・徒弟制度とは?
・徒弟制度の誤解について教えて!

 

皆さん、こんにちは!畳職人の樋口です。今回は、徒弟制度とは?京都で修行した畳職人が徒弟制度の誤解について解説します。徒弟制度について知りたい方の参考になれば幸いです。

徒弟制度とは?京都で修行した畳職人が徒弟制度の誤解について解説

 

徒弟制度とは…。

徒弟(とてい、英語: apprenticeship)、見習いとは、商人や職人の職業教育制度であり、若い世代を業務に従事させて(現任訓練、OJT)、時には座学(学校教育や読書など)を行う制度。弟子も含め、キャリアを構築することが可能であり、公的な技能認定を取得することが可能である。雇用主と契約した期間、継続的な労働に従事することで、それと引き換えに商売や技能を学習ができ、一般的な期間としては3 - 6年間、修了した者は一人前の職人として扱われる。 見習い、職人、達人のそれぞれレベル境界線の定義は、ギルドや労働組合といった組織の内部に留まっている。

 

徒弟制度とは、職人や商人を育てる教育制度のことで、昔で言うところの弟子や丁稚奉公、修行とほとんど同じ意味だと思ってもらって差し支えないです。

 

江戸時代から昭和初期にかけての徒弟制度のほとんどは、実家を離れ親方の家に住み込み、お駄賃程度のお金を貰って仕事を教えてもらう制度で、組合も市町村も国の管理も曖昧なものでした。

 

近年では、ほとんどの徒弟制度は組合と市が管理をしています。それに伴い徒弟制度も変わりました。では、どこがどう変わったのか徒弟制度の誤解について解説します。

 

徒弟制度の誤解について

徒弟制度への誤解
・徒弟制度は給料が貰えない?
・徒弟制度は住み込み?
・徒弟制度は坊主頭?殴られる?
・徒弟制度は修行期間が長い?

 

徒弟制度は給料が貰えない?

徒弟制度の誤解ひとつめは、給料についてです。先ほども述べたとおり、昭和初期まで徒弟制度は給料貰えない人も多かった。私の祖父がそうだったので、これは間違いありません。とはいえ、戦争が終わり、高度経済成長を迎える前には、徒弟制度のほとんどは給料が貰えていたはずです。

 

ただし、お店によって給料の金額に差はありますし、組合などを通さず徒弟制度を行なっている事業者に関しては給料が貰えない可能性があります

 

その点については制度がしっかりとできていないと諦めるしかないですね。(今も曖昧な部分は強く残っている)

 

 

ネット上では、徒弟制度と聞くと「それって奴隷制度じゃないの?安い給料で働かせて、古い日本のひどい制度だ」と否定する人が必ずいます。もちろん、徒弟制度にも改善すべき点があることは認めますが、私は奴隷制度だとは全く思いません。

 

そもそもネット上では、人から教えてもらうのにお金を払うのは当然だと言っている人がたくさんいます。その情報が有益かどうかもわからないのに、です。

 

徒弟制度は、技術と知識を教えてもらうのにお金を払うのではなくお金を貰って、尚且つ貴重な体験や高級なお店に飲みに連れて行ってもらえる(お店によって個人差ある)という制度です。これのどこが奴隷制度なのでしょうか。私には考えられません。

 

もうひとつ言えば、親方は徒弟制度を利用して得をしているという人もいます。確かに、それは一部認めます。徒弟制度があるおかげで人件費が安く済みますから。とは言え、最初は使えない、何もできない丁稚くんに給料あげて、教える時間を使うわけです。

 

▼関連記事:ダメな職人ってどんな職人?仕事ができない職人5つの特徴

 

高卒なバカな丁稚くんは車を壁に激突させることもあるでしょうし、寸法を間違えてお客様に怒鳴られることもあるでしょう。お金を払って直すのは誰か、怒っているお客様に謝るのは誰か、全て親方です。

 

それでいて、三年〜四年して一人前になったら卒業する(徒弟制度の多くは三年〜四年程度で自分の故郷に帰る制度)。どうですか?これを聞いてもまだ親方だけが得していると思いますか?

 

オンラインサロンにいる、嘘か本当かわからないような情報を売って、何かあった時には責任は一切とらない変な方々と比べたら、よっぽど親切な制度だと私は思います。

 

徒弟制度は住み込み?

