
京都市にある黄綬褒章受章、現代の名工に選ばれている店「沢辺畳店株式会社」にて長年修業を積み、東京都江戸川区で独立。 京都畳競技会にて最高賞の「京都府知事賞」を受賞。神社仏閣や茶室、屋形船から一般住宅まで、1ミリの隙間も許さない「京都仕込み」の技術で江戸川区を中心に活動中。
- 📺 メディア出演:TOKYO MX「バラいろダンディ」畳職人として出演
- 🏫 地域活動:練馬工業高校にて畳の文化・技術に関する講演会講師を担当
2026年9月、東京都では雨の多い日が続いています。
樋口畳商店でも最近、
「畳にカビが生えてしまった」
「新しい畳なのにカビが出てきた」
「どうやって掃除すればいいですか?」
というご相談が増えています。
今年は、いつもの9月とは状況が違います。
気象庁の東京観測所のデータによると、2026年9月の降水量は607.0mm。1875年の観測開始以来、9月として歴代2位の降水量です。
150年以上にわたる観測記録の中で2番目に雨の多い9月となっています。気象庁データ
畳、とくに天然い草を使った新しい畳をお使いの方は、今年はいつも以上にカビ対策をしていただきたいと思います。
畳屋として、現在の状況と対策についてお伝えします。
2026年9月、東京の降水量は607mm
まず、今年の雨がどれほど多いのかを見てみましょう。
気象庁の「観測史上1~10位の値(9月としての値)」では、東京の9月の月降水量は次のようになっています。
| 順位 | 年 | 9月の降水量 |
|---|---|---|
| 1位 | 1958年 | 670.9mm |
| 2位 | 2026年 | 607.0mm |
| 3位 | 1929年 | 544.1mm |
| 4位 | 2015年 | 503.5mm |
| 5位 | 1991年 | 460.9mm |
2026年9月は、1875年の統計開始以来2番目の記録です。 気象庁データ
さらに9月21日には、東京で1日156.0mmの降水量を記録しました。江戸川区に近い江戸川臨海でも、同日の降水量は217.5mmに達し、年間を通した日降水量として観測史上2位となっています。気象庁データ
「異常気象」という言葉の厳密な定義は別としても、少なくとも今年9月の東京の雨量が、観測史上でも極めて多い水準だったことは間違いありません。
そして、この長雨の影響を受けているものの一つが「畳」です。
なぜ雨が続くと畳にカビが生えるのか?

そもそも天然い草の畳は、湿気と無関係な床材ではありません。
むしろ逆です。
天然い草には、周囲の湿度に応じて水分を吸収・放出する性質があります。
湿度が高いときには湿気を吸い、周囲が乾燥すると水分を放出する。
そのため私は、お客様に分かりやすく説明するとき、
「天然の調湿材のようなものです」
とお話ししています。
これが天然い草の魅力の一つです。
しかし、畳が吸収できる湿気にも限界があります。
雨の日に吸って、晴れた日に放出する。しかし今年は……
イメージしていただくと分かりやすいと思います。
雨が降り、室内の湿度が高くなる。
すると天然い草が湿気を吸います。
その後、天気が回復して室内が乾燥すれば、今度は蓄えていた湿気を放出していきます。
吸う → 乾く → 吐き出す
という循環ができれば問題ありません。
ところが今年の9月のように、雨や湿度の高い状態が長期間続くと話が変わってきます。
湿気を吸ったあと、十分に乾燥する時間がない。
それなのに、また湿度が上がる。
これを繰り返すと、畳が乾きにくい状態が続いてしまいます。
私はこれをお客様には、
「畳が湿気を抱えすぎて、キャパオーバーしている状態」
と説明しています。
そこに温度や汚れなど、カビが繁殖しやすい条件が重なることで、畳表にカビが発生しやすくなります。
特に注意してほしいのが「新しい天然い草の畳」です
ここはぜひ知っておいていただきたいところです。
新しい天然い草の畳ほど、カビには注意してください。
「新品なのに、どうしてカビるの?」
と思われるかもしれません。
新品だからカビが生えるという意味ではありません。
新しい天然い草は吸湿性が高く、室内の湿気を吸収しやすい状態です。
年月が経った畳に比べて、新しい畳表はまだ生活環境にも馴染んでいません。
そのため、梅雨や今年の9月のように湿度の高い状態が長期間続く時期には、新しい天然い草の畳ほど湿度管理を意識していただきたいと思います。
せっかく新しい畳に替えたのにカビが生えてしまったら、お客様にとっても、作った畳職人にとっても残念なことです。
だからこそ、新畳や表替えをしたばかりのお客様には特にお願いがあります。
今年は「窓を開ければ大丈夫」とは限りません
畳の湿気対策というと、
「換気すればいいんですよね?」
と思われるかもしれません。
しかし、ここにも注意が必要です。
外の湿度が非常に高い日に窓を開けても、湿気対策にならない場合があります。
雨の日に窓を開ければ、湿った外気を室内へ入れてしまうこともあります。
