突然ですが!
畳について学べる学校があるって
ご存知ですか?
実は畳について学べる学校は日本全国に6ヶ所も存在します!
畳の学校があることは、一般的には知られていないことで、お客様に話すとすごく驚かれます。
今回は全国にある畳の学校の1つである京都畳技術専門学院にスポットをあて、畳の学校と言うのはどんな場所なのか、授業内容は?入校して得はあるのか、などに詳しく解説していきたいと思います。
畳の学校って知ってる?
まず最初は畳の学校はどんな場所なのかについて説明したいと思います。
畳の学校は全国に6ヶ所、東京都、埼玉県、福岡県、茨城県、石川県、京都府に存在します。
これら畳の学校ができた経緯は、「伝統技術の継承と発展を次の世代に託していかなければいけない」と考えた畳組合から発足されたものです。
職人の世界では、昔から「技術は一子相伝」なんて言われて、親方は子又は弟子にしか技術を教えてきませんでした。
しかし、それだと御子息や弟子がいなかったら技術が途絶える可能性もあり、先代から受け継がれた素晴らしい技術力がもったいないですよね。
そういった危惧から畳の学校を作り、素晴らしい技術をもっている職人達を講師に招くことで、伝統技術を永続的に守っていけるような体制を作りました。
つまり、畳の学校の主な目的は、未来に受け継ぐ必要がある伝統技術の継承と未来志向で考える畳業界の発展を学ぶため。その為の畳の学校です。(ちなみにですが、これは京都以外のどの畳の学校にも共通する理念です。)
とはいえ、畳は右肩下がりの業界です。
伝統技術を子々孫々に残していかなければいけないだけでなく、畳職人として飯を食っていかなければならないと言うこともこれからは考えなければいけません。
そこで京都伏見区にある京都畳技術専門学院では畳だけでなく、将来に活きるような色々な取り組みをしています。では、京都伏見区にある京都畳技術専門学院を紹介していきます。
京都伏見区にある京都畳技術専門学院
実は私も京都畳技術専門学院(2011年〜2015年の約4年間(3年8ヶ月))に通っていました。つまり、ここの卒業生です。
まず京都畳技術専門学院の所在地ですが、”京都府京都市伏見区竹田流池町121−3”竹田久保町の交差点「天下一品」の裏側、教習所の隣にあります。(ちなみに校舎裏が川沿いです)
私も初めて京都に訪れた時、京都畳組合の事務所に行けばいいのか、畳の学校に直接行けばいいのかわからず、迷ってしまったことがあります。
もし、畳の学校を見学したい(学校での授業風景)場合は、京都畳組合の事務所に連絡した後、畳の学校に行くようにしましょう。※京都畳組合の所在地と連絡先は下に載せておきます。
全国から集まる訓練生
京都畳技術専門学院には私以外にも関西や北陸、九州、東北など全国から生徒が畳についての学びを求めて集まります。卒業した後でも、お互いの地域の情報を共有することが出来るなどかなり得です。ものづくりの職人業界といっても人脈は宝ですから大切です。
でも、なぜそんなに全国から畳職人が集まるのか。畳の学校は関東にも九州にもあるのに不思議ですよね。わざわざ京都まで来なくても地元の近くの畳の学校に行けばいい。って思いません?
