・畳の色が変わるのを遅らせる方法を教えて!
皆さん、こんにちは!畳職人の樋口です。今回は畳の日焼け防止はどうしたらいいの?畳の色が変わるのを遅らせる方法を紹介します。
畳の日焼け防止について知りたい方の参考になれば幸いです。
畳の日焼け防止はどうしたらいいの?
最初に結論から申し上げますが、畳の日焼け防止はほとんど効果が期待できないです。家具の下とかタンスの下などの日が入らない部分でもない限り、どんな日焼け防止対策をしても、畳は日に焼けてしまいます。
では、畳をカーペットで覆ったらいいのでは?という方もいらっしゃいますが、畳は自然物ですので、畳をカーペットなどで覆うとイグサが呼吸できずに湿気がたまってしまいます。
すると、カビやダニが発生する原因になるので、個人的にはおすすめできません。
では、畳の色が変わるのを遅らせる方法はないのか…。
一応、あるにはあります。それを紹介します。
畳の色が変わるのを遅らせる方法
・寝かせた畳表(熟成表)を使う
染土をとらない
畳の色が変わるのを遅らせる方法の一つは、染土をとらないことです。染土とは、天然の土を何種類か配合して作った泥粉末のことで、日焼け止め&香りづけ(ちょっと語弊があるかもしれない)の効果が期待できます。
染土は、い草を収穫して乾燥させる前に「泥染め」という工程で付けられますが、畳屋に届くと私たち畳職人が綺麗にブラッシングして拭き取ってしまいます。
というのも、染土がそのまま付いた状態で生活すると、靴下や服に染土が付いてしまうからです。
つまり、お客様の御自宅に畳が届く頃には、染土は綺麗にとれた状態で届くことになります。
もし畳の色が変わるのを遅らせたいのなら畳を注文するときに、畳屋さんに「染土をとらないでほしい」言えば、多少は畳の色が変わるのを遅らせることができるかもしれません。
ただし、畳の色は日の当たり具合によって大きく異なります。日が当たらない場所であれば効果は期待できるかもしれませんが、強い西日が当たる和室では、染土が付着していたところで効果は思うほど期待できないかもしれません。
その点はご了承ください。
寝かせた畳表(熟成表)を使う
畳の色が変わるのを遅らせるもう一つの方法は、寝かせた畳表を使うことです。
寝かせた畳表とは、私たち畳職人の間で熟成表と呼ばれている畳表のことで、主に国産い草の上級品〜高級品を黒い袋に入れ除湿機をかけて、一年から一年半ぐらい暗い倉庫で寝かせたものを言います。
熟成表のメリットは、畳表を熟成させることで、畳の色が変わったときに綺麗に焼ける他、カビに強い畳を作ることができます。
熟成表にはメリットが多い一方で、デメリットもあります。それが畳の青々しさがなくなることです。
新草(11月ごろに出荷される今年収穫された畳表のこと。基本的にはすぐ使わず、入荷してから半年ほど倉庫で保管してから使用する)は色が変わりやすい(新草を使うとなぜ色が飛びやすいかと言うと、まだ畳表が日光に慣れていない状態で、強い日差しを浴びてしまうから)。
その一方で、とても青々しくて綺麗です。
私は新草の色が好きですが、色が変わりやすく、カビも生えやすいので、新草は使うことができません。
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熟成表の方が畳の色がゆっくり変化するし、カビも生えにくいので、畳の色が変わるのを遅らせたい方にはおすすめかもしれません。
ただし、熟成表でも環境によってはカビは生えるし、畳の色も普通に変わります。木材もそうですが、自然のものを使うというのは、不変ではないことですので、その辺は理解していただけたら幸いです。
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以上、畳の日焼け防止はどうしたらいいの?畳の色が変わるのを遅らせる方法でした。
最後に
新しい畳表の色って綺麗ですよね。私も大好きです。
ただ、日に焼けた畳の色も私は好きです。黄色く黄金色に変色した畳。あちこち擦り切れた畳。世間では、それを衰えや劣化と言うけれど、私はその衰えや劣化も含めて畳の良さだと思います。
備後表(畳表の一大生産地(むかしの))の謳い文句でこんな言葉があります。
「使えば使うほど金色に輝く」
農家さんの努力もあって、畳は日に焼けた後も美しく輝くように織られ作られています。ぜひ劣化や衰えも愛して、畳を味わっていただけたらと思います。
読んでいただきありがとうございました。