今年のような長雨の時期には、無理に自然換気だけで対応するのではなく、
エアコンの除湿(ドライ)機能や除湿機を積極的に使ってください。
「昔の家ではそんなものを使わなかった」と思われるかもしれません。
しかし、2026年9月は東京で607mmもの雨が降った、観測史上2位の9月です。気象庁データ
今年に限っては、機械の力も借りて畳を乾燥させることをおすすめします。
2026年9月、畳屋からお願いしたい5つのカビ対策
難しいことをする必要はありません。
今年は特に、次の5つを意識してください。
- エアコンの除湿機能を使う
雨の日や湿度の高い日は、我慢せず除湿運転をしてください。 - 除湿機があれば積極的に使う
和室を閉め切って除湿機を運転すると、湿気を外へ逃がしにくい住宅でも対策しやすくなります。 - 畳をこまめに掃除する
カビは湿気だけでなく、表面に付着したホコリや汚れなども栄養源にします。畳の目に沿って掃除してください。 - 乾拭きをする
湿度の高い時期は、畳表の状態を確認しながら乾いた布で拭いてください。基本的な日常管理では、むやみに水拭きして畳へ水分を加えるのは避けます。 - 家具や布団の下も確認する
空気が動きにくい場所は湿気がこもりやすくなります。敷きっぱなしの布団やマットなどがある場合は、定期的に上げて畳を乾燥させてください。
特に**「新しい畳だから大丈夫」ではなく、「新しい天然い草だからこそ今年は気をつける」**と覚えておいてください。
「カビかな?」と思ったら早めに確認してください
畳表を見たときに、
白っぽいものが付いている、緑色や青っぽいものが見える、畳の表面が何となく粉っぽい、いつもと違う臭いがする。
こうした変化があれば、そのまま放置しないでください。
初期の段階で対処するのと、畳全体へ広がってから対処するのでは大きく違います。
また、カビが広範囲に発生している場合や、何度掃除しても繰り返す場合には、単純に畳表だけの問題ではなく、部屋そのものの湿度、結露、床下などの環境も確認した方がよい場合があります。
畳が湿気を吸うこと自体は「悪いこと」ではありません
ここは誤解してほしくないところです。
「湿気を吸うから天然い草は良くない」
という話ではありません。
むしろ、湿度に応じて水分を吸収・放出することは天然素材であるい草の特徴です。
問題なのは、吸収した湿気を十分に放出できないほど、高湿度の状態が長期間続くことです。
晴れた日には乾燥し、また湿気を吸う。
本来はその循環の中で使われています。
ところが2026年9月の東京は、150年以上の観測記録でも2番目という非常に多い雨量になりました。気象庁データ
畳にとっても厳しい環境になっていると考えてください。
「うちの畳だけカビた」と思わないでください
今年、畳にカビが生えてしまった方に特にお伝えしたいことがあります。
今年は例年とは雨の量が違います。
樋口畳商店にも、畳のカビについてのご相談が数多く寄せられています。
掃除をしていなかったから必ずカビた、家の使い方が悪かったから必ずカビた、という単純な話ではありません。
室内環境、気温、湿度、換気、畳の状態など、複数の条件が重なってカビは発生します。
だからこそ今年は、
「カビが出てから対処する」のではなく、「カビが出ない環境を作る」
ことを意識していただきたいと思います。
江戸川区で畳のカビにお困りの方へ
樋口畳商店では、東京都江戸川区を中心に畳工事を行っています。
私は一級畳製作技能士として畳を作っていますが、畳を納めて終わりではなく、できるだけ長く気持ちよく使っていただくことも畳屋の仕事だと考えています。
特に今年は雨が非常に多いため、
「これってカビですか?」
「自分で掃除して大丈夫ですか?」
「表替えしたばかりなのにカビが出ました」
「畳を交換した方がいいですか?」
といったご相談も遠慮なくお問い合わせください。
カビの程度によっては、畳を交換しなくても対応できることがあります。
反対に、畳表だけではなく内部まで状態を確認した方がいい場合もあります。
実際の状態を見ながら判断します。
まとめ|2026年9月は、いつも以上に畳の除湿をお願いします
2026年9月の東京の降水量は607.0mm。
1875年の観測開始以来、9月として歴代2位となりました。気象庁データ
畳は天然素材です。
天然い草は湿気を吸収し、乾燥すると放出します。
しかし今年のように雨が多く、高湿度の状態が続けば、畳が十分に乾燥できず、カビが発生しやすい環境になります。
特に新しい天然い草の畳をお使いの方は注意してください。
エアコンの除湿機能や除湿機を積極的に使う。
畳をこまめに掃除し、乾拭きする。
布団などを敷きっぱなしにせず、畳に空気を通す。
今年は「いつも大丈夫だから」と考えず、少し念入りに湿気対策をしていただければと思います。
せっかくの畳です。
この記録的な長雨を乗り越えて、これからも気持ちよく使っていただければ、畳職人として嬉しく思います。