やはり、そのへんは京都ブランドが大きいかと。
京都には社寺をはじめ、数寄屋造りの家、伝統的な日本家屋などがたくさんあります。どれも技術が必要な仕事ばかりですから、これからやっていくのに大変勉強になります。
もう一つ、これは個人的な理由ですが、京都で学んだってなんかカッコいいなぁって(笑)「京都で学んだ」って言いたくないですか??(笑)
私は普通に言いまくっています。まぁそんなふしだらな理由で、京都の畳の学校を選んだ人はいないと思いますが。
何はともあれ、京都畳技術専門学院は全国から集まる畳の学校ということは覚えておいてください。
入学案内
京都畳技術専門学院の入学案内を掲載しておきます。
京都畳技術専門学院は、昭和28年7月に組合員の後継者育成を目的に「京都畳技能者養成所」として創立しました。 その後、昭和33年10月に「京都畳高等職業訓練校」として京都府知事の認可を得ており、さらに平成7年8月から校名を「京都畳技術専門学院」と改称し、名実とも充実した訓練施設をめざしている認定職業訓練校であります。 本学院は、創立当初から「技・学習得=人格形成」をモットーに優秀な畳技能者を養成する施設として、経験豊かな講師・指導員の先生方の行き届いた指導と、※受け入れ事業所の御協力により、今日迄数多くの技能者を育ててきております。 その実績は全国的にも高く評価され、現在では京都だけでなく全国各地の畳店からの子弟が多く学んでいます。特に、京都は社寺仏閣が多く、畳製作の技術・技能は古くから全国の最先端をいくものと自負しております。
このように京都畳技術専門学院では、このようにPRをして全国から生徒を募集しています。※赤線をつけた※受け入れ事業所の御協力によりは大事なことなので説明します。
入学の流れのなかで詳しく説明するのですが、学校に入る=事業所に所属する(事業所とは、畳組合から認可された畳屋さんのことで、一級畳技能士の資格と訓練校指導員免許を取得が条件)は基本的にはセットとなっています。
従って、京都畳専門学院入学と同時に自動的に京都の畳屋で働くシステムになります。
ただ、例外として京都在住の人、または近隣の県在住の人は、実家から畳の学校に通うことは許可されています。
入学資格
原則として高校卒業の資格と組合に加盟する事業所に所属している者。
入学資格として高校卒業の資格は条件。偏差値などは関係ないので勉強ができなかった人も入学できます。私のことです。
また、京都畳組合に加盟する事業所に所属することが条件です。こちらはさっき言った通り、入学=京都畳組合に加盟する畳屋さんに所属することを表しています。
畳の学校に行きながら、畳屋さんに弟子入りするくらいの軽い気持ちで考えればOKだと思います。
入学の流れ
京都畳技術専門学院への入学の仕方はいくつかあります。
まず私の場合ですが、京都の畳屋に誰か知り合いがいたわけではないので、京都畳組合事務所に直接連絡しました。
そしたら見学をさせてもらえるということだったので夏休みを利用して学校見学と畳組合事務所に説明を聞きに来ました。
それから後日、入学説明会があり、そこで引受先の事業所を見学しました。
先ほどからの繰り返しになりますが、学校に入校する=事業所に入り、そこで丁稚奉公をすることになります。丁稚奉公と言っても硬い修行ではなく普通の畳職人の仕事で給料も貰えます。
丁稚奉公の扱いについては各事業所に一任されているので、それぞれ事業所によって異なります。事業所によっては合う、合わないがあるでしょう。そこは運ですね。
ちなみに私はめっちゃ運がよかったです。
また、違うケースで入学する方法もあります。
知り合いの畳屋さんや卸業者などから推薦してもらい、その事業所に直接入るパターンです。畳業界は基本的に横の繋がりが強いですから、もし気になったら畳屋さんに一度聞いてみたら良いと思います。知らない事業所に入るより、多少知っている方が安心かと思いますし。もちろん私でも構いません。
その際はお問い合わせフォームかツイッター、フェイスブックにご連絡ください。メールアドレスはQRコード載せておきます。
では続いて、京都畳技術専門学院では何を学ぶのか、授業内容について説明していきます。
畳の学科授業
みなさんが嫌いな学科の授業です(笑)
義務教育と違って内容は畳や建築なんで面白いですが、仕事が終わった後の夜から授業が始まるので、眠気マックスなんですよね(( _ _ ))..zzzZZ
とはいえ、しっかり学びましょう。
学科の授業期間は2年間。4月〜6月末と12〜2月末の約6ヶ月間で授業が行われます。
授業の内容は、畳の歴史・寸法学・建築・簿記・品質管理・室内装飾・経営・仕様積算などなっていて、先生はそれぞれの専門分野に詳しい方をお呼びして教えてもらうことになります。
特に畳の歴史、寸法学、建築、品質管理は一級畳技能士の試験でも必要な知識ですし、宮内庁関連の仕事をしたいなら知っておかなければならない必須の学科と思います。
もちろん!テストもあります!
