業界よりも長い歴史を持ち、そのなかで培った技術を応用すればできないわけがありません。

 

印鑑業界が日本を支える一助となる日を目指して心機一転頑張っていくことを望みます。

 

最後に

 

途中書いてて印鑑業界にムカついてしまいました(笑)

 

僕の知っている伝統産業の方は、現状を受け入れてみんな前を向いて頑張っている人ばかりです。

 

時代のせいにせず、国のせいにもしていません。

 

弱音も吐かずに頑張っている人がいる一方で、印鑑業界の「デジタル・ガバメント実行計画」に関する要望書を見たら、印鑑業界の人に一発気合い入れたくなった。

 

”人の振り見て我が振り直せ”じゃないですが、伝統産業の必要性について学ぶいいキッカケになったので良しとします。

 

 

 

読んでいただきありがとうございました。

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