畳にダニが発生したらどうする?|一級畳製作技能士が原因と正しい対策を解説
この記事の監修・執筆者
一級畳製作技能士 樋口裕介
樋口 裕介 (ひぐち・ゆうすけ)
国家資格 一級畳製作技能士 樋口畳商店 代表

京都市にある黄綬褒章受章、現代の名工に選ばれている店「沢辺畳店株式会社」にて長年修業を積み、東京都江戸川区で独立。 京都畳競技会にて最高賞の「京都府知事賞」を受賞。神社仏閣や茶室、屋形船から一般住宅まで、1ミリの隙間も許さない「京都仕込み」の技術で江戸川区を中心に活動中。

  • 📺 メディア出演:TOKYO MX「バラいろダンディ」畳職人として出演
  • 🏫 地域活動:練馬工業高校にて畳の文化・技術に関する講演会講師を担当
一級畳製作技能士 資格証
国家資格証
京都府知事賞 優勝トロフィー
知事賞受賞
講演会の様子
講演実績

みなさまこんにちは。 江戸川区の樋口畳商店・代表の樋口裕介です。

梅雨時期や夏場になると、 👉 「和室に入ると体が痒くなる」 👉 「畳の部屋で寝ると虫に刺される」 👉 「畳の表面に小さな虫がいる気がする」 といったご相談をいただくことが本当に増えてきます。

その原因の多くは、やはり「ダニ」の発生によるものです。

ただし、ここでまずお伝えしたい大切な事実は、 👉 「畳=ダニだらけ」というわけではない ということです。

畳という素材そのものが悪いのではなく、お部屋の環境条件が重なることでダニが繁殖しやすい状態が作られてしまいます。

今回は一級畳製作技能士として、

  • 畳にダニが出る本当の原因
  • 今すぐ実践すべき正しい駆除・対策方法
  • ダニ対策で絶対にやってはいけないこと
  • 日常生活でダニを予防する習慣 について、詳しく解説いたします。

畳に発生して人を刺す「ツメダニ」の正体とは?

畳の部屋で問題になりやすいのは、 👉 「ツメダニ」 と呼ばれる種類です。

このツメダニが人を刺すことで、激しい痒みや赤みを引き起こします。

ただし、ツメダニは畳のい草やホコリを食べて生きているわけではありません。 実は、 👉 カビやホコリをエサにして増える「他の小さなダニ(コナダニなど)」を食べるために発生する のです。

お部屋の中で起きているのは、以下のような「負の連鎖」です。

湿気が溜まるカビやホコリ(ダニのエサ)が増えるそれを食べる小さなダニが爆発的に増えるそのダニを捕食するために「ツメダニ」が集まって増える

つまり、人を刺すツメダニを根本から退治するためには、そのエサとなる小さなダニやカビを発生させない「徹底的な湿気対策」が何より重要になります。

※畳に生えてしまったカビの正しい掃除方法や除去手順については、過去の記事で詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。

👉 【過去記事】畳にカビが生えたらどうする?一級畳製作技能士が教える正しい対処法

畳にダニが発生しやすい環境の共通点

畳職人として多くの現場を見ていると、ダニの被害が出やすいお部屋には明確な共通点があります。

特に以下のような環境は注意が必要です。

  • 一階にある和室
  • お風呂場や洗面所など水回りに近い部屋
  • 陽当たりが悪く湿気がこもりやすい北側の部屋
  • 年中、窓を閉め切っていて風通しが悪い部屋
  • 山や川の近く、海沿いや離島地域など湿度の高いエリア

また、住環境だけでなく、

  • 布団を敷きっぱなしにする「万年床」
  • 掃除をほとんどしない
  • 食べカスを放置する
  • 夏場や雨の日に部屋の除湿を全くしない

といった生活習慣も、布団と畳の間に強烈な湿気と体温を閉じ込めることになり、ダニに最高の繁殖環境を与えてしまいます。

「畳=ダニ」という大きな誤解について

「和室があるからダニが出る。フローリングなら安心だ」と思われている方が非常に多いですが、これは大きな誤解です。 👉 実際には、フローリングのお部屋でもダニは大量に発生します。