とはいえ、普段畳の仕事を頑張っていたら普通にわかるレベルの優しい問題です。心配する必要はありません。
ちなみに室内装飾については、これから先よく学んでおく必要があると思います。ここ最近、畳の需要が減ったこともあり畳事業1つでは難しくなってきました。
内装業を学べば多角化する力を身につけられますのでとても良い授業だと思います。
学校だけじゃ心配!というもっと学びたい人は、畳技術専門学院の講師でもある西脇先生が未来塾を開講しているので参加することをオススメします。(現在は講師が変わったそうです)
総括すると、働きながら夜学で2年。勉強は畳職人として必要な知識とこれからやっていくのに必要な知識を学べる。
ただ、経営の授業に関しては個人的にいらないと思います。畳屋の経営って地域密着だから場所によって、とても左右されます。過疎化してる地域もあればニュータウンもある。「経営はこれ!」なんて教えたってあてはまるわけがない。って思います。
偉そうに言ってしまいましたが、意見があれば口にした方が絶対に良いと思います。新入生でも社会人ですから、遠慮なく言うべきです。
畳の実技授業
次に実技の授業について解説していきます。
京都畳技術専門学院の実技の授業は約3年間8ヶ月となります。授業期間は7月〜11月、3月に授業があります。
普通科1年生は畳の框に板を入れず簡略化した畳の施工方法(素框新畳)を習い、普通科2年生は畳の框に板を入れた施工方法(板入れ新畳)を習います。
板を入れる必要性は、敷かれている畳と畳が摩擦によって框が丸くなるのを防ぐため。したがって、畳の框に板を入れて角を長期的に保護するために必要な作業となります。
これら実技の授業は主に7月〜11月まで行われます。
3月の実技授業は主に表替え(手縫い)と上敷き(紋縁)をおこなうのですが、生徒からの要望を聞いて授業に取り入れてくれるので、やりたいことがあれば先生に言ってみましょう。
ちなみに私の下の学年は、縁無し畳(手縫い)と寸法取り(実践)を習っていました。
研究科1年、2年(3年生と4年生)の生徒が実技の授業で習うのは有職畳です。
有職とは、公家・武家などの行事、儀式、官職等に関係する知識と、それに詳しい者のこと
簡単に言うと寺社に納める畳の工芸品ですね。
有職畳は普段、あまり見かけない物ですが、法事の際にお寺さんなどで見ることが出来るので機会があればご覧ください。
研究科1年(3年生)が二畳台の二方縁で、研究科2年(4年生)が四方縁と鐘敷きになります。普段の仕事では略式で納めたりもしますが、習うのは板を入れて柱を立てて四方縁の拝敷きを被せて上から縫い合わせる本式の伝統ある手法です。
実技授業の作業工程についても解説しようと思ったんですが、話が長くなるし、わからない箇所も増えると思うので、あとは学校に行って学んでいただけたらと思います。
続いて京都畳技術専門学院のビックイベント2つを紹介したいと思います。1つ目は畳について学び修める修学旅行。2つ目は畳の技術を競い合う祭典、京都畳競技会。
では、まず修学旅行から紹介します。
学びの旅行
京都畳学院では7月には旅行か遠足に行きます。
行き先はその年によって違いますが、畳やものづくりに関係する所でとても勉強になる場所です。
私が行ったのは石川県、岡山県、愛知県でした。どのような所に行ったのか簡単に説明したいと思います。
まず石川県にある畳の学校に訪れた話。
その石川県の畳の学校は、誰でも入れるわけではなく、技術が高いと認められた職人でなくては入れない、そんな一流の職人が通う学校です。
実際に手床と呼ばれる畳の床素材を見せていただいたのですが、思っていたよりしっかりしていて、針で細かく縫って糸でよく締めているなと思いました。
昔は手床が主流で、作れる職人も数多くいたのですが、近年は機械化が進んだため、作れる職人もめっぽう減りました。
ですが、文化財などでは藁床を修理したり、再生床にしたりと手を使う場面がいくつかあります。
大切な伝統技術を受け継ぐことも文化を保守していくには大事なことなので学べる魅力を感じました。
案内してくれた講師の方は京都畳技術専門学院の卒業生らしく、とても親近感がありました。
やっぱり嬉しいですよね。
「俺、先輩なんだよ!君は事業所どこなの?あ〜昔お世話になったわ〜」みたいな感じで。
今でもたまにあるホットな話です。
続いて岡山県を訪れた話。
岡山県は備前表と言う『い草』を見に行きました。
昔は備後と備前はとても有名な『い草』の生産地でした。
今は畳の需要の低下と後継者不足の問題などから農家さんも減ってしまって数少なくなってしまいました。
それでも最高級品畳表と呼ばれるほど太くて良質な『い草』を今もなお生産しています。
▼い草についてはこちら:有名ない草の生産地はどこ?|国産い草の機能と現状について解説
また高田織物という畳縁メーカー最大手の会社見学に行きました。普段、畳縁がどのようなプロセスで作られているのか考えもしなかったので勉強する良い機会になりました。