 

徒弟制度の誤解ふたつめは、住み込みについてです。徒弟制度も昔は住み込みでした。親方の家に住んで仕事に専念することで技術や知識以外の人間性も得られる。『他人の釜の飯を食う』というのが、尊ばれた時代の話です。

 

しかし、いまの徒弟制度は住み込みか一人暮らしか好きな方を選べます。やはり住み込みに対して嫌だという人も多いのでしょう。アパートもしくはマンションを借りて、そこから通勤する丁稚くんも数多くいます。

 

実は私の兄弟子も住み込みではなく一人暮らしでしたし、私の同期や先輩方の中にも一人暮らしを選んだ方は大勢いました。ですので、徒弟制度は住み込みしなければいけない古臭い制度というのは完全な誤りです(個人でやっている徒弟制度や飲食系の職人は未だに住み込みオンリーなところも多いと聞きます)。

 

ちなみに私は住み込みを選びました。理由は一緒に暮らす社長さん(先代)とおかみさんがとても親切で優しかったからです。私は六年間住んでいたのですが、嫌な気持ちになったことは一度もありませんでした(絶対迷惑かけていた)。

 

 

むしろ逆に、修行先のお店の居心地が良すぎて、長期休みとか実家に帰りたくなかった。それくらい本当に暮らしやすかったです。それは社長さんとおかみさんのおかげですが、きっと他のお店の住み込みでも暮らしところはいっぱいあると思います。

 

住み込みは嫌だと最初から決めつけずに、親方とかご家族のことをよく観察して一人暮らしか住み込みか決めるのがいいのかなと思います。

 

余談ですが「住み込みだと遊べないのでは?」とか言われますが、それも誤解です。平日朝帰りしたことも一度や二度ではありませんし、夜中に外出するしたことは数え切れないほどあります(言いわけを言えば、夜中に電話してきて山中越えに連れて行く頭のおかしい先輩が近所に住んでいた)。

 

 

大学生は遊んでいると言いますが、私たちも負けないくらい遊びまくっていたと思います。(その分、仕事も頑張りましたが)

 

一人暮らしでも遊ばない人は遊ばないし、住み込みでも遊ぶ人は遊ぶ。その人次第だと思います。

 

徒弟制度は坊主頭?親方に殴られる?

 

徒弟制度の誤解三つめは、親方の教育方針についてです。徒弟制度でよく言われるのは、髪の毛を切って坊主頭にしなければいけないとか、佐山聡みたいに「俺のこと舐めてんの?」と言いながら顔や頭を殴られるとか、昭和のかなり厳しめな教育方針が採用されていると考えている人が多いです。

 

これは一部正しく、一部誤りです。というのも、徒弟制度の教育方針はこれ!といった共通する理念がありません。つまり、徒弟制度の教育方針は全て親方次第なのです。

 

親方の中には髪の毛は坊主にしなければいけないと思っている人もいるでしょうし、もしかしたら手が出てしまう親方もいるでしょう。とはいえ、それ徒弟制度云々の問題ではなく親方個人の資質の問題だと思います。

 

親方の中には、髪の毛は自由としている親方も大勢いますし、殴らない教育方針をとっている親方も大勢います。親方連中が全て暴力的で暴言的で昭和的だと思ったらそれは勘違いだと伝えたいです。

 

ちなみ私が修行したお店では、髪の毛坊主どころか髪の毛染めても怒られませんでした。もちろん暴力なんて一度もありませんでしたし、暴言さえもありませんでした。

 

他の知っているお店でも、親方に暴言吐かれたという人は何人かいましたが、暴力はそこまで聞いたことはありませんでした。仮に親方に殴られたということであれば、組合が徒弟制度を管理しているので、組合の方に相談すると良い思います。

 

組合には頼りない親方もいっぱいいるのですが、言うべき時には言ってくれる親方も中にはいるので、もし殴られたら一度頼ってみることをお勧めします。

 

徒弟制度は修行期間が長い?

 

徒弟制度の誤解四つめは、徒弟制度は修行期間が長いことについてです。先に申し上げておきますが、そもそも修行期間という期間は実は存在しません

 

毎回、畳の例えで申し訳ないのですが。

畳職人になる為の修行期間を六年としたとき。この六年は畳製作一級技能士を習得するまでの期間(俗に一人前の職人と呼ばれる資格)を表しているのですが、畳の学校は三年八ヶ月で終了で、あとは皆さん実家に帰ってしまいますので、残りの二年四ヶ月は親方の元での修行ではない。その二年四ヶ月の期間は、皆さんが思う修行期間でしょうか。

 

▼関連記事:畳職人になるにはどうすればいいの?|畳製作一級技能士になるまでの過程

 

