
京都市にある黄綬褒章受章、現代の名工に選ばれている店「沢辺畳店株式会社」にて長年修業を積み、東京都江戸川区で独立。 京都畳競技会にて最高賞の「京都府知事賞」を受賞。神社仏閣や茶室、屋形船から一般住宅まで、1ミリの隙間も許さない「京都仕込み」の技術で江戸川区を中心に活動中。
- 📺 メディア出演:TOKYO MX「バラいろダンディ」畳職人として出演
- 🏫 地域活動:練馬工業高校にて畳の文化・技術に関する講演会講師を担当
東京都江戸川区大杉にて、6畳の畳表替え工事を行いました。
今回のお客様から最初にいただいたご相談は、
「畳の匂いが気になる」
というものでした。
実際にお部屋へ入ってみると、私自身も少しカビのような匂いを感じました。
そこで今回は、単純に畳表を新しくするだけではなく、既存の畳をすべて上げて床板の状態も確認し、床板の防カビ処理を行ったうえで、ホウ酸を使用した「マイトスタット畳敷き用」を敷いて施工しました。
畳表には、国産い草を使用した国産綿シングルを使用。
畳縁はHANA香織No.5を合わせています。
今回の施工費用は6畳で税込45,595円です。
そして今回、もう一つお伝えしておきたいことがあります。
2026年の熊本地震によって、国産い草の主要産地である熊本県八代地域の生産者も被害を受けています。現在、樋口畳商店でも国産綿シングルの在庫がかなり少なくなっており、仕入れが難しくなっています。
国産い草の畳をご希望の方は、今後の在庫状況によってはご希望に添えない可能性もあります。
今回は「畳の匂い」をきっかけにご依頼いただいた施工事例として、国産い草の香りの違い、防カビ処理、そして現在の国産畳表の状況まで、一級畳製作技能士の立場から詳しくご紹介します。
江戸川区大杉・6畳表替え工事の施工内容と料金

今回の施工内容はこちらです。
| 項目 | 内容・料金 |
|---|---|
| 施工場所 | 東京都江戸川区大杉 |
| 工事内容 | 6畳表替え |
| 畳表 | 国産綿シングル |
| 畳縁 | HANA香織 No.5 |
| 表替え | 6,000円 × 6枚=36,000円 |
| 畳縁 | 500円 × 6枚=3,000円 |
| 諸経費 | 2,450円 |
| 税別合計 | 41,450円 |
| 税込合計 | 45,595円 |
※材料価格や施工条件によって料金は変わる場合があります。特に国産い草については、2026年9月現在、仕入れ状況が不安定になっています。
「畳の匂いが気になる」というご相談から始まりました
今回の工事で最初にご相談いただいたのは、畳の傷みではありませんでした。
「畳の匂いが気になる」
というお悩みです。
実際に私がお部屋へ入ったときにも、少しカビのような匂いがするのが気になりました。
ただし、畳のある部屋の匂いにはさまざまな原因があります。
畳表そのものだけでなく、湿度やカビ、ホコリ、畳床、床板、部屋の換気状況などが関係することもあります。
そのため、
「臭う=畳表だけが原因」
とは限りません。
そこで今回は表替えだけで終わらせず、畳を上げた状態で床板も確認し、防カビ処理まで行うことにしました。
畳を上げて、床板まで防カビ処理
こちらが畳をすべて上げた状態です。
【写真:施工前・畳を上げた床板】
普段生活している状態では、この床板を見ることはほとんどありません。
しかし、畳を上げると、畳の下に溜まったホコリや汚れ、湿気の跡などが確認できることがあります。
今回のお客様は、もともと「カビが気になる」とのことでした。
そこで畳だけを新しくするのではなく、床板についても防カビ処理を行いました。
せっかく表替えをするのであれば、畳がなくなって床板全体を確認できるタイミングを活かします。
表面だけきれいにして終わりではなく、できる範囲で畳の下の環境も整えてから、新しく仕上げた畳を納めました。
マイトスタット畳敷き用を敷いてから施工
防カビ処理後には、床板と畳の間にマイトスタット畳敷き用を施工しました。
そして、その上から表替えした畳を敷き込みます。
今回のようにカビや湿気を気にされているお客様の場合には、畳表だけではなく、畳の下まで含めてどう施工するかを考えることも大切です。
もちろん、こうした施工をしたから今後絶対にカビが発生しない、というものではありません。
カビは室温や湿度、換気、掃除など生活環境にも大きく左右されるからです。
特に2026年9月は東京でも雨の多い状態が続いており、当店にも畳のカビについてのご相談が増えています。
エアコンの除湿機能や除湿機を活用し、畳の目に沿った掃除や乾拭きをしていただくことも重要です。
今回は中国産ではなく「国産い草」をおすすめしました
今回、畳表としてご提案したのが国産綿シングルです。
理由の一つが、お客様が「匂い」を気にされていたことです。
実は、国産い草の畳表と中国産い草の畳表では、香りに違いを感じる方がいます。
私自身は正直に言うと、鼻がそれほど敏感ではないので、
「これなら絶対に分かります」
とは言いません(笑)。
ただ、畳屋をしていると、
「中国産の畳表の匂いが苦手」
とおっしゃるお客様は少なくありません。
これは単純に「国産だから良い香り、中国産だから悪い香り」という話ではありません。
い草の香りには、い草そのものだけでなく、泥染めに使われる染土や乾燥・仕上げなどの工程も関係します。
全国い産業連携協議会・熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会も、畳表の香りについて、い草本来の干し草の香りと泥染めに使用する染土が合わさったものと説明しています。いぐさ畳表活性化連絡協議会
熊本県畳工業組合によると、熊本産のい草は収穫後、天然染土で泥染めを行い、約16時間かけて乾燥させます。この泥染め・乾燥工程によって畳特有の香りが生まれます。畳熊本
そのため今回のように**「畳の匂いが気になる」ことが交換理由の一つである場合には、私は国産い草を一つの選択肢としておすすめしています。**
「国産綿シングル」とは?