最近は縁無し畳が増えてきました。
これは畳縁メーカーからしたら死活問題です。
なぜ畳に縁がついているのか、縁の役割は何か、大事なことを教わりました。
▼畳ヘリについてはこちら:畳のへりはどこで販売してるの?知っておきたい畳縁の役割
最後に愛知県に訪れた話。
愛知県は東海機器工業株式会社に行きました。
東海機器工業株式会社さんは日本全国で使われている畳の機械メーカーです。
提供しているのは、畳の機械だけでなく畳屋さんの販路拡大のための事業や畳屋さん向けの情報発信などを行なっています。
京都でお世話になっていたお店の框機械は東海機器工業株式会社さんの機械で24〜26年くらい使っているのですが、まだまだしっかり縫えているので長持ちする丈夫な機械を作っているという良いイメージの会社です。
畳の機械も畳縁と同様に製造過程など全く意識したこともなく、勉強する良い機会になりました。
見学して驚いたのが、畳機械の数年での進化です。
昔は機械縫と言うと荒くて平刺しが汚いというのが通説でした。
それを覆すかのように綺麗にそして速く縫えるようになっていることにビックリしました。
ただ、ホコリが多い工場での作業ですから、コンピューターにホコリがたまり、火事もしくわ機械のアクシデントなど増加するのではないかと懸念も残りました。
数年で新しい機械(もしくわ中古機械)に買い換えるだけの財力があればクリアできる問題ですが・・・・
このように普段考えなかった畳の材料や機械に注目して学べる良い機会をいただけるので感謝しています。
京都畳競技会
京都畳技術専門学院では11月中旬になると持ってる技術力を競いあう京都畳競技会が開かれます。
結果発表がみんなの前で伝えられ、順位が低い人は、凄い蔑まれます。
結果が悪かった人にとっては悲しいイベントです( T_T)\(^-^ )
京都畳競技会は、京都新聞や敷物新聞、KBS京都などメディアにも取り上げられ、「若い畳職人の競い合い」などと注目されています。
とはいえ、近くで観覧することができないので「遠くて見えない!」と言った意見も多々あります。
ではでは、簡単にルール説明をします。
普通科1年生は実技の授業で習った、板が入っていない畳(素框新畳)を作ります。
難易度的にはとても簡単で、しっかりと授業を受けて、お店で練習すれば時間に余裕もあり仕上がりもそこそこ上手にいくかなと思います。
ただ、寸法に関しては板が入っていない分、ブレてしまった時、融通が効かないので気をつける必要があります。
普通科2年生、研究科1年生、研究科2年生は同じ、板入れ新畳で競い合います。
作業工程はそこまで大きく変わらないのですが、針数と時間、寸法チェック、細かい箇所のチェックが学年が上がるごとに厳しくなっていきます。
また畳床の硬さが普通科と研究科では比べ物にならないほど硬く、縫うのに苦労する為、針に負担がかかり、競技会が終わると鍛え上げられた重春の針(京都市にある有名な刃物屋)がお焚き上げに送られる(畳針は曲がる&折れるとお焚き上げしてから捨てる)ことになります。
その床の硬さと針数の多さで、研究科2年の時間はかなり厳しく歴代でも間に合わない人が続出するなど難易度高めになっています。
とはいえ、きちんと練習して日々の仕事を真面目に頑張っている人は自ずと結果がついてくると思います。
この京都畳競技会は個人的に最も大切なイベントでした。
普段抱えている「何の為に仕事をするのか」「何の為に頑張るのか」そんなわけわからない疑問を払拭するのに競技会が大きな役割を果たしてくれた。と思います。
競技会で勝つ為に頑張る!
頑張って働くインセンティブになったわけです。
最後に
いかがだったでしょう。
京都畳技術専門学院こと畳の学校に興味を持ってもらえましたか???
学校に行く、行かないは個人の自由。行かなくたって畳職人にはなれます。でも、行くことでのプラスって何かなって考えた時に人の繋がり、横の繋がりが強いことかな。
職人の世界ってちょっと堅いと言いますか、何処の馬の骨ともわからんやつと仲良くするか!!!みたいな。。。
そんな昔の職人さん達と仲良くなって他では手に入らない情報を戴けるのは大きな利点かと思います。
それともう1つ、ネットで畳の歴史調べるのと実際に見る&触る&体験するのとでは全く違います。まさに百聞は一見に如かずです。調べるだけでなく実際やってみることの方が大切かと思います。
それに、これから先の時代、特化した技術と特化した知識は必須になるように感じます。これは個人的な意見ですが・・・
何はともあれ、畳職人に興味がある方は京都畳技術専門学院をオススメします。
▼畳職人についてはこちら:畳職人になるにはどうすればいいの?|一級畳技能士になるまでの過程を紹介
▼私の自己紹介記事はこちら:【自己紹介】樋口畳商店 代表 樋口裕介について
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