和室にある床の間って何に使うの?|歴史を知れば使い方が見えてくる

 

・和室にある床の間って何に使うの?

 

私が京都で畳修行してた頃、いくつもの美しい床の間に出会いました。

 

長さ五尺ぐらいの床の間に、ハクション大魔王の壺のような器(怒られますねw)に季節のお花が活けてあって、遠くからみても日本の美を感じることができる。

 

とても美しい光景でした。

 

とはいえ、そのような床の間の使い方をしている御宅もあれば、どう使えば良いかわからず物置になってる床の間もしばしばお見受けしました。

 

では、和室にある床の間はどう使ったら正解なのか。床の間とはそもそも何なのか?和室にある床の間は何に使うのか?その答えは、床の間の歴史を理解すればわかるのではないかと思います。

 

そこで今回は、和室にある床の間って何に使うのか。床の間の歴史を振り返りながら床の間の使い方を紹介します。

この記事でわかること
・床の間の歴史
・床の間の形式
・床の間の決まり

・和室にある床の間って何に使うの?

床の間の歴史

 

床の間の起源は鎌倉時代。僧侶の住宅から床の間の歴史は始まったわ。

 

諸説ありますが、床の間の起源は鎌倉時代の僧侶の住宅から始まったとされています。

 

床の間の最初は、壁や襖に、仏画や掛け軸形式の絵を掛けて、その前に押板をしつらえ、三具足(燭台・香炉・花瓶)を飾ったのが始めで、後に造り付け(家具などを部屋の壁面などに固定して作ること)にされたものと言われています。

 

▼掛け軸に関してはこちら:床の間にかける掛け軸とは?|茶掛けから動物まで掛け軸の意味を紹介

 

他の説によれば書院造りの「床」というのは、部屋の一部を一段高くして畳を敷いた所で、高貴な人の格式の高い座所でもあり、これが床の間の原型だとも言われています。

 

押板が床の間と呼ばれるようになったのは、だいたい桃山時代からのことで、茶匠・千利休以降の茶室の影響によるものです。

 

当時は禅宗や茶の湯の影響が大きく花鳥山水画や活け花などが飾られた装飾的な「床の間」と書院造りの格式的な「床」が出現しました。

 

以上のことからわかるように床の間の形成過程には、大きく分けて二つの流れがあります。

 

茶道によってもたらされた数奇屋風の「床の間」と武家の住宅に見られる権威と格式を示す「床」です。

 

一方は平等を重んじ、一方は格式を重んじる。

 

この二つの床の間は同じようであって、全く違う種類の床の間だと思っていただいて良いと思います。

 

明治までは!ですが。

 

▼床の間に使われる畳についてはこちら:床の間に使う畳ってなに?|床の間には金色に輝く龍鬢表がオススメ

床の間の形式

床の間の形式は3種類。格調の高い本床を「真」。「真」を崩した床の間を「行」。「行」をさらに崩して簡素化した床の間を「草」。

 

床の間の形式は三種類に分類することができます。

 

真(しん)  行(ぎょう)  草(そう)

 

格調高い本床を『真』

 

ややくずした床の間を『行』

 

さらにくずして簡素化した床の間を『草』

 

一般的に『真』とは、木割(単位寸法(多くは柱の断面)を基にした建築各部の木材の大きさの割合)によって正式に造られたもので、床脇、書院を持ち、縁側に接した8畳以上の広間にふさわしい構えです。

 

『草』は、茶室など数奇屋造りの流れをくむ自由な発想形式の床の間を言います。

 

え?自由な発想?それでは床の間が壊れてしまうんじゃない?

 

自由な発想形式って床の間がグチャグチャになるよね?と思う方もいるでしょう。

 

床の間の「自由」に関して、侘び茶を大成させた千利休は、弟子たちに次の言葉を残しました。

 

真を知り、行・草に至ればいかほど自由にくずそうと、その本性はたがわぬ

千利休

 

これはつまり、「真」を知れば自由な発想形式にしても床の間の本質的なところは違わないという意味です。

 

自由の前には秩序がある。床の間も一緒さ。

 

『行』とは『真』と『草』の中間ぐらいを崩した床の間を『行』と言います。床の間の例でいうと『踏込床』になります。

 

本床(真)

本床(真)とは、床の中でもっとも格式が高く、框床とも言われ、床の間の原形となります。角材の床柱を使用し、床框を取り付けて一段高くし畳敷とするが、略式では薄縁を敷いたり、地板を張ったりしています。框は、蝋色(黒)の漆塗として面をとります。落とし掛けは、長押上端より柱の1〜1.5倍ぐらい高くするのが普通です。

 

 

踏込床(行)

踏込床(行)とは、先ほど例に挙げました通り、床框を用いずに地板を畳面より一段高く張り、板厚を見せて地板と畳寄せとの間にと踏込み板を入れた形式となります。踏込み板の代わりに丸太や竹などを用いたり、壁を付けたりすることもあります。床柱には、角柱や磨き丸太を使うことがあります。

 

 

踏込床(草)

踏込床(草)とは、畳の上端と平らに地板を張った床の間のことで、床框も踏込もない単純な形式のものになります。『地板床』『敷込み床』『踏込み床』とも言います。最近は、板厚だけ畳面より上げる形式も多く見られるようになりました。基本的に、床柱は丸太など自由です。

 

 

洞床(草)

洞床(草)とは、床の間の柱、天井の入隅、造作材などを見せずに壁で塗り回したものになります。大壁式の和室では、自然に塗り回されることが多いので、柔らかく単純な床の間になります。千利休の作と言われている『待庵』の床の間はとて良い例です。別の名称で『室床』とも呼ばれています。

 

 

釣床(草)

