みなさま、こんにちは!樋口畳商店の樋口です。今回は襖張り替えで月商100万円は可能なの?襖は儲かるのか解説します。
襖張り替えで開業したいと考えている方の参考になれば幸いです。
襖張り替えで月商100万円は可能なの?襖は儲かるのか解説
襖の張り替えだけで月商100万円は可能なのか。結論から言えば可能です。襖の張り替えだけで月商100万円稼いでいる職人はいます。
ただし、決して簡単に100万円稼いでいるわけではないですし、一人でやるならめっちゃ大変です。しかも、襖の張り替えで月商100万円超えたからと言ってめっちゃ儲かっているわけではありません。
夢のないことを言いますが、現実を知ってもらえたらと思います。
襖張り替えで月商100万円は大変?
まずは襖張替えで月商100万円稼ぐことがどれだけ大変なのか説明します。
襖張替えで月商100万円に到達する為には、1枚5000円(新鳥の子片面+裏面)の襖を月に200枚張り替えないといけません。1ヶ月を25日(休日含む)で計算したとして、一日あたり8枚襖を張り替えれば月100万円となるわけです。
襖の張り替え一日8枚という数字だけ見ると簡単にできそうですが(襖張替えにかかる時間は1枚あたり15分〜20分。)、これがかなり大変です。
・襖は雨の日納品できない
・都会だと襖が少ない
・状態の悪い襖も多い
・襖が外れないなどのトラブル多数
・地域密着だけではやっていけない
何が大変かというと。襖屋の仕事は襖を張り替えるだけが仕事ではありません。現場に行って襖を引き上げ、襖を張り替え、襖を乾かして、また現場に行って襖を納品する。
つまり襖を張ること以外に時間を多くとられるわけです。
東京などの都会であれば襖の数は減少傾向にあります。和室が無い御宅も増えましたし、和室があっても押入れ天袋しか襖が無い御宅も数多くあります。
先ほど申し上げたとおり、月100万円稼ぐのなら1日で襖8枚張り替えないといけません。襖8枚は1軒だけではノルマ達成できないので2軒、下手すれば3軒回らないといけない可能性もあります。(地域によっては1軒だけで襖8枚以上ある場合もあります。ちなみに都営住宅、公団もかなりの数があります)
襖の納品は雨の日にはできません。紙が濡れてしまえば剥がれてきたり、シミになったりするからです。そういった場合、現場で襖を張り替えることもありますが、襖の枚数が少なければノルマには届かなくなってしまうでしょう。
したがって、襖の張り替えは段取り良くいかない。予定変更もあるし、襖を乾かす時間もある。現場をたくさん回れば回るほど、襖を張り替えること以外に時間を奪われて思うように件数をこなせないのです。
ちなみに、襖は状態が悪いのもかなりあります。組子が折れてることもあるし、胴張りまで破れていることもあります。地震などで敷居が傾き襖が抜けないものもありますし(ジャッキで上げないといけない)、納品する際に少し削らないと全く滑らない襖もあります(逆に専用のシールを貼って傾きを直さないと滑らない襖もあります)。
それが襖の張替えというものです。仕事が増えれば増えるほど地域密着に限定することは難しくなります。車を走らせ30分〜40分圏内。1時間車を走らせて現場に行くこともあります。先ほど申し上げたとおり、従業員がいたら話は別ですが、1人で現場を回って襖引き上げて、張替えて、乾かして、納品して、そしてそれをほぼ毎日継続するなんて相当大変な作業だと私は思います。
襖張り替えで月100万円稼ぐのは無理ではない。しかし、めっちゃ難しいし、めっちゃ大変。これが現実です。
襖は儲かるのか?
襖の張り替えで月商100万円稼いだからと言って、襖は儲かると言えるのでしょうか。では、仮に月商100万円到達したとしましょう。その利益はどれくらいなのでしょうか。
5000円の襖張替えに掛かる材料は襖紙(新鳥の子)、雲華紙(裏面)、茶チリ、胴張り(使わない場合もある)、襖用のり。
※これら材料は、ほとんどネットに費用が掲載されています。私の口から言うのはちょっと嫌なので興味がある方は調べてください。
だいたい1枚あたりに掛かる原価は1300円前後。めちゃめちゃ安く抑えても一枚あたり1000円ちょっとだと思います。襖張り替え1枚あたりの利益は3700円ぐらい。3700円×襖200枚=74万円
これに消耗品や交通費(ガソリン)、車の維持費、保険、水道光熱費、家賃(工房8帖くらい)、駐車場代などが引かれます。事業規模や地域性、経済状況によって掛かる経費は違いますが、月に10万円〜15万円前後の材料代とは別の費用がかかる。
営業利益の金額は概算でも出すことはできませんが、毎日めちゃめちゃ働いても、ざっと60万円超えるぐらいが襖の儲けになると思います。
手取り15万円の時代ですから襖の張り替えは儲からないとは一概に言えませんが、めっちゃしんどい大変な仕事をほぼ毎日こなして60万円超えるぐらいは儲かるビジネスとは言えないのではないでしょうか。
それに襖は地域密着型。和室が減少している近年、成長性は無いに等しい。あんまり大きな声で言いたくないですが、襖は儲かるビジネスではないです。
樋口畳商店の襖の考え方
とは言いながら、樋口畳商店も襖の張替えをやっています。襖は儲からないだの大変だの言いましたが、これでは説得力がないですよね。同業他社を増やさない為に言っているだけかもしれないですから。
ですので、樋口畳商店の襖に対しての考え方を説明させてください。
樋口畳商店は襖の張替えについて畳を張り替えてもらうための営業として考えています。襖張替えで儲けようとは全く考えておらず、襖は儲からないことを前提として、お客様が襖張替えから畳の張替えを検討してもらえるように、国産畳の良い畳を選んでもらえるように襖張替えに力を入れているのです。
襖張り替えは営業という考え方なので、利益を上げようと高い襖紙を売りつけたりは絶対にしません。そんなことする必要がないのです。
その代わりに国産畳の最高級品を選んでもらえたら嬉しいです。
ちなみに、樋口畳商店では襖張替えの他に、障子張替え、網戸張替えもやっています。お客様からびっくりされるくらい安いですし、畳と一緒に注文いただくとさらに安くなります。
障子貼り替えも網戸張替えも襖張替えと同じ考え方です。良い畳を選んでもらうための営業。それが樋口畳商店の考え方です。
以上、襖張り替えで月商100万円は可能なの?襖は儲かるのか解説でした。
最後に
世の中には儲かる方法が二つあると言われています。ひとつは安く買って高く売ること。もうひとつはグレーゾーンの商売をすること。襖はDIYしている方もいるので原価がモロバレしています。さらに店舗を構える必要があるため設備投資にお金が掛かるし、地域密着型の商売です。
安くは作れないし、高くは売れない。
しかも襖なんて昔からの建具で超クリーンな産業。グレーゾーンは存在しません。最近だと襖張替えの他にリフォーム屋としてやっている方もいるので一概に言えませんが、畳屋からすれば襖張替えは畳を替えてもらう為にサービス精神でやるのが丁度良いと私は思っています。
読んでいただきありがとうございました。