ダニは床の素材に関係なく、

  • ホコリや人間のフケ・皮脂(エサ)
  • 高い湿度と適度な温度 が揃えば、どこにでも絨毯や布団を媒介にして増殖します。

むしろ、フローリングの上に直接お布団を敷いて寝ている場合、汗の湿気が床に遮られて逃げ場を失い、布団の中でダニが爆発的に増えてしまうケースも少なくありません。

天然のい草を使った畳には、本来、水分を自ら吸って吐く優れた「調湿機能」が備わっています。そのため、正しい掃除と適切な除湿さえ行ってあげれば、むしろフローリングよりもダニの繁殖を抑え込みやすい優秀な床材なのです。

ダニ対策で「絶対にやってはいけないこと」

良かれと思ってやった対策が、逆にダニを喜ばせてしまうことがあります。以下の3点には特に注意してください。

① 濡れ雑巾で畳をゴシゴシと水拭きする

ダニを拭き取ろうとして固く絞った雑巾で水拭きをするのは逆効果です。畳にい草が最も嫌う「水分」を与えてしまうため、カビやダニの増殖をさらに手助けすることになります。

② 雨の日や梅雨時期に「換気だけ」で安心する

「風を通せば乾くだろう」と、連日雨が降っている日に窓を開けっぱなしにするのは危険です。 実はそうした時期は、お部屋の中よりも外の方がはるかに湿度が高いケースが多いため、換気をしているつもりが、外の湿気をどんどん室内に取り込んで畳に吸わせることになってしまいます。

③ くん煙殺虫剤(バルサンなど)だけで終わらせる

部屋をまるごと殺虫する薬は今いるダニにはとても効果的です。ですが、これだけでは「ダニが発生した根本原因である湿気環境」を解決したことにはなりません。薬の効果が切れた後、部屋がジメジメしたままであれば、すぐに卵からかえったダニが再発してしまいます。バルサンなどをした後は掃除機でしっかりと掃除をして、除湿を心がけましょう。

今すぐ実践すべき正しいダニ駆除方法

もし今、和室で痒みなどの実害が出ている場合は、以下の手順で一気に駆除と環境改善を行います。

ステップ①:市販の「畳専用スプレー」を注入する

今いるダニを確実に仕留めるため、まずは市販の「畳の中に直接ノズルを刺して内部へ噴射するタイプの殺虫スプレー(アース製薬のダニアースなど)」を使用するのが最も確実です。畳表だけでなく、畳の芯(床)に潜むダニまでしっかり届いて効力を発揮します。ただし、建材床の場合ダニが住むことは難しいので、畳床に刺して噴射しても効果は期待できません。畳の端にたまっている埃などを除去すること、畳の下などに潜り込んでいるダニを除去する方が優先です。

ステップ②:時間をかけて「ゆっくりと掃除機をかける」

殺虫剤を使用した後は、ダニの死骸やフケなどのエサを徹底的に掃除機で吸い取ります。 この時のコツは、1畳あたり30秒〜1分ほどの時間をかけ、畳の目に沿ってゆっくりと掃除機を動かすことです。早く動かしすぎると、畳の目の奥に入り込んだ死骸を吸いきれません。じっくりと丁寧に往復させてください。

ステップ③:エアコンや除湿機で「部屋を徹底的に乾かす」

駆除と掃除が終わったら、エアコンの除湿機能や除湿機を最大に効かせ、部屋の水分を徹底的に抜いてください。ダニは湿度が55%以下になると生きていけなくなります。梅雨時期のダニ対策には乾燥が一番大切です。

プロがおすすめする畳下の乾燥方法:空き缶を挟む

畳の下を乾燥する方法

お部屋の除湿をしていても、実は「畳の裏側(床下)」に湿気が驚くほど溜まっているケースが非常に多いです。

そこでおすすめなのが、 👉 畳を少しだけ持ち上げて、下にスチール缶(空き缶)を挟んでおく方法 です。

畳の端を少し持ち上げて缶を挟むだけで、床下に空気の通り道ができ、滞留していた湿気を一気に逃がすことができます。 特に一階の和室、海沿いや山沿い、離島地域にお住まいの方は、これを行うだけでダニやカビの発生率が劇的に下がります。もちろん畳を持ち上げた後、掃除機をかけていただいたり、防虫スプレーを吹きかけていただいて問題ありません。

京都の修業時代に学んだ「湿気」の怖さ

私がかつて畳づくりの修業を積んでいた京都は、盆地という地形の特性上、湿気が非常に抜けにくい地域でした。梅雨時期になると、まるで蒸し風呂のような環境になることも珍しくありません。

