畳の匂いが強くなったら危険?|一級畳製作技能士が教える「湿気のサイン」と対策
この記事の監修・執筆者
一級畳製作技能士 樋口裕介
樋口 裕介 (ひぐち・ゆうすけ)
国家資格 一級畳製作技能士 樋口畳商店 代表

京都市にある黄綬褒章受章、現代の名工に選ばれている店「沢辺畳店株式会社」にて長年修業を積み、東京都江戸川区で独立。 京都畳競技会にて最高賞の「京都府知事賞」を受賞。神社仏閣や茶室、屋形船から一般住宅まで、1ミリの隙間も許さない「京都仕込み」の技術で江戸川区を中心に活動中。

  • 📺 メディア出演:TOKYO MX「バラいろダンディ」畳職人として出演
  • 🏫 地域活動:練馬工業高校にて畳の文化・技術に関する講演会講師を担当
一級畳製作技能士 資格証
国家資格証
京都府知事賞 優勝トロフィー
知事賞受賞
講演会の様子
講演実績

皆さまこんにちは。 東京都江戸川区の樋口畳商店、代表の樋口裕介です。

梅雨の時期や雨の日が続く季節になると、 👉 「なんだか畳の匂いがいつもより強い気がする」 そんな経験はありませんか?

実はその畳の香り、単に「い草の心地よい香り」として見過ごしてはいけません。もしかすると、お部屋に 👉 湿気が限界まで溜まっているサイン かもしれないのです。

今回は畳職人の視点から、畳の匂いと湿気の深い関係、そして大切な畳を守るための対策について分かりやすく解説します。

畳の材料である「い草」は部屋の中で呼吸をしています

畳の表面に使われている天然の「い草」には、優れた調湿機能が備わっています。

お部屋の湿度が高い時には余分な湿気をグングン吸い込み、逆に乾燥している時には蓄えた湿気を空気中に放出する。 そのため昔から畳は、 👉 「天然の空気清浄機」や「天然のエアコン」 とも呼ばれてきました。

日本の和室が夏はサラッと涼しく感じ、冬は底冷えせずに暖かく感じるのも、このい草の調湿作用が大きく関係しています。

しかし、い草の吸湿力にも「限界」があります

い草は非常に優秀な天然素材ですが、決して機械ではありません。当然ながら、水分を吸えるキャパシティ(限界量)が存在します。

一般的に、畳は一枚あたり牛乳瓶約1本半程度(約300ml)の水分を吸収できると言われています。

ところが、日本の梅雨や秋の長雨が連日のように続くと、部屋の湿度が上がり続け、い草の吸収限界を超えてしまうことがあります。 限界を超えて、畳の中に水分が溜まりっぱなしになると、

  • カビの発生
  • ダニの繁殖
  • 生乾きのような嫌な臭い などの原因になってしまいます。

畳の匂いが強くなるのは、限界を知らせるアラート

私は畳職人として数多くの現場を見てきましたが、カビやダニのトラブルが発生してしまうお宅には「常に湿気が多い」という共通点があります。

そして、そのような湿気が限界に近いお部屋では、畳の香りが通常よりも強く感じられる傾向があります。

もちろん、新しく表替えをしたばかりの畳は元々香りが強いものです。 しかし、 👉 「何年も経っているのに、いつもより急に匂いが強く感じる」 👉 「雨の日だけ、い草の匂いがドッと濃くなる」 という場合は、畳が湿気をいっぱいに吸い込んでいる証拠です。

いわば畳が、「もうこれ以上は水分を吸えません。限界ですよ」とお施主様にサインを送ってくれている状態なのです。

正直に白状しますと、私は畳の匂いがよく分かりません

ここまで偉そうに解説しておいて大変恐縮なのですが…… 👉 実は、私は普段、畳の匂いがほとんど分かりません(笑)。

毎日朝から晩まで工場で畳に触れ、い草の香りに包まれて仕事をしているせいで、鼻が完全に慣れてしまっているのです。さらに元々それほど鼻が良くないこともあります。

そのため、お客様から「畳の匂いが気になる」と言われても、「分からない」という方の気持ちが本当によく分かります。

ですので、匂いで判断するのが難しいという方は、自分の感覚よりも「連日雨が降ったかどうか」を基準に除湿を考える方が確実です。雨が2日以上続いたら、匂いが分からなくても対策を始めましょう。

梅雨時期や長雨の日に実践すべき除湿対策

雨の日が何日も続いた時は、畳のキャパシティを超えさせないために、先手を打って以下の対策を行うことを強くおすすめします。

  • エアコンの除湿(ドライ)機能を稼働させる
  • 和室に除湿機を設置する
  • 扇風機やサーキュレーターを回して、室内の空気を循環させる

特に、以下のような環境にある和室は、目に見えなくても床下や壁から湿気が上がってきやすいため、特に意識的な除湿が必要です。

  • 一階にある和室
  • お風呂場や洗面所など、水回りに近い和室
  • 山や川、海の近くなど、水辺に近いエリアのお住まい
  • 大島などの離島地域

万が一、すでにカビやダニが発生してしまっている場合

もし、この記事を読まれている時点で、すでに畳にうっすらとカビが生えてしまっていたり、和室に入ると体が痒くなったりする場合は、放置せずに早めの対処が必要です。

それぞれの正しい駆除・掃除の手順については、以下の専門記事で一級技能士として詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。

👉 【対処法】畳にカビが生えたらどうする?ブラシと掃除機を使った正しい手順

👉 【ダニ対策】畳にダニが発生したらどうする?ツメダニの原因と駆除方法

まとめ:畳は家の中の「湿度計」です

畳の匂いが一時的に強くなったからといって、すぐに大きな問題が起きるわけではありません。

しかし、「いつもと違うな」と感じた時は、い草が一生懸命にお部屋の湿気を吸って、家族を守ってくれている最中なのだと知っていただければ幸いです。

梅雨時期や長雨の後は、エアコンや除湿機を上手に活用し、畳をカラッと快適な状態に戻してあげてください。畳はいわば、お部屋の環境を教えてくれる「湿度計」のような存在です。ぜひ、畳からの無言のサインを見逃さないであげてくださいね。

もし、「うちの和室の湿気環境が心配」「畳のベタつきを見てほしい」という場合は、いつでもお気軽に樋口畳商店の公式LINEまで現状の写真をお送りください。職人の目線で確認し、誠実にお答えいたします。

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