もっと言ってしまえば、畳製作一級技能士の資格を必要としない人は別に一年でも、二年でも、三年でもいいわけで、そうなると修行期間なんてのは曖昧な期間で意味を成していないのがわかります。

 

現に修行した職人さんに「修行期間はどれくらい?」と聞いてみてください。おそらく皆さんが「今も修行中だ」と答えると思います。

 

このズレは皆さんの修行期間と私たちの区切りを一緒に捉えているからだと私は考えます。

 

そもそも修行の過程(プロセス)は守破離と呼ばれる段階を踏んでいきます。

 

守破離とは、守が親方の言いつけを守って覚えること。破は親方の言いつけだけでなく、他の職人さんの言いつけも取り入れること。離は親方や先輩、他の職人さんのスタイルを融合して独自のスタイルを追求していくこと。

 

▼関連記事:【必ず上達する】職人になる前に知っておくべき守破離の考え方

 

このプロセスを踏んで、我々は一人前の職人と呼ばれるところまで極めていきます。

 

皆さんが俗に言う修行期間とは、おそらく守破離の『守』のことで、守が終わることは一つの区切りではありますが、修行期間の終了ではないのです。そう考えると徒弟制度は修行期間が長いという批判がおかしいことに気がつくこと思います。

 

守破離の『守』は親方の言いつけを守るだけ。言ってしまえば、親方の言っていることややっていることを真似すればいいだけです。これが長いのは、単純に丁稚くんの物覚えが悪いだけの話だと思います。

 

こういう話になると必ず言うのが、親方の教え方が悪いと言った親方の指導不足の問題です。とはいえ、本当に親方の指導に問題があるでしょうか。親方の教え方の基本は『見て覚えろ』『やって覚えろ』です。

 

▼関連記事:【親方必読】見て覚えろは時代遅れ?これからの職人の教え方

 

この教え方のどこが問題なのでしょうか。言い方悪くて申し訳ありませんが、見て覚えろ!やって覚えろ!で覚えられないのは、その人の物覚えが悪いだけだと思います。

 

単純な努力不足です。

 

自慢ではありませんが、私は三年目で二帖のお茶室(誤解が多いことですが、畳は枚数が少なければ少ないほど難しい。とくに二帖のお茶室で寸法がいかれている炉畳は難易度が高い仕事)を任してもらえましたし、四年目では社寺の仕事(紋縁)を任せてもらえました。

 

人より努力したとは思いませんが、それでも出来ることは頑張りました。それを修行期間が長い!だの親方の教え方が悪い!だのと言っているのは、ただ言いわけして逃げている人だと私は思います。

 

要は、修行期間は存在しない。仮に修行期間があるのだとしたらそれは一生。守破離の守が長いのはその人の物覚えが悪いだけ。もっと努力した方がいいのでは。というのがまとめで、徒弟制度は修行期間が長い!に対する私の意見です。

 

あと余談ですが、寿司職人のよく言う「飯炊き三年。握り八年」はその言葉の通りの意味で受け取らない方がいいと思います。私は寿司職人ではないので、詳しいことはわかりませんが、職人って口下手で、言葉足らずな可能性があります(というか職人の世界にいたらわかるけど、ほとんど主語が無いし、言葉が足りない)。

 

私の解釈だと「飯炊きを覚えるのに三年、握りを覚えるのに八年かかるぐらい奥深いものなんだよ」という意味だと思います。飯炊き三年やらせて、握り八年。合計十一年間やらせるといった意味で解釈するのは、間違っていると思います。

 

とはいえ、わかりにくい言葉を作った張本人が一番悪いですが(笑)

 

▼関連記事:職人気質とはどんな人?|職人気質な人との上手な付き合い方

 

以上、徒弟制度とは?京都で修行した畳職人が徒弟制度の誤解について解説しました。

最後に|まとめ

 

徒弟制度とは?

商人や職人における教育制度。丁稚奉公や弟子制度、修行とほとんど同じ意味で使われている。徒弟制度のルーツはおそらくマイスター制度だと思うが、ドイツなどのマイスター制度はかなり厳しい制度らしい。日本の徒弟制度も以前までは厳しい制度でしたが、近年は大きく変わった。

 

徒弟制度の誤解について

  1. 徒弟制度は給料がもらえないは誤解
  2. 徒弟制度は住み込みが基本は誤解
  3. 徒弟制度は髪の毛坊主。親方に殴られるは誤解
  4. 徒弟制度の修行期間は長いは誤解

 

いかがでしたか。参考になったでしょうか。読んでいただきありがとうございました。

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