特に桂川や宇治川などの川沿いや、山の近くのお宅では、ダニやカビに関する切実なご相談を毎年のようにいただいておりました。

そのような非常に厳しい湿気環境を乗り越えるために、京都の現場で私たちがよく施工していたのが、「炭入り防湿シート」を畳の下や床一面に敷き込む方法です。

炭が持つ天然の強力な調湿・消臭作用は、床下からの湿気を半永久的にコントロールしてくれます。これは現在でも、湿気の多い地域やダニにお悩みの方へ自信を持っておすすめできる最高の防衛策です。

ダニが出たら、畳はもう交換しなければいけない?

「ダニが出た和室の畳は、もう丸ごと捨てるしかないの?」と不安になるかもしれませんが、決してそんなことはありません。 👉 初期段階の発生であれば、先ほど説明した正しい殺虫、丁寧な掃除、そして徹底的な除湿を行うことで、十分に改善できます。

ただし、以下のような状況に該当する場合は、職人の目から見ても張り替えや交換を検討すべきタイミングと言えます。

  • カビの繁殖があまりにも酷く、黒カビが全体に染み付いている
  • 畳が長期間にわたって大量の湿気を吸い続け、常にジメジメしている
  • 畳の芯(畳床)が湿気で腐食したり、ペコペコと凹むほど傷んでいる

これほど環境が悪化している場合は、表面を掃除しても内部のダニの巣を絶つことが難しいため、「畳表の張り替え(表替え)+防虫紙包み込みタイプ」または「新しい畳への交換(新調)+防虫紙」を強くおすすめいたします。

ダニを予防するための日常生活の習慣

最後に、普段の生活の中でダニを寄せ付けないための、畳職人からのアドバイスをまとめます。

  • 週に1〜2回、1畳1分を目安にゆっくり掃除機をかける
  • 雨の日や梅雨時期は、窓を開けずにエアコンや除湿機を稼働させる
  • 布団は敷きっぱなしにせず、毎日畳んで風を通す
  • 除湿機がない場合は、扇風機を回して部屋の空気を循環させる
  • 「いつもより畳の匂いが強い」と感じたら湿気のサイン。すぐに除湿する
  • 大掃除のタイミングなどで、畳の下に缶を挟んで床下を乾燥させる

どれも特別に難しいことではありません。これらを少し意識していただくだけで、ダニの発生リスクは限りなくゼロに近づけることができます。

樋口畳商店で実際に使用している防ダニ対策について

樋口畳商店では、湿気が多い地域やダニが心配なお客様には、防虫シートを使用して施工する場合があります。

その中でも、京都修業時代から長年使用しているのが、

👉 「ダニシラズEシート

です。

これは、畳機械メーカーである東海機器工業株式会社と、オハイオ州立大学大学院昆虫学部卒業の農学博士・吉川翠が共同開発した畳用防虫シートです。

ダニシラズEシートには、殺ダニ効果があると言われる「ホウ素系化合物」が使用されています。

ホウ素系化合物は、臓器を持つ人間に対しては食塩程度の毒性と言われていますが、臓器を持たない虫には強い効果を発揮するとされています。そのため、人間やペットへの安全性に配慮しながら、ダニ対策を行える点が大きな特徴です。

実際、私自身も京都修業時代から現在まで長年使用していますが、

👉 「ダニに関するクレームがほとんど無くなった」

と感じるほど、非常に優れた防虫シートだと感じています。

特に、

  • 一階の和室
  • 湿気が多い地域
  • 山や川の近く
  • 海沿い
  • 島地域

などでは、防虫・防湿対策として非常に効果的です。

最後に

畳は呼吸をする天然素材です。 だからこそ、周囲の空気、湿気、そして日頃のお手入れの影響をダイレクトに受けます。

しかし、正しい知識を持って付き合ってあげれば、これほど夏は涼しく、冬は温かく、私たちの体を優しく守ってくれる心地よい床材は他にありません。

「最近、和室にいるとどうしても身体が痒くなる」 「これはダニなのか、それとも他の原因なのか分からない」 「一度プロの目で畳の状態を見て、アドバイスをしてほしい」

どんなに小さな疑問や不安でも構いません。 気になる和室や畳の写真をLINEでポイッと送っていただければ、一級技能士である私が職人の目線で状態を確認し、誠実にお答えいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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