みなさんにとって
畳の良さとは何ですか?
老若男女広く親しまれている畳だからこそ色々な意見があるかと思います。そこで今回は、私!畳職人が語る畳の良さと畳のメリットを3つお伝えします。
この記事を見てより一層畳のことを好きになってもらえたら嬉しいです。
畳の良さは?
・不完全の美
私が「畳の良さ」を聞かれた際には”自然物と人工的な部分の融合による美”と”不完全の美”の2つだと答えています。
この2つは千利休の考え方を参考にしたもので、古くから存在する日本の伝統的な美的感覚と呼ぶべきものです。
では、それが一体どのようなものなのか解説していきたいと思います。
自然物と人工的な部分の融合による美とは?
みなさんは
床緑(もしくは床紅葉)を
ご存知ですか?
京都、瑠璃光院の美しい床緑 pic.twitter.com/2PBSoRpFG1
— 世界の絶景 (@sizennaa) 2019年4月20日
床緑(床紅葉)とは、新緑の木々(真っ赤に色付いた紅葉)が板の間に反射して一面に広がって映った風景のこと。
その風景が実に美しいとして、国内外問わず京都の人気観光スポットになっています。
私も京都に住んでいた頃見に行きましたが、美しい景色に胸をうたれました。
とはいえ、たかが新緑の木々(紅葉)が板の間に反射して映っただけのこと。何をそんなに感じたのでしょうか?
私なりに思索してみると、1つは緑(紅葉)が床一面に反射して広がった風景を見慣れていないからではと思います。東京に住んでいると、庭に木がない方も多いですから、珍しいのかもしれません。
もう1つは、床と緑(紅葉)が融合しているさまに何かを感じたのではと私は思っています。
私たち日本人は自然に感謝し、自然と共存して生きてきました。
時代がいくら変わろうとも、建築には木や土を使い、自然のものを多く取り入れています。
そこには実用性という合理的な理由だけでなく、日本人が昔から大切にしている自然と人工物が織りなす美的価値があるのではと思っています。
その美的価値の代表例こそ畳であると思っています。
畳の材料である”い草”は農家さんが苦労して作った農作物です。
天候によってい草の色や大きさが変わる自然のもの。
それを編み込み、部屋の寸法に合わせて施工し、敷き込んだのが”畳”です。
つまり畳は、自然物と人工的な部分が融合し出来ている敷物になります。
▼もっと詳しく知りたい方はこちら:和室とはどんな空間?|畳職人が考える和室論
張替えた畳を見て「美しい」と感じるのは、そんな融合による美なのかなと思います。
不完全の美とは?
不完全の美とは何か?を理解するために千利休の逸話を1つ紹介します。
とある日のこと。千利休は、後の師になる武野紹鴎から「露地(茶室に向かうまでのお庭)を掃除しろ」と命じられます。ところが、露地はすでに綺麗な状態。もう掃く必要もありません。千利休は露地を眺めながら少し考えます。何かを思いつき、千利休は一本の木に近寄り、幹を揺らし始めました。木にしがみついていた葉は表裏に返りながらヒラヒラと落ちていきます。せっかく綺麗に掃除した露地に、落葉がチラホラ出現してしまいました。千利休は「よし!」と納得し、武野紹鴎に報告します。「掃除が終わりました!」一部始終を見ていた武野紹鴎は千利休が優れた人物であることを理解し、千利休を自分の弟子にしました。
日本人の心、伝えます。千玄室
※少しだけ文章を変えています。
この逸話のポイントは、綺麗に掃除された道が美しいとは限らない。不完全な状態であるからこそ「美」を感じることもあるというところだと思います。
この不完全の美こそ畳の最大の良さだと私は思っています。
最近、畳で人気の和紙表や化学表。
撥水加工が施され、汚れ、耐久性に強いため飲食店はもとより旅館などに好評をいただいております。
しかし、お年寄りの方にはあまり人気がありません。
い草に比べて和紙表、化学表は値段が高いのも理由の1つですが、人工的な色の畳表は好みじゃないと仰る方が意外に多いのです。
い草愛好者にとって畳は、自然の不完全さがあってはじめて畳なのでしょう。
とはいえ、不完全の美というのは些か挑戦的であるようにも思える。
一般論で言えば、落ち葉がない状態を「綺麗」だとし、落ち葉が落ちている状態を「汚い」としているから、もし掃除を命じられて落ち葉を増やそうものなら批判の嵐を受けることは間違いない。
つまり、不完全の美は捉え方次第では批判になりかねない概念なのです。(「美」の概念自体が私的なものですが)
畳でも「畳の色が違うんだけど。どうなってるの?」と言われることがあります。(同じ種類のい草で連続して製織している。乾燥時間も同じもの)