釣床(草)とは、天井から落とし掛けのために下がり壁を付けた形式となります。地板や床框などはなく、下は部屋の畳敷のままになっています。そして、押板や地袋を置いて飾ります。

 

 

織部床(草)

綾部床(草)とは、天井回り縁の下の柱と柱との間に幅20㎝くらいの幕板(織部板)が取り付けられており、そこに竹釘を打って掛軸を掛ける最も簡単な壁床のことです。多くは畳のままでありますが、地板や地袋を設けると床の間らしい感じが強くなります。茶匠・古田織部先生による創案とされています。

 

 

袋床(草)

袋床(草)とは、床の間前面に袖壁を設けて、一部を袋状にした形式です。袖壁には下地窓を付けたりしてアクセントにします。内部は地袋や飾り棚にすることもあり、そうすると深みのある落ち着いた床の間となります。

 

 

置床(草)

置床(草)とは、床の間のない部屋の隅に移動自由な押板や地袋を置いて、その雰囲気を出したものとなります。掛け軸は、天井回り縁や付け鴨居から釣ります。

 

 

桝床

桝床とは、平面が真四角な床の間です。

 

 

琵琶床(行)

琵琶床(行)とは、床の間の一部に、飾り台風の地袋=琵琶床(琵琶の楽器を置く棚)を設けて、2段で構成する形式です。現代では置物などを飾ることが多く、地袋はその収納部分に利用されています。

 

床の間の決まり

 

床の間の決まりはスピリチュアル的なもの。でも、そこには床の間を作った方達の想いがあるんだ。

 

床の間は、部屋の位置によって『本勝手』と『逆勝手』の名称があります

 

本勝手は向かって左に書院と床の間を設けて、向かって右に床脇棚を設けて左から採光する

 

逆勝手は本勝手と反対になります。

 

床刺しは縁起悪い

床刺しとは天井の竿縁が床の間に突き刺さしてるように直角に取り付けていることを言います。

 

これは縁起が悪いとされています。

 

また天井だけでなく畳も同じで、畳の丈の框が床の間に突き刺さっているのは、縁起が悪いと忌み嫌われています。

 

大工さんだけでなく畳屋も気をつけていることです。

 

床の間の位置

床の間の位置は南向き(北床)か東向き(西床)が良いとされています。

 

これは西または北に壁を設けて防暑と防寒に備える目的があるからと言われています。

 

ちなみに、北向きの床の間は陰気になり西向きの床の間は朝日が入らないので、あまり好ましいものではないと言われています。

 

▼和室とはどんな部屋?:和室とは何か?和室とはどんな部屋?|畳職人が考える和室論

和室にある床の間って何に使うの?

床の間はお客様をおもてなしするスペース。花を飾ったり、掛け軸をかけたり、和室を彩る小さな空間。

 

これまで床の間とは何か?床の間の歴史と床の間について紹介してきました。

 

床の間の歴史では、床の間には二つの流れがあり、お茶室における「床の間」書院造りにおける「床」であることがわかったと思います。

 

とはいえ、二つの流れの床の間は別の概念や思想をもちながら、どちらともお客様を招く際に重要な役割を果たしています。

 

書院造りの床では格式の高い方の座所であったり、お茶室の床の間ではお客様に季節を感じてもらう為の場所として使われていたのです。

 

つまり、どちらの床の間にしてもおもてなしをする空間だったと言えるでしょう。

 

では、現在に置き換えて「床の間は何に使うか」考えてみると自ずと答えは出るかと思います。

 

例えば、和室を客間として利用している方は客間として床の間を利用すればいい

 

その場合の床の間はお客様が季節感を感じられるように季節の花を活けたり、運気の上がる置物を飾ったり、想いを込めた掛け軸を飾ったり、お客様に寄り添った空間として利用する。

 

▼床の間の飾り付け:床の間の飾りってどうすればいいの?|床の間人気おすすめの飾り付け 

 

お茶室も同様です。

 

侘び茶を大成させた有名な茶人、千利休は次のような言葉を残しています。

 

”お客の心を心とする”

 

お客様が来られた時に「来てよかった」と思って帰っていただく、これこそが本当のおもてなしであると考えます。

 

他に客間以外で利用されいる方は床の間を我が家の運気をあげるスペースとして利用する

 

床の間の決まりで言いましたが、床の間には少しだけスピリチュアル的な意向も感じ取れます。

 

その家を建てたご先祖様、作った職人、設計した建築家の先生は、その家に住む人々が皆、末長く健やかにと想いを込めて床の間を製作しています。

 

で、あれば運気が上がる置物などを置いて、家族の健康や健やかな成長を祈る空間として床の間を利用してみてください。

 

▼運気が上がる置物についてはこちら:風水で運気は上がるのか?|和室におすすめ!運気が上がる置物

 

以上、和室にある床の間って何に使うの?でした。

最後に

いかがだったでしょう。

 

床の間の使い方について少しでも理解していただけたでしょうか。

 

床の間って狭くて小さい空間です。

 

床の間について知らない若い方なんかは物置?ぐらいにしか思いませんよね。

 

でも本当は、お客様をおもてなしするために考えられた空間です。

 

是非床の間を活用していただきたいと思います。

 

最後のまとめ

床の間をどう使うかは所有者の自由で良いと思います。物置にするなら物置として、客間ならおもてなしの心として、運気を上げる空間なら運気を上げるスペースとして、自由にお使い頂けたら良いと思います。

 

ただ、この記事で説明した通り、床の間を作った職人さんや家を建てた方々は、家の繁栄などの想いを込めて作ってます。

 

それを汲み取って床の間を使っていただけたら良いのではないかと思います。

 

読んでいただきありがとうございました。良かったらシェアお願いします。

 

京都畳学院 建築資料 参考 http://www.kyoutatami.shoukou.net/

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