今回使用したのは、国産い草を使用した綿シングルの畳表です。
「綿シングル」というのは、い草の産地の名前ではありません。
畳表を織るときに使用する経糸(たて糸)の仕様を表す言葉です。
畳表には綿糸や麻糸などが使われており、使用するい草の品質や長さ、織り込みなどによってさまざまなグレードがあります。
全国い産業連携協議会も、畳表では綿糸・麻糸などを品質や強度に応じて使い分けていると説明しています。いぐさ畳表活性化連絡協議会
今回使用した国産綿シングルは、当店では比較的お求めやすい価格で天然の国産い草を楽しんでいただける畳表として扱ってきました。
6畳の表替えで、今回の施工価格は税込45,595円です。
「できれば国産い草にしたい。でも価格も抑えたい」
という方におすすめしやすい畳表でした。
ただ、現在この綿シングルについて、一つ大きな問題が出ています。
2026年熊本地震の影響で、国産畳表の仕入れが厳しくなっています
2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする大きな地震が発生しました。気象庁は「令和8年熊本地震」として関連情報を公開しています。気象庁
熊本は、日本のい草・畳表生産を支える重要な産地です。
そして今回の地震では、い草生産者も被害を受けています。
八代市では、被災したい草生産者が製織作業を再開するため、い草原草や織機を周辺の作業場へ運ぶ費用などを支援する事業が始まっています。やつしろ市公式サイト
畳屋として、これは決して遠い地域だけの問題ではありません。
実際、樋口畳商店でも国産綿シングルの在庫はかなり少なくなっており、新たな仕入れが難しい状況になっています。
今後の生産・流通状況によっては、これまでと同じように国産綿シングルを販売できなくなる可能性もあります。
これは「国産い草がなくなる」という意味ではありません。
しかし、少なくとも当店でこれまで扱ってきた価格帯・仕様の国産綿シングルについては、安定してご用意できるとは言えない状況です。
国産綿シングルでの表替えをご希望の方は、在庫があるうちに早めにご相談ください。
表替え後は、国産い草の明るい和室になりました
こちらが施工後です。
【写真:国産綿シングル+HANA香織No.5で表替えした6畳】
新しい国産い草の明るい色合いに、HANA香織No.5の濃い畳縁を合わせました。
施工前に気にされていた床板についても防カビ処理を行い、マイトスタットを敷いたうえで畳を納めています。
表替えは、現在使用している畳床をそのまま生かし、畳表と畳縁を新しくする工事です。畳床に大きな傷みがなければ、新畳に交換しなくても表替えで和室をきれいにできます。全日本畳事業協同組合も、畳床に大きな異常がなければ既存の畳床を利用できると案内しています。全日本畳事業協同組合
今回も畳床を生かして表替えを行いました。
畳の匂いが気になったら「畳だけ」が原因とは限りません
今回の施工でお伝えしたいことは、国産い草の良さだけではありません。
畳の匂いが気になったときには、
畳表を交換すれば必ず解決する
とは限らないということです。
湿気が多いのか。
カビが発生していないか。
畳床に問題はないか。
畳の下の床板はどうなっているのか。
部屋の換気状況はどうなのか。
畳を上げなければ確認できないこともあります。
だからこそ樋口畳商店では、単に「新しい畳表を張って終わり」ではなく、実際のお部屋の状態を見ながら必要な施工を考えることを大切にしています。
江戸川区大杉で畳の表替え・カビ・匂いにお困りの方へ
樋口畳商店では、東京都江戸川区を中心に畳の表替え、新畳、裏返しなどの施工を行っています。
私は一級畳製作技能士として、京都で6年間修業し、さまざまな住宅の畳を製作・施工してきました。
畳は、見た目だけを新しくすればいいものではありません。
今回のように、
「畳の匂いが気になる」
「カビが心配」
「畳の下がどうなっているのか見てほしい」
「国産い草に交換したい」
といったご相談にも、実際の状態を確認したうえで対応します。
特に2026年は熊本地震の影響もあり、国産い草を取り巻く状況が大きく変化しています。
国産綿シングルについては、当店でも在庫がかなり少なくなっています。
国産い草での表替えをご希望の場合は、お早めにお問い合わせください。
まとめ|「匂いが気になる」から始まった6畳の表替え工事
今回の江戸川区大杉での施工は、**「畳の匂いが気になる」**というご相談から始まりました。
使用した畳表は国産綿シングル、畳縁はHANA香織No.5。
6畳の表替えで税込45,595円です。
そして今回は、表面だけを新しくするのではなく、畳を上げて床板を確認し、防カビ処理を行ったうえで、マイトスタット畳敷き用を施工しました。
畳の匂いには、い草だけではなく、染土や製造工程、室内の湿度、カビ、畳床や床板など、さまざまな要素が関係します。
だからこそ、
「畳が臭うから、とりあえず交換する」
ではなく、
「なぜ気になるのかを考えて、その部屋に必要な施工をする」
ことが大切だと私は考えています。
そして、もう一つ。
今回使用した国産綿シングルは、熊本地震の影響もあり、当店では在庫がかなり少なくなっています。
国産い草を使った畳を残していくためにも、作ってくださる生産者の方々への感謝を忘れず、一枚一枚大切に使っていきたいと思います。
