畳表はタッカーで止めちゃいけない?|畳を糸で縫う理由

 

何で畳を張り替える時にタッカーで作ったちゃいけないのだろう

 

畳の仕事をしていると、たまにタッカーで作られた畳を目にする機会があります。私たち職人の間ではそう言った仕事を「酷い仕事」だと言っていますが、タッカーで止めるとなぜ酷い仕事だと言われてしまうのでしょうか。

 

そこで今回は、畳表はタッカーで止めちゃいけない?畳を糸で縫う理由を紹介します。

 

何で畳をタッカーで止めたらいけないのか、畳を糸で縫う理由とは何か、気になる方の参考になれば幸いです。

畳表はタッカーで止めちゃいけない?

畳表をタッカーで止めてはいけない理由
・年数が経つとタッカーが錆びて畳表から外れてしまうから
・畳表に締まりがないので、年数が経つと畳表がダルダルにヨレてくるから

年数が経つとタッカーが錆びて畳表から外れてしまうから

そもそも床下は湿気がたまりやすくカビが発生しやすい場所です。だから昔は衛星掃除と言って一年に一回畳を上げて掃除をし、床下を換気していました。

 

しかし、現代では衛星掃除もなくなり、畳を敷きっぱなしにする方も増えましたよね。そうなれば床下には長く湿気が溜まっている状態が続くことになります。

 

タッカーの芯に用いられているのはスチールですから(業者によってはアルミやステンレス鋼、銅などもある)湿気が多ければ段々とサビてきてしまいます。(錆びる速さは具合によります)

 

ただ錆びるだけなら良いのですが、そのまま劣化していけば畳表から芯が外れ、畳表が取れてしまいます。また、畳表だけでなく畳縁なども同様に外れてきてしまい、縁が破れやすくなってしまいます。

 

だからタッカーで畳表を縫い止めていると酷い仕事だと言われてしまうのです。

畳表に締まりがないので、年数が経つと畳表がダルダルにヨレてくるから

 

動画を見ていただいたらわかるのですが、針を上にあげた時に強く指で締めていますよね。何もこれは暇つぶしにやっている作業なわけではありません。

 

畳表というのは湿気によって膨らんだり、縮んだりと伸縮します。いくら良く畳表を張ったからと言って表が弛んでこない保証はありません。

 

 

ですので、良く張った上に糸で良く締めるのです。この一手間をやるかやらないかで畳の持ちは大分違います。最近では機械縫いでも大分良く締まるようになってきました。タッカーで畳表を止めるくらいなら機械で縫った方が全然良いと私は思います。

畳を糸で縫う理由

 

Makitaのタッカーを始め、こんなにもコンパクトでコードレスで安い素晴らしい道具があるのにも関わらず、今もなお畳を糸で縫っているのか。

 

それはお客様に長く使ってもらう為です。

 

畳表をタッカーで止めれば、表が弛んできて摩擦が余計に掛かります。摩擦が余計に掛かれば畳表が擦り切れるのが増えるし、低価格な中国産の表なら下手すれば破れるかもしれません。

 

だから糸で縫って畳表を、畳縁をしっかりと縫い止めるのです。ちょっとした手間が後々大きく変わってくるのも畳製作の特徴です。

 

それともう一つ。次の畳替えをする時に、今度やる人が作業しやすいようにしてあげる為です。タッカーで施工していると、タッカーがどこに打ち込んでいるのかわかりません。もしかしたら今度作業する人が飛び出してしまったタッカーの芯で指を怪我してしまうかもしれない。

 

だから糸で縫って安全に作業できるようにするのです。

 

今さえ良ければ良い。自分さえ良ければ良い。そう言った考えは職人としてはよくないのではないかと思います。

 

ただ、二年程度で畳替えをするマンションやアパートならタッカーでの施工も有りだと思います。芯が飛び出さないように丁寧に打つならですが、やっぱりタッカーは簡単ですし、大型な機械を必要としない為、安価に作ることができます。そう言ったメリットを考えれば安価なマンション、アパートの施工はタッカーでも良いのかなと私個人的には思います。

 

またDIYで畳替えをする方もタッカーで作るのは有りだと思います。人様の家のことですし、自分がやりたいなら勝手にやれば良いと私は思います。(個人的にはDIYで畳替えをするくらいなら、上敷きの方が安価で手間も掛からないので良いと思います)

 

技術も技能も適したところで使うのが良いのかなと思います。

 

以上、畳表はタッカーで止めちゃいけない?畳を糸で縫う理由でした。

最後に

私は畳職人の仕事を始めて十年が経とうとしています。まだ職人としてはペーペーの未熟者。人様の仕事にケチつけるほど偉い身分では有りませんが、畳をタッカーで作っているが故に「畳ってこんなものなの?」と言った畳業界全体の信頼を落とす可能性がある場合には、ペーペーだろうが何だろうが言うべきだと思い、ブログを書くに至りました。

 

もしこのブログを見てタッカーから糸へ作り方が変わったのなら嬉しいです。

 

読んでいただきありがとうございました。

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