確かに色が違うのは間違いないが、トマトの形と色が全部違うのと同じように、い草の色と大きさがそれぞれ違うのは当然なこと。
全部同じ色にしたいなら染色した「い草」がオススメです。が、個人的には染色した「い草」をおすすめしたくはありません(笑)(それなら和紙表、化学表の方がいい)
人工的に色付けした「天然い草」の価値ってあるのか。
答えられない以上おすすめできないのが私の心境です。
畳職人が語る畳のメリット
・畳にはリラックス効果がある
・畳は湿度調整をしてくれる
それでは畳職人が語る畳のメリットを3つ紹介していきます。
畳は下の階への防音になる
マンションやアパートに暮らしている主婦の皆さんの悩み。
その1つが音に関する他の住民とのトラブルですよね。
子供が元気なのは喜ばしいこと。とはいえ、ドタバタうるさいと近隣(下の階)に迷惑をかけてしまうことになります。
そこでオススメなのが畳です。
畳のメリットの1つとして音を防いでくれる効果が期待できます。
その理由は畳の厚さと構造にあります。
主に畳の厚みは1寸8分〜1寸9分(50ミリ〜55ミリ程度)ほどあり、(最近では1寸(30ミリ程度)の厚みも増えてきました)畳床が藁床でないにしろ、木製のチップを圧縮したボードに吸音効果が期待できるフォームをサンドしている構造になっています。
したがってフローリングに比べて音が伝わりにくいと言えるのです。
▼赤ちゃんと畳に関する記事はこちら:【保育士推奨】赤ちゃんを育てるのに和室がおすすめな4つの理由
畳にはリラックス効果がある
畳の上でごろっとする。
適度な柔らかさとい草の匂いで気持ちいいですよね。
実は畳の匂いにはフィトンチッドとバニリンという成分が含まれています。
フィトンチッド(phytoncide)とは、微生物の活動を抑制する作用をもつ、樹木などが発散する化学物質。植物が傷つけられた際に放出し、殺菌力を持つ揮発性物質のことを指す。 森林浴はこれに接して健康を維持する方法だが、健康だけでなく癒しや安らぎを与える効果もある。フィトンチッドはその殺菌性や森林の香りの成分であるということから良いイメージがあり、森林浴の効能を紹介する際に良く用いられている。
バニリン (vanillin) は、バニロイド類に属す最も単純な有機化合物であり、バニラの香りの主要な成分となっている物質である
これら成分により家にいながら森林浴を楽しんでいるかのような寛ぎが与えられるのです。
またリラックス効果だけでなく畳の匂いには集中力をアップさせる効果も期待できるとか。
子供は和室で勉強させるのが良いのかもしれませんね。
▼い草の匂いについてはこちら:有名ない草の生産地はどこ?|国産い草の機能と現状について解説
畳は湿度調整してくれる
畳は自然物で出来ています。
雨の多い日には湿気を吸ってくれて、よく晴れた日には湿気を放出してくれるのです。
▼畳のカビについてはこちら:畳にカビが生えたらどうすればいいの?|和室のカビ予防と対策を紹介
私たちが住む日本という国は四季の変化がある気候帯。
梅雨の時期もあれば、唇が渇く乾燥の季節もあります。
まさに日本の風土に適した家づくりというのは、先人たちの叡智の結晶と呼ぶべきものでしょう。
畳もその1つであり、先人たちの知恵によって作られた畳は、長い歴史と共に日本人に親しまれてきました。
とはいえ、現代社会では科学が進歩し、自然に頼らずとも機械によって加湿と除湿が可能です。
もっといえば、科学力の力をもってすれば、自然に逆らい部屋の温度を調整することもできます。
先人たちが大切にしていた自然への感謝など薄れていく一方でしょう。
ですが私たちは、地球という自然の中で生活しているのに変わりはありません。
畳を通して自然を感じてもらう。自然に対して感謝の気持ちをもってもらう。
これが畳を作る私たち職人の想いです。
和室がない方にも畳を使ってもらいたい!
▼置き畳はこちら:置き畳のおすすめって何?|置き畳のメリット&デメリットについて紹介
▼畳マットはこちら:畳マットは赤ちゃんに優しいのか?|安くてオススメな畳マットを紹介
▼い草ラグはこちら:【口コミレビュー】オシャレな人気おすすめ天然国産い草ラグ6選
最後に
いかがだったでしょう。
畳の良さ、畳のメリットはわかりましたか?
より多くの人に畳の良さを知ってもらえたら嬉しいです。
とはいえ、多くの方々が「畳好きだよ」と言ってくれます。
それに甘んじることなく畳の良さ、畳のメリットを伝えていけたらと思います
読んでいただきありがとうございました。