皆さん、こんにちは!畳製作一級技能士の樋口です。といつも挨拶させてもらっていますが、今回はその畳製作一級技能士の資格は廃止するべきという話をします。
これは一級技能士を取得する前から思っていたことで、畳職人の友達にはずっと話してきたことです。
畳製作一級技能士とはどんな資格なのか?畳製作一級技能士の資格を持っていて何の得があるのか?畳製作一級技能士があるせいで頑張っている職人の邪魔をしていないか?という私の疑問を一つずつ説いていきます。
あんまり畳職人以外興味のない話題だと思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。
畳製作一級技能士は必要ない?
まず、根本的に畳製作一級技能士とはどんな資格なのか。そこから解説していきます。
畳製作一級技能士とはどんな資格?
畳製作技能士(たたみせいさくぎのうし)とは、国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県知事(問題作成等は中央職業能力開発協会、試験の実施等は都道府県職業能力開発協会)が実施する、畳製作に関する学科及び実技試験に合格した者をいう。 なお職業能力開発促進法により、畳製作技能士資格を持っていないものが畳製作技能士と称することは禁じられている。
畳製作一級技能士は筆記と実技からなる試験によって得られる国家資格になります。二級の受験資格は二年以上の実務を行うことで、一級の受験資格は七年以上の実務を行うことで得られるようになります。受験にかかる費用は実技が16,500円。筆記が3,000円。安くも高くもない値段です。
私個人的には一級の方が簡単で、二級の方が難しかったと記憶しています。(あくまで個人的な感想です)
畳製作一級技能士の資格を取得していると入札に参加する事が出来たり、大手ハウスメーカーやゼネコンの仕事を請け負うことが出来ると言われています(畳製作一級技能士の資格が必要ない場合も多い)
それなら畳製作一級技能士の資格って重要だと思いますよね?
実はそんな事ないです。
畳製作一級技能士の資格を持っていて得があるのか?
断言しますが、畳製作一級技能士の資格を持っていて得する事なんて何もありません。入札に関してもハウスメーカーに関してもゼネコンに関して後ほど説明しますが、畳製作一級技能士の資格が有効的に活用される環境が全くないのです。
おそらく、畳製作一級技能士の資格を作った際に、資格の運用をどうしていこうかと全く議論されてこないまま、勝手に決まってしまった事案だと考えます。
そして、今になって畳製作一級技能士の資格を有しない畳業者は、畳を作って販売出来ないようにすると言う訳分からない論が(一部で)飛び出しています。これはこれで市場原理を無視し、市場の縮小を目論む最低の行為だと私は思います。縮小傾向にある市場は絶対に規制してはいけない。むしろ、新しいベンチャーが生まれやすい環境を作るには、誰でも畳を作って販売出来るくらいの方がいいのです。
したがって現時点では畳製作一級技能士は持っていても何の得もない資格であり、今後とも有効的に活用される兆しがない資格だと言えます。
とはいえ、一般のお客様にとって技術を持っているか、持っていないかの指標で畳製作一級技能士があると安心だと答える人もいるかもしれません。その点に関してはある種の信頼的価値になり得るのかもしれませんが、内部事情を知る者としてはこれも可笑しいと考えます。
と言うのも、それはお客様が技術に関して”知らない”から成り立つ信頼ですよね。
そもそも畳製作一級技能士の資格を持っている人が畳を作るのが上手なんて誰が決めたんですか?もし、私が畳製作一級技能士を持っていなかったら私は畳を作るのが下手くそですか?畳製作一級技能士の資格を持っている人は畳を作るのが上手で、持っていない人は下手だなんて出鱈目ですよ。
私は、京都で修行して畳製作一級技能士を持っているけど畳を作るのが下手な人を知っていますし、畳製作一級技能士の資格を持っていないけど畳を作るのが上手な畳職人を知っています。
お客様はその内部情報を知らないから信頼できる職人だと思い込むわけで、『畳製作一級技能士=畳を作るのが上手ではない』事を知っていたら「畳製作一級技能士?だから何?」って鼻で笑われて終わりですよ。
正直、中学生の時に受験した英検5級と漢検5級と同レベルって事です。悲しいけど残念な資格です。
畳職人の資格は廃止するべき理由
畳職人の資格を廃止するべきだと思う理由は、嘘をつく元請け会社がいるからです。
それは某ハウスメーカーの事ですが、「うちの使っている畳屋は一級技能士で技術レベルの高い畳屋を選んでいます」とお客様に語っています。私はその実情を知っていますが、そのハウスメーカーは技術レベルで畳屋を選んだ事なんか一度たりともありません。彼らはいつだって価格で選び、職人の単価を叩きまくっています。しかし、お客様も「一級技能士の資格はよくわからないけど、国家資格だし安心なのかな」と某ハウスメーカーの言ったことに疑いもせず納得してしまう。
これは畳製作一級技能士の悪用だと思っています。その畳だって本当に一級技能士が作っているのか、アルバイトが作っているのかわからないわけですし、何より仲介手数料を沢山貰いたいから畳屋の単価を叩き、価格競争させ、自分達の利益を最大化する愚行、嘘をついて畳屋もお客様もLOSERにし、自分だけWINNERになろうとする姿勢に憤慨します。
無論、これは一部のハウスメーカーであって、元請けの会社全てがこのような嘘をついている訳ではありません。少なくとも私がお世話になっている元請けの会社様は本当に良くして下さる方ばかりです。だからこそ、上記のような嘘を平気でつくハウスメーカーが許せないのです。
もし畳製作一級技能士の資格が廃止になったら技術的レベルを保証する資格がないのですから某ハウスメーカーは「畳屋を価格で選んでいます」と言うしかない。とはいえ、言うしかないと言っても実際には言わないでしょう。「良い畳を作る会社を選んでいる」とか次なる嘘の上乗せを繰り返すだけ。一級技能士の資格を廃止しても無駄かもしれません。
ただ、資格の廃止という極論を言うことでセンセーショナルに言葉が刺されば良いなと思い今回の記事を書きました。これが畳業界の人も、そうでない人も技能士の資格の必要性について考えてもらえるキッカケになれば幸いです。
読んでいただきありがとうございました。